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一話
「ついに辿り着いた」
スーツ姿の男が、木々の隙間から見える滝を目にして言った。
「就活心得その3、滝行をせよ」
自信満々に言うやいなや、服を脱いでいき丁寧に畳んで地面においていく。この男を止める者は誰もおらず、瞬く間に裸一貫となった。
水しぶきがかかる中、腰に手を当て、滝を前に仁王立ちする。
「いざ行かん」
男はやせ我慢をしながら、堂々と滝下まで行った。
「カッ」
といかにもらしく気合を入れるが、今は夏であり、小雨程度の小さな小さな滝である。何も閃くことなく、煩悩ばかりが思考を埋め尽くす。もういいかなー、帰ろうかなー、帰ろうかなーと、そわそわし出した時、急に滝つぼが発光し男は気を失った。
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