初詣でイケメンは大吉を引く。③
この話で 初詣でイケメンは大吉を引く。は終わります。
「俺たち、付き合わないか?」
腰が抜けるかと思った。
「え?」
「お試しで。」
「え??」
「ヒナが嫌なことは絶対しないし。」
「・・・する訳ないよね、ハル君が。」
「・・・。いや、まあ、その・・・」
「?」
「誰にも内緒にして、ヒナに嫌な思いもさせないし。」
「・・・・・。」
何だか思考が停止してしまった。
えーっと、つまり、私が好きだから付き合いたいっていう話じゃなくて、男女交際を試してみたいっていう話なのかな?
男女交際を試すにあたってキスとかそういうことはしないって事?
誰にも内緒にすれば「どっちが告白したの?」とか、「なんで別れたの?」とか言われなくてすむし・・・って事かな?
ちょっと整理できてきた。
「えーっと、それって今とどう変わるの?」
「・・・。とりあえず、二人きりの時は男と女として接するとか?」
ハル君はもごもごしながら言った。
「うーん、難しいね。」
「・・・難しい?」
何だかハル君は今日声が小さい。
「だってハル君はハル君だし。」
「俺の事男としては見れないって事?」
「・・・ハル君は私の事、女の人として見れるの?」
「見れるよ。す、好きだし。」
「そりゃあ私もハル君の事は好きだけど。」
この場合の好きはLOVEじゃなくてLIKEの話をしてるんだよね。
「幼なじみっていう私たちの関係はどうなるの?」
「それは変わんないよ。」
「変わんないの?」
「幼なじみで彼氏と彼女。そういう関係もあるだろ?」
「お試しで?」
「だって、ヒナ、好きって気持ちよく分かんないんだろ?」
「・・・うん。」
「だからお互い試してみるのがいいんじゃないかって。」
あ、そうか。
ハル君は男女交際を試してみたくて、私の恋愛音痴も何とかしてくれようとしてるのか。
ハル君にとっても私にとっても悪い話じゃないよね。
でも、今、ハル君が好きな人の事はどうするんだろう?
「お試しってどれくらい?」
「とりあえず、バレンタインデーまでぐらいでどう?」
そうか、バレンタインデーにその人から告白されるかもしれないもんね。
「男と女として接するって私できるかどうか分かんないけど・・・。」
「俺だって分かんねーよ。」
「あ、そうだよね。それを理解するためのお試しだもんね。」
「まあ。」
「毎日メール30本以上とか言わないよね?」
「言わねーよ。」
「お試し期間中に本命から告白されたらどうするの?」
「誰の?」
「え、だから、ハル君の。」
「・・・。」
「?」
「お互いこのお試しが嫌になったらすぐに申告する。」
「っていう事にするのね。むむう。」
「もちろん、問題点があったら二人で話し合う。」
「うん、そうだよね。」
「試してみる価値はあると思うんだ。」
「うーん、まあ、そうかな。」
「じゃあ?」
「いいよ。」
「まじで?」
「うん。」
「・・・。」
「よろしくね、彼氏さん。」
ふざけてそう言ったらハル君が顔を背けた。
背けた顔の耳が赤くなっていた。
初詣にイケメンは大吉を引く。
大吉で勢いづいたのか、ハル君は思いもしない行動にでた。
お試し男女交際。
なんだかよくわからないけど、ハル君となら楽しくできるかもしれない。
少しの不安とそれよりちょっと多めの期待。
頑張れ、私。
私の毎日はちょっと変化をみせつつまだまだ続く。