異変の始まり2
どうやらト書きの始めにスペースが入っていなかったみたいです。
その為、読みづらさを発生させてしまいました。
御迷惑をおかけして大変申し訳ありません。
父親が死んだときの連の年齢の変更と夕菜の身長を変更させていただきました。
俺は今、一人で学校へと向かっている。
すると疑問に思う人が何人かはいるだろう。
そんな人の為に簡潔に説明しよう。
──……いなかったのだ。
まあこれは俺が勝手に判断しただけだが……。
説明を省き過ぎてしまった。ここはやはり詳しく説明した方が良いだろう。
†
家を出た俺は少し歩いた所で、後ろを振り返る。
理由は言うまでもない。
……母がとても慈愛に満ち溢れた表情で俺を見つめているのだ。正直言って、今なら何処かの宗教の人が「あなたは今幸せですか?」と言って勧誘している時の表情にも劣っていないだろう。
「連くん頑張るのよ~。もし玉砕してもその骨はちゃんと拾ってあげるから~。」
とても励ましとはいえない冷やかした物言いだが、とにかく冗談にせよ縁起でもないこと言うなよ! (当然のごとく、告白はしないが……)と思う。
それと同時に自分の息子に言うセリフじゃないよな……。と思う。
そんな気持ちが相まったせいか思わず母の名前を呼び捨てしそうになるが、何とか堪える。
そういえばちゃんと紹介をしていなかった。母の名前は白樫友里恵。先程の状況から見ての通り、元気かつスイッチが入るとなかなか止らない。後、俺が母の名前を呼び捨てしそうになったのは年は三十六歳であるが、外見が二十代ぐらいにしか見えないのと、行動に関して言えば、性格のせいなのか、高校生か大学生に見えてしまう。父親は俺が十一歳の時にとあることで亡くなり、女一人で俺を育てている。
何処かの風の噂で母はモテると聞いたが、家に男を連れ込んでいるのを見た事がないので、再婚することはないだろう。もし再婚するならば、母が俺に言わない訳がない。
その時、俺はどんな風に聞けばいいのだろうか……。真剣に? 悲しそうに?
それは分からないが、答えは決まっている。
──『すればいい』だ。
母の幸せを邪魔する権利は俺にはない。
だから反対するつもりもない。ただ、それがとんでもない男であれば話は別だが。一時は幸せでもそういうのに限ってすぐに崩れやすい。
…………。
やはり俺は反対してるのか……? 母の幸せを願うからこそそういうのには反対する。全く矛盾している。
そんな俺の名前は白樫連。年は十六歳で高校二年生だ。俺の通っている学校はごく普通の学校だ。特に目立った実績もなく、特色もない。
じゃあ普通って何? と問う人がいるが、そういう人に限って、大抵普通である生活に溺れ、満喫しているのだ。
「くだらないな」
これ以上、「普通」について考えているときりが無いので、俺は頭を軽く左右に振り、さっきまで考えていたことを自分の記憶から抹消した。その行為が終わるとどうやら見えてきたようだ。それは無論、あいつ……いや幼馴染の古谷夕菜の家である。
俺の家と夕菜の家の距離は家何軒かぶん挟んだ所にある。親同士の仲が良いのと、保育園も一緒だったので、自然と幼馴染になっていた。
だがそこはいつもと何かが違った。とても抽象的な表現であるが、漂っている空気が違う。風も少しざわついている。雲行きも少し怪しくなってきたので、今日は雨が降るのだろうか……。出来れば学校に着くまでに降らないでほしいが……。
そんな願望を抱きつつも俺はその場から呼びかけた。
「夕菜ー。迎えに来たぞー。早くしないと先に行くぞー」
なるべく大きな声で呼びかけたが、反応がなかった。ひょっとして、まだ寝ているのであろうか? そうだとしたら全く持って不本意だ。
いつもなら基本一回で反応があり、慌てて階段を降りる音がして十分ほどで出てくる。
しかし今日はそれがない。念の為、もう一度呼びかけてみよう。
「おーいまだ寝てんのかー? 俺はもう行くぞー。後で文句とか言うなよー」
これまたなるべく大きな声で呼びかけたが、反応がなかった。
家の中に入って確認したかったが、雲行きの方も心配で億劫な気持ちになったため、そちらを優先した。母にこの事情を説明したらまた色々と言われそうであるが……。
†
そんなこんなで、割と今は複雑な心境であるのだ。
それと実は普段は起こらないこの状況を良いと思っている。
誤解を招かないように補足しておくが、夕菜のことが嫌いとかそういうのではない。
俺は朝起きる、顔を洗う、ご飯を食べる、歯を磨く、学校に行く、家に帰る……。この作業のような毎日が繰り返されるのが嫌なのだ。いくらそう思っていてもその毎日がそう簡単に変わるはずもないので、最早どうでも良くなった。
だから、こんなちょっとした身の回りに起こった異変を良いと思ったのだ。ニュースもそれに当てはまるはずなのだが、いつも同じようなことばかりやっているというイメージが付いてしまったせいか、そのように思えない。(良いとまでは思っていないが、興味をひく例外もあるが……)
