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エドの災難

ちょっと番外編風です。普段より一層ほのぼのしてます。

エドはその足で報告書を届けるために公務室を訪ねた。


「失礼します。エドです。」


オーク材でできた机や書棚がひしめく公務室は書類だらけだった。書類を片付ける為に何故かメイドのシェールとヘレナが借り出されていた。


「ああ、エドか。お帰り。」


机で書類にサインしているクローネがにっこりと笑った。

なぜかエドは背筋に悪寒を感じたのだが。


「?」

「どうした?エド。書類を持ってきたんじゃないのか?」


「は、ああ、そうです…どうぞ。」


なんだろうこの冷たい空気は。なんか僕、悪いことしたかな?と今まで行った良いこと悪いことを心の中で反芻する。でもクローネを怒らせるようなことはした事がない。


「あの、どうして、…その、怒ってらっしゃるんですか…?」


「怒る?そんなわけないだろう?わたしが?君に?とんでもない。」


公務室にブリザードが吹き荒れる。



「みっともないですよ。殿下。」


シェールが諌めたのでブリザードは収まったようだ。エドは安堵のため息を吐く。


「年下の男の子に嫉妬なんて~。器がちっさいですよ~。」

ヘレナの毒舌に今回はシェールの突っ込みはなかった。


「え?嫉妬?」


「…そんなわけないだろう。」


ごほんと咳払いをしてクローネは威厳を保とうとするが頬が少し赤い。



「ユーノ様が誰にでもお優しいのはご存知でしょう?ましてや弟みたいに可愛がってるエドにちょ~っと抱きついたぐらいでイライラなさって。」


シェールが言うとヘレナよりきつい。


「そんなに気になるなら、あっち行けばいいのにって言ったのにね~。」


「公務を放ってはいけないだろう。」



んま。とメイド二人が憤慨する。


「そんなだからいつまでたっても一緒に寝てもらえないんですわね。」


「な…っ!」


クローネは面食らって書類を盛大に落とす。



「ベッド見たらわかるわよ~。」


「こんな甲斐性のない旦那様だなんて…ユーノ様が哀れでなりませんわ。」


エドは話がどんどん大人の会話になりつつあることに顔を真っ赤にしている。ついでにさっき抱きしめられた時の感触とかも思い出してしまった。


「お前達には関係無い事だろう!」

癇癪を起こして机を叩いたがメイド二人はひるまない。彼女たちはユーノの味方なのだ。


「関係大有りだわよ~!ユーノ様の努力も知らないなんて、ちゃんちゃら可笑しいわよ坊や。」


メイド二人はクローネよりもいくつか年上だった。だからといって主人に向かっていう言葉でもないのだが。


「君たちには分からないよ…困ってるんだ、わたしは。」




知っている。ユーノが自分の公務を手伝う為に毎日、過去の書類を閲覧していること。レイブンから難しい歴史や経済、王宮でのマナーを教わり、そして薬学を学ぶ為にケニス先生の講義を受け、時にはジョシュアを引き連れて森に薬草を探しに行っていることも。


帰るといつもソファで眠っている。自分は背が低いし、寝返りが打てないほど狭くても慣れているからと小さい体を一層丸めて。


毎日その小さな体を抱き上げてベッドへ運ぶ。彼女が起きないようにそっと。

起きてしまったらまた緊張して、遠慮して頑なに拒むのだ。関係が変わるのを恐れるように。

だから、彼女に気付かれないようそっと運ぶ。


「大事すぎて…、触れないとか、最悪だ…。」


メイドとエドは目を丸くして悩む主人を見る。



「…乙女がいる。」


ヘレナのあだ名が炸裂した。


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