初詣でイケメンは大吉を引く。②
元旦の朝、ハル君とコタロウの散歩に行き、帰ってきた。
「じゃあ、また9時に。」
「うん。」
いつも何となくの流れで初詣に行っていたけど、今回は二人で行くせいか、何だか緊張する。
何着て行こう?
今までこんな事考えた事なかった。
ハル君と二人きりで出かける事なんて何度もあったのに。
結局、グレーのダッフルコートに黒いウールの半ズボン、黒いタイツ、黒いボアブーツ、ハル君からもらった赤系のジャガード柄のマフラーと手袋といういつものお出かけ服にした。
もちろん、クリスマスにハル君からもらったブレスレットも着けている。
ピンポーン
呼び鈴が鳴った。
ハル君だ。
「はーい。」
そこに、いつもよりちょっとおしゃれした駆が走ってきた。
「何?」
「俺も一緒に出掛ける。」
「ん?もうふられたの?」
「ちがうよ!あほか。」
「じゃ何で?」
「母ちゃんたちにはまだ話してないから。」
「へ?」
「まあいいから、行こう。」
ガチャ
「お、駆。」
「晴兄、いいから行こう。」
「おお。」
「行ってきまーす!」
駆はわざとらしく家の中に向かって大きな声で言った。
家から少し離れたところでハル君が口を開いた。
「待ち合わせ、どこでしてるんだ?」
「莉帆子さんの家の近くの駅。」
「ふうん、頑張れ。」
「晴兄もね、じゃ、俺行くわ。」
「おう。」
駆は駅に向かって走って行った。
「ねえ、ハル君、駆、もうふられたんじゃないよね?」
「は?」
「リホちゃんの家の駅に行くって言ったもんね?」
「ああ、春子おばさんにまだ彼女できた事話してないからバレないようにしたんだろ。」
「え、お母さんに内緒にするつもりなの?」
「まあ、まだ話しにくいんだろうな。」
「へえ、そうかあ。だから一緒に家を出たんだね。お母さん鋭いからね、そういう事。」
「春子おばさんにはもうバレてるかもな。」
「え?何で?」
「だって、最近、駆そわそわしてるだろ?」
「そうかなあ。」
「・・・。」
「あ、今呆れたでしょ。」
「いや、呑気でいいと思うよ。」
「なんか褒められた気がしない。」
「褒めてるよ。」
「うーん。」
「混んできたな。ヒナ、手。」
「うん。」
初詣に行く人で道が混んできていた。はぐれないように毎年ハル君が私の手を引いてくれる。
今までは駆が一緒にいたからあまり感じなかったけど、今年は何だか意識してしまう。
私、ハル君と手を繋いでる。
二人きりで手を繋いでいる高校生の男女。
付き合ってるように見えたりするかな?
神社の階段を上りきって、本殿の前にたどり着く。
ハル君と二人で並んでお参りをする。
去年一年ありがとうございました。今年も頑張りますのでお見守りください。
毎年同じ、お礼と決意の宣言。
ふと隣を見る。
ハル君がいつになく熱心にお参りしている。
やっぱり、好きな人とうまくいくようにお願いしてるのかな?
あれ、今、ちょっと私、きゅうん、ってしたかも。
最近、私、ちょっと変だな。
「おみくじひこう。」
ハル君が私の手を掴んだ。
おみくじの列に並ぶ。
手を繋いだまま、駆の恋の行方について二人で話す。
「うまくいくといいよね。」
と私が言ったところで私たちの順番が来た。
ガシャガシャ
みくじ筒から出てきた番号を受け付けの人に告げる。
「はい、どうぞ。」
おみくじを手にして人の少ないところによける。
「あ、末吉だ。ハル君は?」
「大吉。」
「去年も大吉じゃなかった?」
「だな。」
「去年は私中吉だった気がするな。で、今年は末吉かあ。末吉って凶の一個上なんだよね・・・。」
「なんて書いてある?」
「信じて努力せよ。ハル君は?」
「神の加護がある。」
「むむう。恋愛は相手の意見を聞けだって。」
「恋愛・・・その人が運命の人。」
「待ち人はくるともおそし。」
「待ち人・・・来る。」
「願い事は時間はかかるが叶う。」
「願い事・・・叶う。」
「なんか、負け惜しみだけど、大吉って風情がないよね。」
「風情・・・?」
「末吉は、時間はかかるけど、叶うから頑張れって励ましてくれる感じがあるけど、大吉って、叶う、来るってなんか結果はいいんだからいいだろ?みたいな感じしない?」
「ああ。まあ、言いたいことは分からなくもない。」
「でも、大吉引いたんだからきっといい事あるよ、よかったね。」
そう言ってハル君の顔を見上げたら、ハル君は何故か私の目をじっと見てちょっと複雑そうな表情をした。
「冷えたから温かいもんでも飲もう。」
ハル君に手を引かれ入ったカフェで、私はものすごく驚くことになった。