バレンタインにイケメンは決意する。②
バレンタインにイケメンは決意する。はこの話で終わります。
「俺は・・・。俺はヒナが嫌じゃないなら本当の男女交際にしてこのまま続けたいんだけど。」
「・・・。」
「・・・。」
沈黙はどれくらい続いたのだろうか。
1瞬だったようにも思えたし、10分ぐらいだったようにも思えた。
「えっと、それって・・・。」
「だめか?」
「このまま男女交際を続けるってどういう意味?」
「俺はひなたが大好きで、このままずっと一緒にいたいって意味。」
「え?」
「え?じゃねえよ。鈍感。」
「え??」
「俺がヒナを好きだって、駆も翔真も気付いてる。」
「え?」
「物心ついた時からヒナしか好きじゃない。ヒナが俺を好きじゃなくても、嫌いじゃなければこのまま付き合って欲しい。俺、ヒナに好きになってもらえるように努力するし。」
「・・・。」
「ヒナが隣にいない人生なんて考えられないんだ。大学に行くと別々になると思うだけで勉強も手につかないし、ヒナがいつか俺以外の男と付き合うとか、マジ無理だし。」
「・・・。」
「・・・だめか?」
「・・・だ、・・・。」
「だ?」
「だ・・・、ダメ。」
「えっ?!ダメ??」
「あ、ううん、ダメじゃ、ないんだけど・・・し・・・。」
「し?」
「し・・・、心臓が・・・。」
「?」
「心臓がばくばくしちゃって・・・だめ。うまく話せない・・・。」
「落ち着くまで待つから、深呼吸、して。」
「う、うん。す、スー、ハー。スー、ハー。」
「・・・大丈夫?」
「うん。ごめん。」
「いや、驚かせてごめん。」
「ううん、えーっと、ごめん。」
「ごめんって、それって・・・。」
「あ、ち、違うの、そうじゃなくて、えっと。」
「俺と付き合うの嫌だから、ごめん、じゃない?」
「うん、違う。付き合うのは、えっと、ちょっと置いといて。」
「・・・。」
「私、このお試し男女交際、すごく楽しかったの。」
「おう。」
「で、今日で最後だと思ったらすごい寂しかった。」
「おう。」
「で、ハル君はどうなんだろうって思ったの。」
「ん?」
「ハル君はこのお試し男女交際が終わったら本命の彼女のところに告白するんだと思ってたの。」
「・・・。」
「そう思ったら胸がぎゅってなって。」
「うん。」
「これが幼馴染をとられる嫉妬なのか恋なのか、自分でもわからないの。」
「うん。」
「でもね、そうなったら寂しいって思った。」
「ん?」
「ずっと隣にいてくれたらいいのにって。」
「?」
「・・・ハル君、私のどこが好きなの?」
「え?」
「私、あんまりいいとこないでしょ?顔もスタイルも性格も全部普通か普通以下・・・。」
「んなことねえよ。全部超かわいいよ。」
「いや、私、自分のことは分かってるから大丈夫だよ?」
「いや、まじで、俺、ヒナの事、好きどころじゃないから。大好き、だから。」
「ハル君、顔、赤い・・・。」
「当たり前だ。こんな事照れずにいえる奴は詐欺師だ。」
「ハル君に好きになってもらえるところが自分で見つけられない・・・。」
「だから、もう、大好きな理由なんかいっぱいありすぎていちいち挙げられねえんだよ。」
「でも・・・。」
「でも、じゃねえ。俺が大好きなヒナにいいところがないなんて本人でも言っちゃだめだ。」
「ん?んー、ただ近くにいるからそんな気持ちになっちゃってるんじゃなくて?」
「それは俺ももう何万回も自問自答したけど、そんなのわかんねえ。でも、俺はそんなの関係なく、ヒナが大好きなんだって結論に達したんだ。」
「それってあってるかな?」
「あってる。」
「ほんとに?」
「だって、17年間他に誰もいいな、とも思わなかった。」
「うーん。」
「ヒナはまだ俺の事大好きじゃなくてもいいんだ。俺といて嫌じゃなければ。」
「でも、ハル君の事、すごい好きな人に失礼じゃないかな?」
「じゃあ、俺が何とも思ってない人のために、俺のヒナがすごい好きな気持ちは後回しでもいいのか?」