†
俺は学校に着くといつものように正門から昇降口へと行く。
ちなみに正門付近には大きな桜の木が2本立っており、遠い誰かの将来を暗示しているようにも見える。
この桜は春になるととても見物であり、入学したての頃は見蕩れるというのがしばしあった。 俺は下駄箱に靴を入れ、学校用のスリッパに履き替え教室に行く。
言うまでもなく、まるで何処かのアニメのように美少女もしくは美人にぶつかり、それがきっかけで交際、結婚……こんな出来すぎたルートがあるわけでなく、教室のドアを開ける。
教室のドアを開けるとすでに何人かは来ているようだ。その何人かいる生徒の中の一人を見て、目を擦った。次に軽く自分の頬を抓ってみる。
──……痛い。
──…………現実だ。ここは現実だ……。
なぜそのような当然のことを確認しなければいけなかったかというと、その一人が夕菜であったからである。
身長は百六十前半。スッとしている体。胸元まである少し長めのストレートで、黒色の中に少し栗色が混じった髪。例えると紅葉の葉の濃く重なった影が黒髪に落ちた感じである。キリッとした顔立ち。笑うとほんの少し出来るえくぼ。
これだけでも夕菜であるのは間違いないのだが、後は声を聞きさえすれば完璧である。
夕菜も俺の存在に気付いたらしく声を掛ける。
「おっ、連くん遅かったねー。おはよ!」
その声は高すぎず自然と声が入ってきて嫌にならない。完全に夕菜である。
「おはよう夕菜」 色々沸沸と湧き上がるものがあって、それを一斉に吐き出したかったが、まずは夕菜の挨拶に返事をした。
数秒ほどためて「……で」と切り出した。その後に一番の疑問をぶつけて先手を取りたかったのだが……。
「えへへ驚いたでしょ? 私が連くんより先に来てるなんて。それより連くんは何が言いたかったの?」
まるで俺が何を言わんとしているか全て見通してるかのような内容を言った。どうも相手の方が一枚上手だったようだ。
先に一枚取られてしまったが、本当に聞きたいのはその理由である。
「俺が聞きたかったのはそのこと。今日に限って何でだ?」
それを聞いた夕菜は待ってました! と言わんばかりの表情になる。でも心無しかそれが取り繕っているように見えてしまった。
「んーえっとねー……」
そう言いかけた所で、突然吃ってしまい、表情も凍り付く。
それは一瞬の出来事であり、すぐに元の表情に戻った。
気付いたのはおそらく俺だけであろう。詮索したい気持ちはあったが、あの状況から察するに芳しいことであるはずがない。そういうことを無理矢理聞くのは良くない。ましてや幼馴染とはいえ女子である。男子が踏み入れてはいけないという一線というものがあるはずである。ここは夕菜が何か言うのを待つのが適切だろう。
すると夕菜が若干照れながらこう言った。
「……心境の変化……かな?」
照れながら言っているもののそれも何処か取り繕っているように見える。これは嘘なのか? 夕菜は嘘を言っているのか? 夕菜は続けて……
「ほら私っていつも連くんに起こしに来てもらっているじゃない? 何か悪いなーって」
「悪いなんてあるもんか。日常茶飯事だからお前を起に行くのはもう慣れた」
──……あ、やばい。まただ。またやってしまった。少なくとも俺は起こしに行くのを良いとは思っていないはずだ。なのに悪くないと俺は言った。どうしてなんだ?朝のことといい、調子が狂いっぱなしだ。これが自分自身でも分からない自分というものなのか?
「連くん大丈夫? いきなり悩みだしたけど……」
夕菜のその言葉で俺は正気に戻った。
「大丈夫大丈夫。少し考え事をしてただけだ。あの夕菜が一体どういう風の吹き回しでそんなこと言うのかなーなんてな」と嘘をつく。いや……嘘ではないか……。
「そっかぁ。じゃあ続けるね」
「ああ」
「だから今日ぐらいは! と思って早めに家出たんだー。どう?驚いたでしょ?」
「ここは本当に現実なのかって思った」
「そこまで言わなくてもー」
「仕方ないだろ。普段があれなんだから。驚かないわけがない」
「はは。そうだね」
そう言うと、夕菜は時計を見て、続けてこう言った。
「そろそろ席に着こっか」
「そうするか」
会話を終えて各々自分の席に戻る。
だが俺が自分の席に着こうとすると夕菜が何かいい忘れたのか、こっちに来た。
「…………連くん本当は気付いているんでしょ? 私が嘘をついているってこと」
今回は少し長めに書きました。
というのもそれは以前に比べてこの作品を見てくださる方が増えたからです。
またこの作品をブックマークして下さる方、評価をつけて下さる方。。。
色々な方々のおかげでこうして自分は今作品を書いていられるのだと心よりそう思います。
これからも応援宜しくお願いします。