ネットでイケメンは検索される。②
ネットでイケメンは検索される。はこの話で終わります。
話題の「イケコウサク」で藤村晴人を検索してみた。
藤村晴人くん
○○高校 2年
身長 182cm (推定)
体重 70kg前後 (推定)
弓道部
中学時代 陸上部(全国大会出場経験あり)
彼女 なし (推定)
彼女いない歴 = 年齢 (推定)
<遭遇情報、攻略状況報告等掲示板> - 過剰な個人情報の記入は削除します -
年上女子: 12月20日 下校途中に告白 → 撃沈しました。
好きな人がいる、とのこと。自信あったのに残念。
恋乙女: 地味な女子と下校しているのを発見! 彼女か??
庶民:あ、それは多分、幼なじみの女子。
年上女子: あ、それは雑魚キャラだから大丈夫よ!
くろねこ: 今日、多分、図書館で見かけた!やっぱ超小顔!イケメン!!!
木部さん: 同じ学校の同級生だけど、こういうの、よくないと思います。
りおんのママ: いいじゃん、イケメンはみんなのものよ!
年上女子: 木部さん、うざい。
恋乙女: 特に迷惑かけてないし、いいじゃーん。
ピアニカ: マラソン大会で1位だったんだって!
イケメンで運動もできるなんて最高!
しかも、期末テストも学年1位だったらしいよ!
恋乙女:学園祭に潜入!晴人くん発見!浴衣きて客引きをいやそうにしてたww
写真とってもいいですか?って聞いたけど「そういうのは、ちょっと。」
って断られたー。でも声も素敵だった!
やっぱり晴人くんが日本一のイケメン高校生だと思う!
<画像> - 盗み撮り、隠し撮りは不可 本人の許可したもののみUP可 -
なんだか、よくないものを見てしまった。様な気がする。
こういうことになってるんだ・・・。<画像>のところにはいくつかのスナップ写真が貼り付けられていた。ハル君が掲載を許可したとは思えないけど・・・。
なんだか本気で怖い。
しかも、私って雑魚キャラなんだ・・・。
うーん。いやいや、そこじゃないよね、論点がずれている。
こういうサイトに書きこまれちゃったりするんだなあ、ハル君情報。
なんだか可哀そうだ。
この情報、ハル君に教えたほうがいいかなあ・・・。どうしよう。
なんて考えてながらテレビなんて見ていたら寝落ちして、土曜日、初デートの朝が来てしまった。
コタロウの散歩の時間だ。
防寒機能抜群の散歩着に着替えてハル君の家に行く。
「コタ!おはよう!」
「よ。」
「あ、ハル君、おはよー。」
「行くか。」
「うん。」
いつもの散歩コースをまわる。
やっぱり、気になってしまう。
「ねえ、ハル君。」
「ん?」
「イケコウサクってサイト知ってる?」
「・・・。」
「あ、知らないよね、ごめんごめん。」
「・・・知ってる。」
「え?」
「翔真が俺の情報載ってるぜって見せてきた。」
「あ、そうなんだ・・・。」
「プライバシーの侵害だっての。」
「だよねえ。・・・最近は、見た?」
「不愉快だから見てない。」
「だよねえ。」
「何?ヒナ、見たの?」
「うん、昨日、初めて本物見たの。」
「本物?」
「噂では聞いてたけど、本当にあるとは思ってなくて。」
「ふうん。」
「ひどいよね、あんなの。」
「最近どうなってるか全然知らないけど、俺が見た時は彼女いない歴=年齢って書いてあったしな。」
「ねえ。」
「まだ書いてあるのか?」
「昨日、見た時は書いてあったよ。」
「ふうん。」
「12月20日に告白してきた年上の女の人っていた?」
「あ?」
「書き込みされてたの。12月20日に告白したけど撃沈したって。」
「覚えてないけど、まあ、ゲームみたいな感覚なんだろな。」
「・・・。」
「俺が見た時は <遭遇、攻略掲示板> って書いてあったんだけどさ、俺はモンスターっかっての。」
