プレゼントは靴下の中。③
プレゼントは靴下の中。はこの話で終わりです。
兄貴は中学生でこのプレゼント交換から卒業したが、俺は中学生になってももちろん続けた。(あえて取り上げなかったが、ひなたの弟、駆のプレゼントも続けている。)
思春期を迎え、つきあっていない男女が一緒にいるというのも微妙になっていたが、俺は、ひなたと距離をとりたくなかったし、距離をとられたくなかった。
男女という性別を意識させすぎず、ほかの男に興味を持っていないか、誰かに好意を寄せられていないか、レーダーを張り巡らせ、一番近くにいて、一番仲の良い男子であり続ける。
俺にとって、中間テストや期末テストで学年1位になるよりも、運動会でMVPをとるよりも難しかったが、俺の人生で1番大切な事だと考えていた。
中学1年のクリスマス
ひなたにはひざ掛けと携帯のストラップと何でもお手伝い券
ひなたからは水筒と手作りブラウニーと手紙と週末ランチリクエスト券
中学2年のクリスマス
ひなたにはマフラーと手袋と何でもお手伝い券
ひなたからは手作りの毛糸のひざ掛けと手作りパウンドケーキと手紙と週末ランチリクエスト券
中学3年のクリスマス
ひなたには受験のお守りと文房具セットと何でもお手伝い券
ひなたからは充電式カイロと手作りショートケーキ(これは引換券だった)と週末ランチリクエスト券
そして高校入学
中学3年の担任には私立進学を勧められたが、満員電車がいやだから、と自宅から徒歩15分の公立高校を選んだ。というのは建て前で、本当はひなたと同じ高校に通いたかっただけだった。将来は医者になるつもりだから、大学は医大に行かなければならない。だから、せめて、ひなたと一緒の高校生活、は譲れない。
そう考えて選んだ高校。医大に合格するための自主勉強は大変だが、ひなたと同じ部活に入り、登下校も一緒だから、この高校を選んだ事は後悔していない。進学を主眼においた高校ではないから、高校生ならではの行事も充実していて、色々な思い出も増えるし、今のところ、ひなたに悪い虫もついていないし、考えられる限り、最高の高校生活だと思っている。
高校1年のクリスマス
ひなたには着る毛布と何でもお手伝い券
ひなたからは洒落た手帳とボールペンと手作りショートケーキ引換券と手紙と週末ランチリクエスト券
小学校の頃は1000円までのプレゼントと決まっていたが、どちらともなく、だんだん金額が上がっていき、身に着けるもの、いつも持つものを選ぶようになっていた。
・・・気になっているかもしれないが、ひなたが毎年くれる手紙の内容は秘密だ。
秘密・・・とはいったものの、ニヤニヤするような内容ではない。ニヤニヤするような内容ではないが、やっぱり俺はこの手紙をすごく大切に、大事に宝箱に入れて保管している。色々うまくいかなくて、落ち込んだりした時はこの手紙を取り出して読むのが今のところの俺の一番のリフレッシュ法だ。
さて、今年、高校2年のクリスマス
今年もきっと俺の靴下の中にはひなたからの手紙が入っているだろう。
今年はいつもより、ちょっとでも俺を意識した内容になっているだろうか・・・。
俺はきっと今年も「何でもお手伝い券」を入れるだろう。何でもお手伝い券を口実に、あれこれ、ひなたにもっともらしく口出しするんだ・・・。
でも、今、俺がいちばん欲しいものは靴下の中には入らない。
ひなたの笑顔
ひなたの愛
ひなたの独占権
ひなたからの「何でもリクエスト券」・・・・・。
あ!これなら靴下の中にはいるじゃないか!
でも・・・ひなたから俺に「何でもリクエスト券」なんてくれる訳がないよな。
でも・・・。もし・・・。ひなたが「何でもリクエスト券」をくれたとしたら・・・。
俺は・・・。
やばい。
鼻血出そうだ。
頑張れ、俺。
俺の青春はまだまだ続く。