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5話

「知らない天井だ」


長堂は目を覚ました。ちらりと横に幸せそうに寝るフェイを見て、


「どうしたもんか……」


と、長堂は思い悩みかけたところで、すぐに打ち切り、


「うん、朝ごはん食おう」


長堂はくっついているフェイを剥がし、代わりに枕をあてがい、部屋を出た。

棚からフライパンを出し、魔力で動いているらしいコンロの上に置き、何かの卵を焼き始める。ついでに食べれそうなウインナーもどきもフライパンに転がす。焼いている間に野菜も洗い、木のボウルに盛っていく。

鼻歌でフンフンしながら、2人分の朝ごはんをテーブルに完成させて行った。匂いに釣られて、目を擦りながら寝巻きのフェイがやってきた。


「ラクト、おはようございます……」

「おう、食おうぜ。そいじゃ、手を合わせていただきます」

「いただきます……」


長堂が昨日の晩御飯時に説明をした、"いただきます"をフェイもして、静かに食事が進んだ。


「「ごちそうさまでした」」


二人で手際よく食器を洗い片付け、一息ついたところで、熱いお茶もどきをフェイがカップに用意してくれ、それをのんびり飲みながら、


「それじゃあ、精霊も寝てることだし、この世界について色々教えてほしい」

「はい。それではまず、身近な私と魔力の関係から話していきましょうか。魔力は人間1人1人全員に宿っており、その量は個人個人違っております。その中でも私がこの辺り一帯で一番強かったため、生贄と選ばれました」

「うん」

「そして、人と魔力の性質として、死に関わる時に高まるという性質と、意思によっても変動するという、非常に流動的なものでもあります。ゆえに、生贄と選ばれた者はその覚悟を、この山の礎となることを硬く意識し、その上で、体を魂を全て魔力に変換することで非常に多くの魔力を、この地に満たすことができるのです」

「なるほどなー。それであんなに思いつめてたわけか」

「はい。そうでなければより多く、より長くこの山へ魔力を満たすことができなくなり、次の生贄が早まるからです」

「なんとも厳しいところだなぁ」

「いえ、ここはまだ精霊様が眠るところであって、他に比べて随分とましです。外はもっと酷いと聞きます」

「お、おぅ……」

「そんな時に、死ぬことなく、ただ在るだけで、魔力を満たしていくラクトの存在意義は計り知れません。ゆえに救世主とお呼びするだけの存在なのです」

「は、はぁ……現実を知れば知るほど、重いな!」


長堂はお茶もどきを一気に飲み干し、立ち上がり片手を前に突き出し、ポーズを決めながら言う。


「それじゃあ、気分を変えて、魔法を教えてくれ! 男の夢で使いたいんだ!」


アチョー、ホアー、と叫びながらテンションを高めていく長堂だが


「すみません、私、魔法が使えなくて……」

「えっ……なんだと! さっきこの辺り一帯で一番魔力が高いと言ったではないか!」

「はい、ですが、魔法というのは世界の魔力が減っていくにつれ、その使用がより困難になってきたためか、現在は魔法を使える人はほとんどおらず、習うこともできなかったのです」

「なんてこった……」

「しかし、瞑想といって体内の魔力を感じることで魔力を高めることができる訓練がありますよ!」

「……いやだ。そんなまどろっこしい訓練じゃなくて、さくっと使いたい」

「そ、そうでしたら、精霊様でしたら、分かるかと思います」

「そうか! おい精霊! 魔法が使いたい! 起きろー! 起きろー! 力が欲しければ起きるのだー!」


「ちょっと、ラクト、シル様に無理させるのは……」

「知るかー! 魔法が使いたいんだー! 男の夢だー!」


長堂は部屋の中で飛び跳ねたり、地面をどたどたさせたり、ベットへダイビングしたり、暴れまわる。すると、地面から生えてくるように


「うるせぇなぁ……1日2日ぐらい静かに出来ないのか……」


あくびをしながらシルが現れた。


「俺としては、炎を手のひらから勢いおい良く出したい」

「おうおう、何ともマイペースなやつだな。まぁ、能力者なんてどいつもそんなもんだったか」


何かを思い出すように、シルは少し遠い目をしてから


「炎は、水の精霊にそれを頼むのはちと酷な話だ。水系のを教えてやる。外へ行くぞ」



 ◇  ◇



その日、日が暮れるまで魔法行使を試した結果


「「ウォーターボール」」


長堂は手のひらからは、軽く蛇口を広げた程度の水量がちょろちょろと出てそのまま地面へと落ちる。

フェイの手のひらからは、勢いよく人の頭程の水玉が発射され、岩へとぶつかり、岩を少し動かした。


「……まぁ、こんなところだろう」

「意義あり! このほとばしる魔力光の俺がなぜこの程度しか出ないんだ!」

「"能力"と"資質"は別物ということだ。こればっかりはセンスが物を言う」

「訓練で大魔術師へと進化の可能性は!?」

「まぁ無くはないが、能力の調節に時間を割いた方がいいだろうな。女子の方が使えるんだ。攻撃はそちらに任せてしまえ」


長堂は親の敵を見るような目でフェイを睨み付ける。

フェイはたじろぎ、必死に説得する。


「ラ、ラクト! 私達はこれから旅の仲間で一身胴体ですよ! つまり私が使えるということはラクトも使えるという事にはならないかな!」


その必死の説得を、さめた目で長堂は返す


「ならない」

「うぐぐ……」

「何にせよ、調節が出来るようにならなければ、お前はそうやって光りながら旅をするハメになるぞ」

「わかったよ!」


と長堂は口ではわかったと言いながらも、「ウォーターボール」と唱えては、ちょろちょろとしか出ない水を見つめている。


「それでは、明日からはお前はまずは停止と発動の訓練から微調節へ。女子は水魔法の種類を教えれるだけ教えていく」

「はい! 精霊様!」

「ウォーターボール……」




はやく……! あるき……! たい……!

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