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藤村君と鈴村さん。  イケメン男子とその幼馴染  作者: るい
バレンタイン最高。
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バレンタイン最高。①

バレンタインに本当の男女交際を始めることになった晴人とひなた。


晴人が浮かれています。

俺は藤村晴人。


17歳のバレンタイン、人生最大の決戦日が終わった。




初めての彼女がいるバレンタイン。


いや、ひなたが彼女になって初めてのバレンタイン。






この喜びをどう表現したらいいのかわからない。


今日、お試し男女交際から真剣男女交際への切り替えを提案し、ひなたに受け入れてもらった。


ひなたはいまいちピンときていない様子だったが、とりあえず、今日からひなたは俺の彼女だ。


同じ大学に行けない事もこれで何とか乗り越えられそうな気がする。




バレンタインといえば印象深かったのは小学5年の時だ。



学校から帰る途中、俺は大きめの紙袋をいくつか持って歩いていた。


「やっぱり用意しといて正解だったね!」


ひなたは自慢げに言った。




小学4年のバレンタインも、横断バックに入りきらないほどのチョコをもらった。一度に持ち帰れないから、とバレンタイン当日にすべてのチョコを持ち帰るのを諦め、バックに入りきらないチョコを学校に置いていこうとした俺に、ひなたは怒った。


「だめだよ、ハル君!学校に置いてあるのに気付いたらそれをあげた子が傷つくでしょ!私も持つから、今日全部持って帰ろうよ!」


「・・・。でも、持ちきれない。」


家に帰ってひなたから貰えるだろうチョコが気になってしかたがなかった俺は、早く家に帰ることばかり考えていた。


「用務員の先生にお願いすればスーパーの袋か何かくれると思うから、私、行ってくる!」


ひなたは用務員室に向かって走り始めた。


追いかけようとしたら、隣のクラスの女子に呼び止められた。


「藤村君!」


「何?今急いでるんだけど。」


「ちょっと体育館の裏まで来てくれるかな?」


「いや、今急いでるんだけど。」


「でも、みゆが待ってるから・・・。」


「・・・。」


みゆって誰だよ!うるせーな!と言いたかったが、女子が泣き出すと手におえない。


ひなたに「待ってて」とだけメモを残し、体育館の裏に向かった。




みゆとかいう女子もチョコをくれた。


それもかなり大きな箱だ。また荷物が増えた。



「藤村君、好きです!」


と言われたので


「俺、そういうの、興味ないから。チョコも受け取れない。」


今日、何回この言葉を言っただろう?と思いながら大きな箱のチョコを断った。


「でも、せっかく作ったから、せめて、受け取って。」


涙目になりながら渡されたチョコを溜息をつかないように注意して受け取った。




ひなたが待っている教室に戻ると、ひなたは俺が貰ったチョコをせっせと紙袋に入れていた。



「あ、ハル君、お帰り。紙袋貰えたから、これで全部持って帰れるね!」



そんなことがあったから、小学5年のバレンタインには絶対紙袋を用意しようね、とひなたは張り切っていた。






「それにしても、すごい量だね。嬉しいね!」


今年は紙袋を用意しようね、とひなたが言っていたが、俺が面倒くさがったので、ひなたが紙袋を持ってきていて、それが役に立ったのが嬉しいのか、ひなたはテンションが高めだった。


「別に嬉しくない。」


俺はそっけなく答えた。


「もう!ハル君はまたそういういい方して。このチョコにどれだけの想いと勇気と努力が詰まってると思ってるの?!」


ひなたは怒っていたが、俺はひなた以外の女子の想いにも勇気にも努力にも興味はなかった。


それよりも、ひなたが今年も父親、弟、俺の親父、兄貴、俺の5人以外にチョコを渡していないかどうかの確認ができていなかったので、そればかりを気にしていた。


「ヒナはチョコにそういうの込めるんだ?」


「え?そ、そりゃあ、まあ、感謝の気持ちは込めてるよ。」


「へえ。」


「今は私の話じゃないでしょ!」


「感謝の気持って事はまた学校のヤツにはチョコあげないんだ。」


「あげたよ。」


「は?」


「学校でチョコ、あげたもん。」


「だ、誰に?」


「翔真君。」


「は???翔真?」


「欲しいっていうから、ハル君たちのつくるついでに。」


「欲しいって言われたらあげるのかよ?」


「だって、翔真君にこの前のドッジボールで助けてもらったし。」


「・・・。」



ひなたが翔真にチョコをあげていた。


しかも、俺にチョコをくれた女子のために、俺の態度に対して怒っているという事は、ひなたは俺の事を何とも思ってないんじゃないか?


まさか、俺より翔真が好きだったりするんじゃないか?


そう思ったらイライラして仕方がなかった。



「ひなたのバカ!」



俺はそう言ってひなたを置き去りにして自分の家に逃げるように走って帰った。



自分の部屋に戻ると、かさばる紙袋を床に投げつけてベッドの上に乗り、膝を抱えて壁に向かって座り、おでこを膝に乗せてうずくまった。


悔しいのか、悲しいのかわからない、このもやもやした気持ちを、そのやり場のない感情をどうしたらいいのかわからず、俺は情けなくも泣いた。



泣き疲れて眠っていたのか、玄関のチャイムの音で目が覚めた。


「晴人さーん、ひなたちゃんが来てますよー。」


リツコさんの声がした。


ああ、きっとバレンタインのチョコを持ってきてくれたんだろう。


どんな顔をしてひなたに会ったらいいかわからなかった俺は寝たふりをすることにした。


「晴人さん?おかしいですねえ、今日はおやつも食べずに部屋に行ってしまって。ちょっと見てきましょうね。」


リツコさんは今日はいつにもまして声が大きい。


トントントントン


リツコさんが階段を上って来る。


あ、俺、部屋の鍵、閉めてないな・・・。


コンコン


「晴人さん?ひなたちゃんに会わないんですか?」


俺は寝てるんだ。チョコはリツコさんが預かってくれ。


「・・・。晴人さん、チョコだったら私が食べておいていいですね?」



トントントントン



だめだ!ひなたのチョコは絶対に俺が食べる!


俺は素早くベットから降りると、階段を下りていたリツコさんを追い抜いて玄関についた。
















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