そこに住まうもの達 8 ≪クレタ 後編≫
「おもしろい人達ですね」
「ふざけているのか」
「あら、なぜ私が主様以外の方の命令を聞く必要がありまして?」
「俺は勇者だからだ」
「それは先ほども聞きましたが」
そこへ騒ぎを聞きつけた村長、いやもう町長がやって来た。
「これは、なんの騒ぎですかな」
「この方が、こんな昼間から夜伽の相手をしろとか言うものですから
お断りしていたところです」
「すいません。当町には、その手の物はありませんので」
イライラした顔で短剣を2本もった徳己が町長の方を見た。
「勇者の特権で俺が命令してんだよ」
「失礼ですが、特権なら勇者を召喚したドラド王国でお願いします」
「ちっ、ぐだぐたうるせい」
短剣が飛び町長の胸に突き刺さり、また手元に戻る。
「ぐっ」
どさっ
「きゃあぁぁぁ・・・」
町長がその場に倒れ誰かの悲鳴が町中に響き渡る。
「なんだ?」
その悲鳴に気がつき坂上が宿屋から出てくると倒れた町長と仲間の徳己に
血が付いている事を確認して走り寄る。
「徳己、何してるんだ」
「あん、坂っちか。こいつらが言うこと聞かないからよ」
「馬鹿な事を」
「なんでよ」
「ここは外国なんだぞ」
「えっ、ドラドって一番偉いんじゃないの」
「どちらかと言えば小国ですよ。この国と比べるとね」
振り返ると哲也も外に出て来て声をかけて来た。
「ちっ、やばいじゃん。まじかよ」
「なっ何をしたんですか」
駆けつけたアルムは、すぐさま治癒魔法を町長かけているアレスとは違い
徳己に詰め寄っていた。
「戦争を起こすつもりなんですか」
「知らなかったんだよ。うるせいな殺すぞ」
徳己の剣を坂上の盾が弾く。
「アレスどうだ」
「一応命は取り止めました」
一連の状況を確認していたクレタは認識を改めた。
「了解。勇者は敵と認識しました。これより村人の保護活動を開始します」
「ん?なんだこいつ」
その時、けが人が出たと聞いた現場へと駆けつけたリオはクレタを見た。
その横に倒れている町長とアレスを見た瞬間に彼女の髪が物理的に逆立った。
そして独鈷を掲げ攻撃体制を取ろうとした時、盾を持つ男の背中がこちらを見た
事でさらに、彼女の感情は爆発的に怒りへと変わった。
「爆球」
彼女が敵意丸出しで坂上を攻撃しはじめたのを確認した。
「保護対象を確認。支援を開始します」
クレタはリオを攻撃しようとしている徳己の行動を妨害する為に土壁を彼の
目の前に出現させると一歩でリオの横に移動してアルムの放った火炎を手の
平から出した水球で相殺させる。
「くたばれ」
徳己が特殊形態の黒い稲妻包を構えていた。
それとアルム、アレスの両者からも火炎が飛び出して来ていた。
「稲妻対策」
避雷針を呼び出した事で地中から突き出した針が、稲妻を全て吸い込んでいく。
2つの火炎は、何処からか後方から飛来した水球に撃墜されていた。
「なに」
「岩食い」
リオの最大攻撃呪文が、徳己の体を虫食いの様に肩に食らいつくように接触
した瞬間に爆つしていく。それは胸、腕、足、腹で爆つして血みどろになった
徳己が力なく地面に崩れ落ちる。
「ちきしょう。いってぇ~」
それを見たアレスは坂上に告げた。
「私では無理です」
「撤退するぞ」
いつの間にか徳己を抱えて哲也が坂上に告げて光の球が5人を包んで消えた。
瞬間移動で王都の神殿へと帰還した勇者達は仲間の悲鳴を聞いた。
「ぐきゃあぁぁぁぁ」
徳己が、ものすごい悲鳴というか断末魔を上げてた。彼が血反吐を吐きながら
ぐちゅぐちゅと体がつぶれて行く様を見続けた。そして、そこに1つの魔石が
残っていた。
「なっなんだよこれ」
哲也は、助けようと連れて来た徳己の最後に呆然としていた。
「何をおどろいているのですかな?」
神官レギナの声に哲也が振り返る
「復活させてくれ」
「できませんよ。あなたの世界では死んだものを復元できるのですか」
「そんな。何言ってんだよ。そっちが呼び出したんだろ」
「不死にでもなれるとでも思ってたんですか」
「ふざけるな」
「ふざけてませんよ」
坂上は冷静な態度で、神官レギナの事を見て口を開く。
「質問がある」
「どうぞ」
「なんで俺たちが魔石化するんだ」
「アルク様の加護内では魔力を持つ者の死は魔石になります」
「その説明だと、俺たちへの最初の説明と矛盾しているぞ」
