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眠りに落ちたユーノは夢を見た


まだ、学校にも通っていなかった小さな頃。


パパは仕事で、新しく出来た機関車を取材に行った。おばあちゃんは少し足が痛いと言って、おじいちゃんと一緒にお医者様のところに行った。


「ユーノ、すぐに戻ってくるからね。いいこでお留守番しているんだよ。」

「うん。」


おじいちゃんはそう言って大きな手のひらで頭を撫でてくれた。


「戸締りをしておくから、ここで本を読んでいてね。」

「うん。」


おばあちゃんはユーノの大好きな絵本をたくさん置いていってくれた。


周りはぜんぶ本の棚で、開いた本には綺麗な色の絵がたくさん書いてあった。


最初はいいこでお留守番しなくちゃと思って、ちゃんと椅子に座って、机に本を乗せて読んでいたけど、いつか床に寝転がっておばあちゃんの置いていった絵本を全部広げて読んでみたりした。




夢中で本を読んでいるとぼーん、ぼーん、と柱時計が音を立てた。

気がつくと周りはすごく暗くなっていた。

まだ柱時計はなっている



ぼーん



ぼーん



ぼーん。



振り子の動くがちがちという音も恐ろしく感じて耳を塞いだ。



「おじいちゃーん、」


声は掠れて小さくて、時計の音にかき消された。


いつも暗くなったら、おじいちゃんがランプに火を付ける。それは知っているが付け方が分からない。ランプが置いてあるのはユーノが背伸びしても届かない高い場所にある。


椅子を一生懸命押して、本棚の真ん中に運び、その上に乗って背伸びをする。


それでも届かなくて、必死で手を振り回したら、本棚の中のものがたくさん落ちてきた。


「きゃー!」


ばさばさと勢いよく落ちたのは動物の図鑑や伝記ものだったのだと思う。

それでも幼いユーノには本の中で牙を向く獅子や、剣を持って龍と戦う戦士などは恐ろしいものに見えた。



がち



がち



がち



柱時計の音が部屋中に聞こえる。



「いやああ!パパー!おじいちゃーん、おばあちゃーん!」







「!」


夢から覚めるともう空には星が見えつつあった。思ったほど長くは眠っていなかったようだが、泉に浸けた足はしびれるほど冷え切っていた。


馬から落ちた衝撃か、肩や背中も痛み出してきた。…だからあんな過去のことを夢に見てしまったのか。



あのあとおじいちゃんとおばあちゃんはすぐに帰ってきた。すぐに終わると思っていた診察が長引いてしまったそうだった。怖くて、寂しくて泣くユーノをおばあちゃんはずっと抱きしめていてくれた。


冷やしたのが良かったのか痛みが鈍くなった足を庇いながら立ち上がり、ユーノはどちらから森を抜けようか周りを見渡し、出来るだけ外の明るさに近いところを探した。

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