「うーん。」
「てか、ヒナも俺とずっと一緒にいれたらいいのにって思ったって、さっき言ったよな?」
「うん。」
「それってヒナも俺の事好きなんじゃないのか?」
「好きか嫌いかの2択だったらもちろん、好きだよ。」
「じゃあ、付き合おう。」
「で、でもね、それでいいのかな?」
「何が気になる?」
「えっと、ハル君が私を好きっていうのが信じられない。」
「信じられないって・・・俺が嘘ついてるとかそういう?」
「あ、ううん、そうじゃない。ハル君は嘘つくような人じゃないよ。そうじゃなくて、なんでハル君が私を好きなのかが、私が理解できないの。」
「ヒナは自分のいいところに気付いていなさすぎるんだ。ヒナは超魅力的で、超かわいい。」
「うーん。」
「うーん、じゃねえよ。そうなんだよ。」
「・・・ピンとこない。」
「いいよ、これから俺がいちいち解説してやるから。だからこれからもずっと一緒にいよう。」
「う・・・うん。」
「うんっていったな?」
「ん?」
「じゃあ今日から俺たちは付き合ってる、って事だよな?」
「ハル君はほんとにそれでいいの?」
「それじゃなきゃ嫌だって言ってるだろ。」
「そっか、じゃ、じゃ、じゃあ、それで。」
「これからはヒナがちょっとびびるような事もするかもだけど、いいよな?」
「え?ちょっとびびるような事って・・・。」
「男女交際中の男女がする事、もう遠慮しなくていいんだよな?」
「・・・、うんっていうのは勇気がいるよ。」
「じゃあ頷くだけでいいにしてやるよ。」
私はちょっと考えてからゆっくりと首を縦に振った。
まさか、本当にハル君と付き合う日がくるとは思っていなかった。
男女はお互い強く惹かれあって燃え上がるようにお付き合いを始めるものだと思っていた。
こんな中途半端な気持ちでお付き合いが始まってしまっていいんだろうか、という疑問はあるけれど、ハル君を好きな気持ちはもちろんあるし、ずっとハル君と一緒にいれたら楽しいんじゃないかとは思う。
これから大学は別になってしまうだろうし、就職先だって違う。
きっとハル君の周りにはハル君に釣り合うたくさんの素敵な女性が現れるだろうし、今までみたいに告白とかもされるだろう。それに、私との距離ができればハル君にも他に好きな人ができるかもしれない。距離ができて大人になって、初めて、ハル君の私への気持ちが本当の恋なのか、幼馴染特有の独占欲の延長なのかがハル君にもわかるんだろう。
私もその頃にはこの気持ちが恋なのかどうかわかるだろう。
そんな中途半端な私たちだけど、ハル君が私と一緒にいたいと言ってくれるなら、ハル君がもう私と一緒にいたくない、と言うその日までで楽しく過ごせればいいかな?と呑気な私は考えてしまった。
ハル君にとってこの告白はどれくらいの勇気がいっただろうか。
用意周到なハル君の事だから、そうとうな決意がいったことだろう。
バレンタインにイケメンは決意する。
ハル君と私のお付き合いはバレンタインから始まった。
頑張れ、私たち。
花も嵐も踏み越えられるかどうかはわからない。
でも、精一杯青春してみようと思う。
私たちの青春はまだまだ続く。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
我が家で飼っていた柴犬のコタロウが2014年12月18日に亡くなりました。
その沈んだ気持ちを紛らわせるために勢いでなんの下書きもなく書き続けましたが、だらだらとしてきてしまったので一旦これにて完結にしたいと思います。
この話は交際編、大学編、就職編、と考えていなくもないのですが、イマイチ辻褄が合わなくなってしまったりするので、もう少し練ってから書くようにしたいと思っています。
あ、需要があれば、ですねW
まだ書きたい事もあるので、今後もまただらだらと書き足すかもしれません。
お時間があれば、また、お付き合いくださいませ。
それでは。