「勿論」
アルムが短剣を坂上の背を捕らえて動いた時に、それを知っていた様に
彼女の剣を払い落とす者がいた。
「・・・」
顔を上げたアルムの前に居たのはアレスであった。
「なっ」
驚く彼女対して無表情のままアレスは衝撃破を彼女に放ち吹き飛ばした。
「そういう事ですか」
神官レギナは坂上とアレスが並び立つ場所から少し離れていく。
「坂上。まあ、楽しもうぜ」
アレスが坂上を掴み消えていくのを見ながら哲也は声をかける。
「哲・・・」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「自我意識はおありですか?」
リオの肩に手を置いてクレタは質問というより、忠告の様に彼女に告げる。
そんな声を聞きゆっくりと振り向くリオの顔は鬼の形相であった。
「落ち着いて、もう彼らはいないのですよ」
そう言って彼女の肩から手を放してクレタは事態の顛末を察した。
それほど彼女の態度や顔は全てを語っていた。
「怪我をしたのですか」
口から流れる血に気がついて、クレタは治癒魔法を唱えてくれた。
リオは自分自身も気がつかない内に噛みしめた歯で自ら口の中を
気づ付けていた。
「何があったかは知りませんが、今は・・・」
「リオ怪我はない」
此方に駆けてくるマチに目をやって、リオはちらっとクレタに目線を
振った後、マチへ向き直ったまま。
「感謝するわ」
マチはぺたぺたとリオの体のあちこちを触りながら「痛いとこは」とか
聞いている様だった。そんな彼女にされるままになっているリオが少し
嬉しそうな顔をしていた。
そま姿を見て、クレタは1人歩き出す。
その後ろにマチがリオを心配している。やりとりが見えていた。
「クレタさん、どちらに?」
カレは姿を見せずに、クレタに話しかけた。
「まさかと思いますが・・・」
エンナも姿を見せずに、クレタに話しかけた。
「私は指令を遂行しているだけですよ」
二人に、クレタは答えた。
その目は、すでに、ここには無く盾の男を追っていた。立ち止まるクレタ。
そして左右に首をふる。そして再び歩き出した彼女の方向が変わった。
王都に向いていた方向が、突然。闇の森へと向かう。
俊足で向かう先に坂上とアレスを確認した。
「こんなところで何をなさっているのですか?」
近づくクレタの後ろには見慣れない2人が追随していた。
「君か」
先ほどの町で、仲間の攻撃を防ぎ町人らしき者を助けていた。
「ここは私が」
アレスがクレタの前と回る。
そんなアレスの行動に、首を傾げたクレタは質問する事にした。
「あなたは獣人族と思いますが、なぜその者を庇うのですか」
とても静かな感情の無い声だった。
「・・・」
「主様に対象の同族を見つけたと報告すべきでしょう」
エンナがクレタに話す内容を坂上は聞いていた。
「なにを」
「知らないのですか、ご自分の種族がどうなったのか」
「此方は戦う気はない」
坂上を見た。
「では、こちらに」
盾と剣をそれぞれ、カレ、エンナが手に取ってクレタがアレスの横を過ぎて
坂上の前に立つ。
「あなた達を主様の所へ連れていく事にします」
それは確認でも同意でもなく、結果として告げられた。
二人は、気がついた時には屋敷のロビーに立っていた。
「お客様をお連れするなら、早めに連絡をするものですよ」
パシテアは堂々とした態度で待ち構えていた。
「あなたが主ですか」
坂上の質問に、彼女は少し考えてから
「主は私ではありません。盾の勇者さん」
「戦う意思は無いそうですので、お連れしました」
クレタの言葉に、溜息をつきながら
「何か策略があるとは考えなかったのか。武器は奪ったのは認めよう
お前は少し、真っすぐすぎる」
「まあ、そう目くじらを立てるなパシテアよ。折角の美人がもったいないぞ」
「此方が当主様です」
パシテアが左手を男の方に上げた。
「君に会いたいと言う方がいてね」
「はじめまして、イツキと申します勇者さん」
忽然と目の前の空間がグニャリと歪むと一人の少女が立っていた。
「どうも、ベルナよ。人間」
その声の主を探す様に声の方、つまり少女の肩に小人の少女が乗っていた。
「精霊」
思わず声を上げた坂上。
「それはちょっと違うわね。私は女神の娘だけど半分は人間よ」
「私は妖精ですから」




