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藤村君と鈴村さん。  イケメン男子とその幼馴染  作者: るい
冬休みのイケメンには彼女ができる。
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冬休みのイケメンには彼女ができる。②

冬休みのイケメンには彼女ができる。はこの話で終わります。

ハル君と私は中学で同じ陸上部に入り、ハル君は3年生には部長となり、全国大会に何度も出場するという大活躍をした。私もマネージャーとして3年間充実した日々を過ごした。


中学3年で生徒会長に選ばれたハル君は、生徒会長の指名権をつかって私を書記に指名した。この時も部活に入った時とほぼ同じようなやりとりをした。


結局、中学は同じ部活で、生徒会でも一緒、別々に登下校する理由もないので相変わらず登下校も一緒。思春期の男女とはいえ、これだけ共通点があれば恋人同士じゃなかったけど、一緒にいるのに違和感はなかった。


違和感があったのは、ハル君に彼女が出来なかった事。


もちろん、告白はされまくっていた。


女性不信とかなんだろうか?


告白されすぎて嫌になっちゃった、とか?



私はといえば、生まれてこの方、告白なんてされた事がないから、ハル君の気持ちは想像すらできない。


もっと言えば、私は男の子を好きになった覚えもない。


ハル君以外の男の子とあまり話したことがないからか、弟の駆から「年寄か!」ってよく突っ込まれるぐらい、現実的であまり若者らしさがない性格が問題なのか。


私だって恋愛への憧れならある。大学生になって、同じ大学でできた彼氏とクリスマスのイルミネーションが綺麗な街を手をつないで歩いて、クリスマスケーキを買って、お互いへのクリスマスプレゼントを持って彼氏のアパートでまったりして、私が腕によりをかけて作ったご飯を食べて・・・。そんな程度の地味な想像しかできないけど・・・。



よくハル君の事好きなんじゃないの?って聞かれるけど、自分ではそれはないと思う。


ハル君には、私みたいな家事が趣味なんていう地味な子じゃなくて、もっと綺麗でパッとした女子が似合うと思う。何事もつり合いがとれていないとよろしくない。才色兼備な女子で、なお且つ、ハル君の外見の良さや優秀さだけを見るのではなく、内面の不器用さを理解して受け入れてくれる人がいるといいな、と思っている。



ハル君の彼女なんて私には荷が重い。



ただ、ハル君に彼女ができたら寂しくなるんじゃないかな、とは思う。


だからその日に備えて、ハル君が隣にいなくても大丈夫なように、ハル君に彼女が出来た時ににっこり笑って「おめでとう!」って言えるようにしようと思っている。


思い続けて何年がたっただろう。


ハル君にはいまだ彼女ができない。


は、と気付くとハル君はいつでも隣にいて不器用ながらも私を気に掛けてくれ、困っていれば助けてくれる。私が近くにいないと困ると言ってくれる。


この関係がずっと続けばいいのに。


そう考えてしまう自分もいた。






高校に入ると、中学入学時と同じような事がまた起こった。


「何で一緒に登下校してるの?」

「藤村君と付き合ってるの?」

「藤村君て彼女いるの?」


何度こんな質問をされただろう。


「私は藤村晴人の幼なじみです。

 藤村君の彼女ではありません。

 藤村君の男女交際については何も知りません。」


もういっそ、そう紙に書いて背中に貼っておきたいぐらい。




相変わらず一緒に下校していた私たちは、ハル君に興味津々な女子の視線を背中に受けながら二人で歩いていた。


もう、女子の視線を意識するのも諦め、部活を決める時期がせまっているから、どうしようかな?高校は文化部にしようかな?などと考えていた時、ハル君が言った。


「弓道部に入ろうと思う。」

「そうなんだ。」

「ヒナは?」

「まだ決めてないんだ。」

「・・・弓道、やらないか?」

「あれ?陸上部は?」

「誘われてるけど、高校は弓道にしようと思う。」

「そうなんだ、意外。」

「昔じいちゃんが弓道やってて、子供のころちょっと教えてもらったりして。」

「へー。」

「本格的にやってみたかったんだ。」

「そっか。」

「・・・ヒナ、弓道、やらないか?」

「・・・うーん・・・。」

「集中力つくぞ。」

「・・・うーん・・・。」

「姿勢よくなるし。」

「・・・うーん・・・。」

「ちゃんと教えるし。」


捨てられた子犬のような目で見るのは反則だと思う。


結局、私は弓道部に入部した。また登下校も部活も同じ生活が始まってしまった。




そして、高校2年生の冬休み。



ハル君が女子からの告白を断る時の決まり文句。


少し前までは「そういうの、興味ないから。」だったと噂だった。だから、「お、私と一緒だな。」なんて呑気に思っていたんだけれど、最近、「好きな人がいるから。」になったらしい。



ハル君の好きな人って誰だろう。


この前、ちょっとしつこく聞いてみたけど教えてもらえなかった。


告白しようとか考えてるんだろうか。


とうとう、私の隣にはいてくれなくなってしまうんだろうか。



どっちにしろ、お医者さんになるために医大に進むハル君と学校の給食の”お姉さん”になるために管理栄養士の資格がとれる大学に進むつもりの私は、将来の進路がはっきり分かれている。大学は別々になる。高校卒業まであと1年。




あと1年、このままでいさせてくれないかな。




冬休みのイケメンには彼女ができる。




ハル君の恋はこの冬休みに実ったりするんだろうか。



「おめでとう。」と言って笑う練習をしておこう。




頑張れ、私。



私の変わり映えしない毎日はまだまだ続く。

















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