4話
「ここが俺の住居だ。あるもの全部、好きに使ってくれていい」
長堂とフェイが案内された場所は、滝の裏に扉があり、中に入ると立派な部屋が
広がっていた。
「領主様の家よりも豪華に見えます……」
「まぁなんだ、昔、人間みたいな生活しようとした時があってその名残だ」
長堂は遠慮なく、棚を空けたり、別の部屋に入ったり、物をあさっていた。
「良い! 良いな! なんだか海外に旅行に来た気分だ!」
はしゃぐ長堂を見て、フェイがくすくす笑っていた。泣き腫らしたせいか、目の周りが赤くなってるが、表情はすっくりしていた。
「おお! これは芋か? 腐ってないぞ!」
「まぁな、眠りに着く前にしっかり封印しといたからな。季節が変わる分ぐらいは貯蔵があるぞ。好きなだけ食え」
長堂は緑の果物らしき物を見つけ、手で軽くこするとそのまま噛り付いた。
「うめー! 高級リンゴみたいだ!」
「腹が減っているのか? 食事にでもするか?」
「あっと、いや、その前にそうだ」
と長堂は果物に噛り付きながらフェイの方を向いた。首をかしげるフェイに
「よし、じゃあフェイ、服を脱げ!」
「えっ?」
少しの間きょとんとしていたフェイだったが顔を赤らめ始め、ちらっとシルのを方を見たり、長堂の方を見るもさらに顔を赤らめ俯いたりと、一人混乱状態に陥っていく。
「あっちの部屋の棚の中に女物の服があったから、それを着て、今着ている服を持って来い」
「ええっ!?」
「ほらほら、はやく」
促されるままフェイが小走りに隣の部屋に入っていった。
そのやり取りを見ていたシルが、「ああ、なるほど」、と小さく呟き
「うん、そういうことだ」
と自信ありげに長堂が答えた。
そして、シルが小さく上を向き、何かを感じ取りながら言う。
「確かに……3人か、向かってきている。武器を持っていて、雰囲気も粗野だ。領主の私兵で間違いないだろう」
「そうか」
シャリシャリと長堂が果物を齧る音だけが流れる時間が過ぎ
「着替えてきました」
「おお、それもかわいいな」
「あ、ありがとうございます」
フェイが動きやすそうな、白のワンピースに着替えて出てきた。サイズも問題無い無さそうであった。そして、先ほどまで着ていた羽衣を長堂に渡す。長堂は食いかけの果物をテーブルに置き、着物を受け取った。
「これ、どうするんですか?」
「こうするのさ」
そういって長堂は扉を開け、外に出て行く。フェイはそれにあわせて着いていった。
滝が流れ落ちさまが見え、外の景色もぼんやりと見える。そこへ長堂は持っていた羽衣を投げた。
「ええっ!?」
フェイは驚き、思わず流れ行く羽衣に手を伸ばそうとするが、羽衣はすぐに滝の流れに飲まれ見えなくなったので、あきらめ手を引っ込め、フェイは長堂の方を見る。
「これでお前は生贄となって死んだ。ってことにしよう」
「それってつまり……」
「ああ、流石にこれで領主は諦めるだろう。領主の私兵共がお前の村から去った時を見計らって山を降り村へ行こう。そしてすぐに旅に出れば領主には当分はバレないだろう」
「迷惑をかけずに、ついていけるん……ですね」
「まぁそういうことだ。領主ぐらい第一ステージのボスと思えば何とでもないが、小指でピーンとはじいてしまえるような弱さだが、そんな奴とわざわざ関わりたくないしな!」
長堂は胸を張って強がって言い、続けて言う
「少しの間、村の人々も騙すことになるが……、救世主特権で許してもらおう」
「……ありがとうございます! 親も村の皆も分かってくれるはずです!」
「まぁなんだ、"うじうじフェイ"は死んで、これからは、"人生楽しむフェイ"に生まれ変わるってわけだ!」
どや、と長堂は自信満々にフェイに言ったところでカウンターを食らう。
「はい! ゆくゆくは長堂フェイにしてください!」
「えっ」
「がんばります!」
フェイは握りこぶしを作り、気合十分といったところだ。
「えっ、いやっ、こういうのはさ、ゆっくりと時間をかけてというか、まだ心の準備がというか、今まで恋人何ていなかったせいで、わけがわからないというか、責任って俺と正反対の言葉だったりなんてしてでして、」
「大丈夫ですよ! なんとかなる! でしょう?」
あたふたとする長堂に、フェイはぴったりと腹にくっつく。長堂は何とか引き剥がそうとするが、思った以上に力が強く、剥がせそうにないので、シルに相談しようと思い、そのままフェイを引きずりながら部屋に戻るや否や、シルが
「それじゃ、俺はお邪魔のようだ。今日明日は眠らせてもらう。外はまだ魔物が居るから室内で適当に過ごすといいだろう」
と早口で言うや否や、姿を消した。
それから、話し合いを行い、これから"仲間"として対等に行動を共に旅をする。ということで落ち着いた。自由気ままに生きることにしている長堂としては、関係や責任がこちらの世界で出来る覚悟はまだ出来なかったのだ。
しかし、ベットはキングサイズのものが1つだけしかなく――対等な仲間ということで、並んで寝た。