屋上での密会
「なによ、あいつ。あの時私を見殺しにしようとした癖に。しかも次会った時には他の女を侍らせて『俺のハーレムの一因にしてやるよ』っていって。あいつだけは私絶対に許さないんだから。付き合っている時も散々ひどいめに合わされたし」
「落ち着け、美雪。お前のキャラ崩壊してるぞ。学校の時言っていた清楚なおしとやか系美少女はどうした?」
「そんなの知らないわよ。私絶対あいつと付き合わないんだから。それに私にはもう婚約者がいるんだし」
そういい、俺の方に目線を向け顔を赤くなる。
やめてくれ、美雪。俺が由良に目をつけられる。
今俺は美雪と2人で学校の屋上にいる。
屋上は辺り一面柵に囲まれた無愛想な所だが、一般生徒向けに開放されている所だ。
しかし、屋上よりも中庭の食事スペースの方が人気があるため、そっちに人気が集まってしまい屋上には基本的には誰もいない。
なので、こうして内緒の話をするのには非常に適している。
「美雪、ここが屋上だからいえる言葉だけどなるべく人のいないときはそういうことはしないようにな」
「わかってる。今、目立つような行動すると後々響くって雄二もさっき言っていたわよね」
そう、学校では目立たない程度で動くのが大切なのである。
後人間関係。
これで波風を立たせると1年後のアウトブレーク時、感染者の他に敵を作ることになるのだから。
「で、放課後は本当に沙耶の所に行くの?」
「あぁ。彼女と会わないと全てが始まらない」
俺等を笑顔で見送ってくれた少女、神山沙耶。
親が天才科学者として名声を得ているが、彼女自身も天才の名をほしいままにしている。
7歳でアメリカの大学に飛び級で入り、11歳で卒業し、その後様々な発明を発表し世論から高い評価を得ている。
そんな彼女が現在はこの町にいることを俺は把握している。
「でも、沙耶がいる所なんて私にはわからないわ」
「俺が知ってる。しかも彼女はすぐ近くにいる」
そういい、俺が美雪に彼女の場所を教えると彼女は驚いた表情でこちらを見ている。
そりゃそうだ。俺だって初めて会った時はびっくりしたんだ。
びっくりしない方が困る。
「わかったわ。じゃあ放課後はそこに集合しましょう」
「あぁ、くれぐれも由良先輩に見つからないようにな」
「大丈夫よ、あったら投げ飛ばすから」
そういう彼女の笑顔を見ているとこれから投げられる由良先輩に少し同上してしまう。
「あぁそうそう」
「うん?」
そういいこちらを見てくる彼女は満面の笑みでこう話す。
「明日お弁当持ってくるから、一緒に食べようね」
「でも、目立つ行動すると……」
「いいよね?」
「はい」
有無を言わせない笑顔に俺はたじろぐ。
尚道の件と言い、今年は波乱万丈な時になりそうだな。
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