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藤村君と鈴村さん。  イケメン男子とその幼馴染  作者: るい
冬休みのイケメンには彼女ができる。
8/30

冬休みのイケメンには彼女ができる。①

鈴村さんは藤村君の恋の行方が気になります。

私は鈴村ひなた。


17歳のクリスマスが過ぎた。


クリスマス、カウントダウン、初詣と思春期男女にとってはビッグイベントが目白押しの冬休みが始まったばかり。


冬休みには恋人たちが急増する。とくにイケメンは、とりあえず恋人を作りたい女子から決死の覚悟で告白する長期片思い女子までのあらゆる攻撃にあうようで、フリーで過ごすことはもう、無理といっても過言ではないと思う。


そんな時期、私が気になっている事、それは、幼なじみの藤村晴人ふじむらはるとの恋の行方。


通常時も告白されまくりのハル君だけど、冬休みに入る前はいつにも増して、告白されまくっていた。

学年一の美女といわれている3年生の女子、別れるのを待っている男子が順番待ちしているといわれている1年生のかわいこちゃん、同じ学年のイケイケ女子、普段おとなしい同じクラスの女子、隣の高校の女子、大学生のお姉さん、特に記憶に残っている女子だけで6人。あまりはっきり覚えていないけど、それ以外にも5~6人、私の知らないところでも告白されたり、ラブレターを渡されたりしていたみたいだから、本当にたくさんの人から冬休みを一緒に過ごそう、付き合おうと誘われていた。




ハル君は容姿端麗、文武両道、威風堂々、一挙三反、智勇兼備、思いつく限りのあてはまりそうな4文字熟語を並べてみたけれど、とにかく、言えることは、勉強もできて、運動もできて、姿形もかっこよく非の打ちどころがない、という事。敢えて言うなら性格に問題はあるかもしれない。無口で無愛想で人見知りという問題が・・・。




なんといってもハル君は子どもの頃からモテモテだ。


保育園からあらゆる女子に告白され、芸能事務所にもスカウトされたこともあり、同じ学校以外からもわざわざ見に来る人もいて、ファンクラブがあるという噂もあった。


そんなハル君だから、遠からず彼女ができるんだろうと思っていた。思っていたのだけれど、ハル君はなかなか誰かとお付き合いすることはなく、小学校は卒業した。



そして、中学入学。入学式には上級生がたくさんハル君をチェックしにきていた。入学式当日にはすでに何人かに告白されていた。私とハル君は同じクラスではなかったけど、登下校を一緒にしていたので、違う小学校からきた女子たちに「藤村君とどういう関係なの?」と私は聞かれ続けた。


「幼なじみなだけだよ。」

「それって付き合っていないってことだよね?」

「付き合ってないよ。」

「藤村君て付き合ってる人いる?」

「いないと思うよ。」

「マジで?!」

「よくは知らないけど・・・。多分。」

「そっか!そうだよね!ありがとう、鈴村さん。」


皆、そんなことを言って去っていった。っていうか「そうだよね!」ってどういうこと・・・。不満はあったけど、男の子のことを好き、という感情があんまりわからない私にとっては頬を赤らめて興奮している女子はかわいく見えたし、うらやましかった。


そんな事が続いていたので、私は今後、ハル君と距離をとろうと考えていた。


入学式を終え、通常授業が始まると、足が速いので有名だったハル君は陸上部から勧誘を受けていた。私は特にやりたいスポーツもないけど、運動部だったらテニス部ぐらいかな? 運動部以外だったら、吹奏楽部に入ってフルートが吹けるようになったらいいなあ、などとぼんやりと考えていた。


そんなある日、ハル君が言った。


「陸上部に入ろうと思う。」

「そうなんだ。」

「ヒナは?」

「まだ考え中。」

「・・・マネージャー、やらないか?」

「え?」

「陸上部のマネージャー。」

「・・・うーん・・・。」

「人の面倒見るの好きだろ?」

「・・・うーん・・・。」

「俺が人見知りなの、知ってるだろ?」

「うん。」

「陸上部には入りたいけど、知り合いがいないし、人の顔覚えられない。」

「うん。」

「ヒナが近くにいてくれれば困らない。」

「・・・うーん・・・。」

「嫌か?」

「嫌じゃないけど、ハル君、何やるの?陸上部で?」

「短距離か走り幅跳び」

「やりたいの?」

「挑戦してみたい。」

「そっか・・・。」

「でも、人とうまくやれないから困る。」

「やれるかもよ?」

「やれねー。」

「・・・・・。やれるかもよ?」

「やれねーよ。」

「やれないかなあ。」

「ヒナがいたほうが絶対うまくいく。」

「むむむむむむう。」


悩む私の顔を、ハル君は捨てられた子犬のような目で見る。


確かに、誰かの世話をするのは好き、というか向いている、と思う。


人の顔を覚えられないハル君の代わりに人の顔を覚えて、誰なのか教えてあげるのは今までも私の仕事だった。


でも、もうハル君と距離をとろうと決めたから、同じ部活じゃないほうがいいと思った。



「でも、やっぱり、私はテニス部か吹奏楽部に・・・。」

「何で?」

「何でって・・・。」


ハル君と距離をとろうと思っているから、とは言えないし、どうしよう・・・。と口ごもっていると、


「努力してもできない事ってあるだろ?」

「うん?」

「人間関係は俺にはどうしようもない。」

「うーん。」

「ヒナが近くにいないと困る。」

「うーーーーーーーん。」


ハル君が私に何かを頼むなんて事はは本当にめずらしい。このやりとりが頼んでいるように聞こえないかもしれないけれど、不器用なハル君にしては精一杯頼んでいると思う。「何でもお手伝い券」を毎年発行してもらい、色々と助けてもらっている私に「いやだ。」なんて言えるはずもない。でも、ハル君の今後を考えれば、そろそろ私が近くにいない人間関係の構築を考えなければいけないんじゃないだろうか。


などと色々考えていたら


「大学はヒナと一緒にはいけないから、それまでに人間関係も何とかできるようにするから。」

「う?」

「自分がいつまでも近くにいられる訳じゃないって考えてただろ?今。」

「・・・どうしてわかったの?」

「顔に出てる。」


勉強も運動も頑張りすぎなほど頑張ってしまうハル君だから、人間関係ぐらいまだ完璧じゃなくてもいいんじゃないだろうか・・・。そんな気持ちが大きくなってきた。


私は特に中学校でやりたいことはない。テニスだって吹奏楽だってどうしてもやりたいという強い意志はない。それにハル君に恋人ができたら、自然と距離もできるだろうし、問題ないかな?


「じゃあ、明日、一度見学に一緒に行ってみる?」

「おう♪」


ハル君は珍しく浮かれた声で返事をした。











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