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藤村君と鈴村さん。  イケメン男子とその幼馴染  作者: るい
新学期にイケメンはライバル視される。
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新学期にイケメンはライバル視される。②

高校3年の始業式。


転校生がやってきた。


鈴村さんは人生初の転校生だなあ、ぐらいの呑気な反応ですが。

転校生の棒葉君は明るく元気な感じがした。



今日は始業式で、クラス替えの発表、ホームルームで解散となる。


「はい、じゃあ、今年一年、後悔のないように頑張りましょう。解散。」


袴田先生の話が終わって下校となった。



「鈴村ひなたさん、改めてよろしく。」


棒葉君がこっちを向いて手を出した。


「こちらこそ。」


遠慮がちに手を出すと、がっしりと握手された。



「俺の事はリョータって呼んで。」


「えっと、リョータ君でいい?」


「いいよ、俺、ひなちゃんって呼んでいい?」


「え?」


「ひなちゃん、家どこ?」


「・・・えっと、歩いて15分くらいのとこ・・・。」



「ねえねえねえ!」


私がちょっと困っていたら、ずっとこっちを気にしていた女の子たちが声を掛けてきた。


「遼太君、あのサッカー選手の棒葉しんば玲雄れおとなんか関係ある?」


「玲雄君に似てるって言われない?」


「ああ、俺、玲雄のいとこ。」


「えええ!ホントに?」


「うん、俺はサッカーそんなに得意じゃないけどねw」


「そうなんだ!ねえねえ、彼女いるの?」


「玲雄に?それとも俺に?」


「両方知りたいw」


「玲雄は知らないけど、俺はいないよ。」


「え、マジで?」


「えーじゃあ、とりあえず、今日この後お茶でも行こうよ!」


盛り上がる女子をかき分けてサッカー部の男子が話に入ってくる。


「え、ホントに棒葉玲雄のいとこなの?」


「そう。でもサッカー、俺は普通だよ。」


「俺たちも一緒にお茶に行きたいwカラオケでもいいけど。」


「じゃあみんなで行こうよ。いい?遼太君?」


「俺はいいよ、学校の事とかこの辺の事とか教えてほしいし。」


「よーし!行こうぜいっ!」



男女10人ぐらいがぞろぞろ、わいわいと教室から出ていく。


私はちょっとほっとしながら帰り支度を始めた。


「あれ?ひなちゃん、一緒に行かないの?」


棒葉君が振り返った。


「あ、うん、ごめん、今日は用事あるから。」


「一緒に行こうよ。仲良くなりたいし。」


「あはは、また、ね。」



教室を出て行こうとしているグループの中心にいる、去年も同じクラスだった理絵ちゃんが話しかけてきた。


「ひなた、今日も駆君のご飯の支度?」


「うん、それもあるけど。」


「駆君って誰?」


「ひなたの弟でね、うちのサッカー部のホープ、ね?」


「ホープ、かなあ。」


私が返事に悩んでいると、サッカー部の男子たちも話に加わった。


「確かに駆は1年でレギュラーだったし、FWだし、ホープともいえるよな。」


「てか、鈴村、弟も呼んでやれば?アイツも棒葉玲雄好きなはずだし。」


「うーん、でも今日は買い物行く約束してるから、またにするよ。」


「うん、じゃあ、またね、ひなた。」


「またね。」


小さく手を振ると、サッカー部の男子たちに肩を組まれて棒葉君も教室から出て行った。





鞄を持って教室を出るとハル君が待っていた。


「あ、ごめんね、遅かった?」


「いや、大丈夫。」


「じゃ、帰ろっか。」


「ああ。」




あれ?ハル君、ちょっと不機嫌かな?



