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ねこのおまじない

作者: 蒲生竜哉

わたしキキ、ねこのキキ。

見てみて尻尾、わたしの尻尾。

とっても長くてふにゃふにゃしてる。しましま模様がすてきなの。

わたしのおみみ、くるくるしてる。さきっちょ巻いててかわいいの。

かゆくなるけど大丈夫。しゃしゃって掻けばもう平気。


わたしのママはおばあさん。とってもとってもおおきいの。

おおきいからだはとっても不便。だってお顔が見えないの。座っていても下から見えない。

ママのお顔が見たいから、わたしはいつも上に乗る。

テーブル、パソコン、そして膝。お膝に乗ればお顔が見える。お膝に乗ればよく見える。

上に乗ったら高さはいっしょ。おはなもいっしょ、目もいっしょ。


ママのお仕事、ごほんの仕事。

大きな声でね、ごほんを読むの。お部屋の中で練習してる。

見えない人に聞かせるの。おしばいみたいに舞台で読むの。ラジオみたいに放送するの。

ママがごほんを読むあいだ、わたしは机に座ってる。机に座ってママを見る。

お顔が見えれば安心よ。ごろごろしたり、うとうとしたり。


わたしのベッドは窓のそば。

いつもおそとを眺めてる。鳥さん、自動車、それにママ。

おでかけするとね、不安なの。帰ってくるかな、大丈夫かな。

だからいつもね、おそとを見てる。ママはどこかな、まだかしら。

帰ってくるまでずうっと見てる。暗くなってもずうっと見てる。


でもね、心配。最近ね、ママはなんだか元気がないの。

なんだか咳して元気がないの。ソファの上でずうっと寝てる。お薬のんで、ずうっと寝てる。

ママのお膝に乗っかって、わたしはママの顔を見る。なんだか辛そう、苦しそう。

はやく元気になってママ。

また遊ぼうよ、お散歩しよう。


あるときママはおでかけしたの。

きっと病院、くるまに乗って、ブンブンブインって出かけていった。

お出かけしたらそれっきり。ママは帰ってこなかった。いつもは帰ってくるのにね。

どうしちゃったの、迷子かな。おっきいのにね、なんでかな。においが届かないのかな。

おうちがわからないのかな。きっとそれはくしゃみのせい。

 

いつもは帰ってくるのにね。今日は帰ってこなかった。

お留守のおうちは真っ暗け。わたしは平気、でも寂しい。

ママがいないとおうちが広い。とっても静かで寂しいの。とっても静かでとっても寒い。

おうちがわからないのかな? どこいっちゃったのかなあ。

夜には帰ってくるのにね。いつもは帰ってくるのにね。

 

ママが帰ってくるように、わたしはおまじないをした。これはねこのおまじない。

おふとん、おトイレ、床の上。あっちこっちににおいをつけた。

ふとんの上には念入りに。壁にもちゃんとにおいをつけて。

ママににおいが届くといいな。くしゃみしててもわかるといいな。

これだけにおえば大丈夫。おはながダメでもきっとわかる。


そしたらママが帰ってきた。おまじないが効いたんだ。

おうちがわからなかったのね。においがしたからわかったの。

においは大切、こねこのにおい。ママのにおい。おうちのにおい。

ママがいるとね、とっても安心。

ママがいれば、大丈夫。


ママはなんだか痩せちゃった。なんだかとっても痩せちゃった。

ごはんを食べなかったのかなあ。お病気だったからかなあ。

だから上に座ったの。一緒にごはん食べよって。

ごはん食べれば元気になるよ。一緒に食べて元気になろう?

元気になったら、一緒に遊ぼう。猫じゃら棒で一緒にあそぼ?


わたしキキ、ねこのキキ。

ねこのまじない、とっても良かった。

ねこの神様言うとおり、においをつけたら帰ってきたの。ママがおうちに帰ってきたの。

おふとん、おトイレ、そして壁。においがすれば大丈夫。

においがすれば迷わない。ママがいれば、大丈夫。

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