破滅覚悟の黒龍狩り
あらすじにも書きましたが、この小説はTwitterの連携アプリ「れべるあがったー」、そのイベント「ソクサウス討伐」が元となっております。
作者率いる暇人ギルド・「帝龍戦線」のメンバーが全員出てくる訳ではございません。
そして当たり前ですがこんなに激しく会話は交わしてませんし、何よりれべあが非公認です。
「有無ちゃ~ん、ソクサウスってモンスター欲しい……欲しくない?」
「あぁ~いいっすね~」
「じゃけん今から行きましょうね~」
と言うきたない会話がきっかけで、小規模ギルド「帝龍戦線」はソクサウスが暴れている洞窟に来ていた。
……しかし、そこにいるのは6人ではなく3人。帝龍戦線のメンバーはそのうち2人。『クエスト』に参加出来るのは3人だけだ。このギルドの活動方針は「やりたい事を好きなだけやって、終わりっ!」である(式十談)。
ちなみに今ここにいる「式十」と「有無」以外のメンバーは、宿にひきこもっている。何をしているのかはギルドマスターである式十にも分かっていない。
「いや~きついっす……『アタック ヤシーコウモリC』」
帽子を目深に被り、袴を羽織っている奇妙な格好の少年……いや少女が、黒髪をなびかせながら愛刀「村正」でヤシーコウモリを切り伏せる。
『生きてく強さを重ね合わせ愛に生きる黒騎士』と言う長い二つ名を持つ彼女こそが、『帝龍戦線』のギルドマスター・式十である。
「語録使いスギィ!自分、『防御』いいっすか?」
とか何とか言いつつ語録を使っている、露出度の高い服を着た黒髪の少女……有無が腕を交差させた。
ちなみに彼女の二つ名は、尻も大きくないと言うのに「デカ尻踊り子」である。不名誉極まりない。
式十とは古い仲なのだが、共闘するのはこれが2回目である。
しかしまだレベルは30だし、職業ランクも低い。5つある難易度で中級とも言える「吟遊詩人級」の戦いでは、共闘と言うより式十に守られている様な感じだった。
攻撃はことごとく外れるし、攻撃を喰らって回復してもすぐ倒されてしまう。なので、防御に専念しているのである。
式十は攻撃しつつ、タイミングを見計らって有無を回復する担当であった。
「終わったゾ~……がはっ」
雇った賢者が仕留め損ねた敵を村正で一閃し、盛大に血を吐いた。式十は語録を使うなと医者に言われたため、一定回数語録を使うとこの様に吐血する……と言う呪いを己に掛けているのだ。霊媒師のレベルも上げていたため、これくらいは造作もないらしい。
そうこうしながらエギークロウにヤシーコウモリ、イサヤミアリ等のモンスターを蹴散らして、洞窟の最奥部に辿り着いた。
幾多のプレイヤーに踏み荒らされたであろう地面には、無数に穴が空いている。しかし、この光景を見るのは初めてではなかった。こんなモノは道中に無かった、と思って奇襲されると言うゲームのイベントじみた事もない(まぁこの世界はゲームで今やっているのはイベントクエストなのだが)。
「……『ためる』」
「『防御』」
落ち着き払ってコマンドを打ち込むと、手前の穴から小さな黒い龍が現れた。
……ソクサウスだ。
翼はなく、代わりに異様に発達した四肢と鋭い鉤爪がある。微かに黒い吐息を漏らすその姿は、小型とは言えど『イベントボス』らしい強者の風格があった。
「やめちくりーってごばぁっ」
舌舐めずりをした後、それは式十に飛び掛かるなり穴の中へと連れ去っていく。
「ちょっ……何をするっ!!やめて下さいよ……本当にってアッー!!」
バリボリと捕食する音、吐血する音、刀を振り回す音が洞窟に響き渡った。
「『防御』」
硬直時間が終わっても、有無はやはり防御の態勢をとっている。が、その顔はかなりにやけていた。
「『デラアチーノ』」
魔法は強力だが、その分時間が掛かるのが賢者の特徴だ。コマンド入力後のタイムラグもあり、発動にはまだ少し時間がある。
「やめて下さい!!どこ食べようとしてるんですかアンタ!!何なのよ本当に!!……あーそっち行った!!」
式十をくわえて飛び上がったソクサウスを、賢者の放った魔法の爆炎……『デラアチーノ』が包み込んだ。
「あっつ!!何これあっつ!!」
袴の裾をチリチリと焦がしながら、解放された式十が着地する。
「はえ~賢者君凄いねぇ~……ぐはっ」
「式十さん語録使いスギィ!!」
流石高レベルのプレイヤーと言ったところか。賢者の放った魔法は、チャージも無しにソクサウスのHPを全て削り切っていた。燃え盛る炎が、ポリゴンとなり霧散していく。
『クエストクリア!』
ファンファーレが鳴り、3人の頭上に黄色いテロップが現れる。
お馴染みのリザルトの後、2分後に『クエストへの接続』を終了するとメッセージが出てきた。
「お疲れ様です」とだけ残し、賢者は姿を消す。
「またコア出なかったね、お疲れ様ー」
「そうですねぇ……んじゃまぁ、おつでしたー」
残った帝龍戦線の2人もすぐに切断し、洞窟は元の静けさを取り戻した。
クエストから切断されると、プレイヤー達は自動的にホームタウンに戻る仕組みとなっている。
帝龍戦線は揃って『王様』が城を構えるこの町に滞在していた。
「……さて、帰ったらとかげさん見つけてトカゲ焼きますかねぇ」
腹時計が鳴った後で、式十がとんでもない事をさらりと言う。
「またやるんですか」
「そうだよ」
有無に軽蔑の視線を向けられると、式十は唸った。
「……そんな目で見ないでください!!オナシャス!!たまには餅原でも食いますから!!……げほっ」
「いつも食べてるのに何を言うのやら」
「じゃあ何食って生きろと!!」
ぎゃあぎゃあと喚きながら、宿への道を歩く2人。
町の住民やプレイヤー達は、大変温かい目でそれを見つめていた。
2015年11月3日まで行われたイベント「ソクサウス討伐」。
「闇属性の小型龍」と言うワードで、厨二病の式十は心をくすぐられ闇属性廃人として目覚めました。
しかしソクサウスコアは……入手出来ませんでした。
散々行われるクエストに付き合ってくれたあがったらーの皆さん、ありがとうございました。
そして今はほろ苦き魔法使いの有無ちゃん。
……尻デカが頭から離れなくてすみません。