「いや、アイドルみたいな感覚なんだと思うけど・・・。」
「俺はアイドル稼業で金稼いでねえし。」
「そうだね、でも・・・。」
「ん?」
「ううん、何でもない。今日の初デート、楽しみだね。」
「・・・。」
「昨日ね、着る服決めて、あ!買い物いかないと!」
「・・・。」
「あれ?スマホだしてどうかしたの?」
「イケコウサク、藤村 晴人。」
「?」
「・・・何だよ、雑魚キャラって・・・。」
「あ、見ないほうがいいよ、それ!」
「こういうこと書かれるのがやなんだよ。どこで誰と何してようが俺の勝手だっての。」
「まあ、キレイな顔で生まれちゃったからしょうがないよ。得することもあると思うし。」
「俺はまあどうでもいいけど、俺の周りの事までとやかく言われたくないんだよ。」
「それはまあ。でも、ハル君に会えて単純にうれしいっていう書き込みとかはちょっと嬉しいかも。」
「・・・。」
「あれ?だめ?」
「俺がさ、誰かと付き合ったら絶対ここにも載るだろ?」
「ちょっと他の人のページみたら、彼女遍歴ってあったもんね。顔写真載っちゃってる人もいたし。」
「そういうの、ホントどうかと思う。」
「そっかー、ハル君は彼女の気持ちとかを考えてるんだね。」
「俺と付き合ったせいで顔とかさらされて、いわれのない悪口とか書かれるって。」
「でも、そんなの気にならない!っていう強い気持ちがあれば大丈夫だよ。」
「誰に?」
「え?彼女に。」
「・・・。」
「だってさ、どんなに悪口とか書かれたとしても、好きな人と付き合えるんだったらいいんじゃないかなって思うけど。」
「例えばさ、俺ともう一人の男がいるとするじゃん。」
「うん。」
「例えばヒナがその二人の事が同じくらい好きだったとするじゃん?」
「うん。」
「俺と付き合うと全然知らない人とかに悪く言われるけど、もう一人と付き合うと皆に祝福されるとするじゃん?」
「うん。」
「ヒナだったらどっち選ぶ?」
「うーん、二人の事を同じぐらい好きなんだったら付き合わないかな。」
「?」
「何があってもこの人が好きって思わなかったら私はお付き合いはできないかも。ハル君は違うの?」
「そりゃあまあ、そうだけど、ヒナ、そんなに誰かの事好きになれそうなのか?」
「・・・うーん、わかんないけど、いつか、そうなったらいいなって思ってるよ。初デートの準備とか超ウキウキしたし。」
「例えばさ、例えばだけどさ、ヒナが俺の事すごい好きだったとしたらさ。」
「うん。」
「俺と付き合うと悪く言われたりとか面倒な事があるかもだけど、付き合ってくれって俺が言ったらどうする?」
「ハル君が真剣に私の事好きで、私も真剣にハル君の事好きだったら付き合わない理由はないかなって思うよ。やっぱり本人同士の気持ちが一番大事だと思うから。ハル君は同じ状況だったとして、私と付き合ったら ”なんだ、アイツ地味な女と付き合ったな”って言われちゃうだろうけど、私と付き合って下さいって私が言ったらどうする?」
「付き合うに決まってるだろ。」
「ね?そういうことだよ。」
「・・・そうか。わかった。」
「今日の初デート、誰にも見られないといいね。」
「だな。」
イケメンはネットで検索される。
そんな事、考えた事もなかった。
初デート用におめかしした私がハル君と一緒にお試しデートしている姿をもし目撃されたら、どう見られるんだろう?
もしかしたらハル君は自分と自分の好きな人が付き合ったときに起きる弊害とかも検証しておきたいのかもしれない。
イケメンも大変だ。
イケメンとお試し男女交際する私も意外と大変な事があったりするかもしれない。
頑張れ、私。
私の毎日はお試し男女交際というイベントでワクワクドキドキと少しの不安を混ぜ合わせながらまだまだ続く。