「転校生?」


「うん、サッカー選手の棒葉玲雄のいとこなんだって。」


「ふうん。ヒナ、皆と行きたかった?」


「ううん、大人数で遊びに行くと疲れるし。」


「・・・そうか。」



今日は半日で学校が終わるから、ハル君とお昼ごはん食べて、春物の洋服を見に行く約束をしていた。



「駆のご飯用意してあげないとだから、昨日からカレー煮込んでるんだけど、お昼ごはん、家でカレーでもいい?」


「いいよ。ヒナのカレーうまいし。」


「今日はね、この前テレビでやってたバターチキンカレーの作り方を録画して見ながら作ったの。」


「そっか。楽しみ。」




始業式の日は家でカレーを食べて、買い物に行き、ハル君は緑のチェックのシャツと黄色いカーディガンを買った。





次の日、昼休みになると棒葉君を中心にして輪が出来ていた。



皆すごく打ち解けているなあ、と思っていたら教室の外から大きな声がした。


「ヒナー、英語の教科書貸して!」


翔真君だった。


「また忘れたの?」


「そそそ。ごめんなー。ありがとー。」


「まだ貸すって言ってないよw」


笑いながら英語の教科書を渡して席に戻ると棒葉君がこちらを見ていた。


「あれが噂の幼なじみ?」


「え?」


「ちがうよ、リョータ。あれはオダショーっていうお調子者。藤村君はもっとすごいイケメンだから。」


「おい、リエ!聞こえてるぞ!」


「あ、オダショー、ごめんw」


「謝らなくていいから言い直せー。」


「え?なんて?」


「お調子者だけどちょっとイケメンだろ?」


「あはは!そだね。イケメンイケメン!あ、藤村君!」


理絵ちゃんと翔真君がふざけていたら翔真君の後ろにハル君が通った。



ハル君は興味なさそうに教室の中を見た。


「何?」


「ほら、これがイケメンの藤村君だよ、リョータ。」


「用事ないんだな?授業始まるぞ、翔真。」



さっさと立ち去ってしまったハル君を追いかけて翔真君も自分たちの教室へ戻って行った。




「うげえ。予想以上だった。」


「ね、イケメンだったでしょ?」


「だな。」


「あれで勉強も運動も抜群にできるんだよ。すごいでしょ。」


「やなやつ?」


「うーん、無口だけどやなやつじゃないよ。ね?ヒナ。」


「ん?ハル君?人見知りだけど、いい人だよ。」


「あのルックスで勉強も運動も抜群でやな奴でもないって、そりゃないだろ。」


「ね。ひなた、リョータね、ひなたの事が気になるんだって。」


「へ?」


「彼氏、いないんでしょ?ひなちゃん。」


「だから、ひなたと付き合いたいなら藤村君を何とかしないとだめだって。」


「ただの幼なじみなんでしょ?あのイケメン。」


「でも、ひなたの普通があれだからね。」


「彼氏と幼なじみは別だよね?ひなちゃん。」


「えっと。」


「だから、ひなたも天然だから、押しの一手で何とかなる相手じゃないって。」


「いいよ、俺、ライバルとかいたほうが燃えるタイプだし。」




・・・。


何だかよく分からないけれど、リョータ君は人懐っこい笑顔でにっこりと笑った。




新学期にイケメンはライバル視される。





多分、リョータ君は転校してきて最初に話をして、席が隣のお世話係って言われたから私が気になるって言っただけだろう。


私から見れば、理絵ちゃんとリョータ君がとっても仲良く見える。


理絵ちゃんは一つ年上の先輩と付き合っていたけど、卒業と同時に別れちゃったって言ってたし。


二人はお似合いの恋人になれそうな気がする。




さあて、今日から新入生の部活体験入部が始まるから準備しないと。



理絵ちゃんとリョータ君の会話は大して気にも留めず、私は放課後の事を考えていた。



頑張れ、弓道部!


新入部員を確保して躍進するぞ!





私たちの青春はまだまだ続く。







 

ベタな転校生ネタですみません。


用意周到という設定の藤村君が手におえない相手を考えた時にそれしか考え付かなかったんです。


広い心で読み進んでいただけると嬉しいです。

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