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旅立ちと別れ

お気に入り登録された方の期待に応える力は無いでしょうが、がんばろうかな

どうやら2人跳び成功したようだ。


礼子嬢は固まってるので暫し放っておく。


メノリは幸せそうに寝ていた。


悪夢にうなされて無くほっとする。


夜明けが近いようで、洞窟の外を見てみる。

周りの景色が良く見えるようになり、ざっと安全を確認した。焼け野原になった集落が見て取れたが、生存者は居ないようだ。

彼女らを残して遺体を2時間かけて粗方俺が埋葬した。(途中モザイクが必要な嘔吐シーンもあったが)

かなり疲労したが、

女の子に見せるもんじゃないしトラウマを抱えると可哀想だ。


洞窟に行くと、2人が会話してお互いの自己紹介を済ませ、何だかいい感じの仲になっていた。


上から俺の作業の様子も見てたらしく、メノリが素直にお礼を伝えてきた。


「君の家の遺品があれば捜そうか?」


「ありがとう」



声に反応してしまう俺



その親密なやり取りを見て眉がピクッと動く礼子嬢。


「師匠、信じてますよ」


(…まだ言うか)



彼女の家の焼け跡は柱が数本立ってるだけの酷い状態だった。

彼女は終始涙をこらえて黙々と作業をこなしたていた。


幾つかの石と装飾品を回収したようだが、高熱で殆どがダメになってるようだ。



メノリによると、寝静まった村にいきなり賊のような輩による焼き討ちと強奪が始まったらしい。


一部火の魔法のも使われていたようだ。

彼女は村の占い師の養子で、年老いた占い師の後継者の弟子でもあった。

家は高台の祭壇に向かう洞窟の下にあったので、占い師の養父が逃がしてくれたらしいが猛烈な煙に巻かれて途中で気を失ったようだ。





俺達のことは、違う国から来た石を探す冒険者と説明した。


予め礼子にも言わないよう釘を差してたのでバレてはいない。


だが彼女はまたじぃ~っと俺を探るように見つめ、その銀色の目に吸い込まれそうになった俺は、思わず目を逸らす。

取り敢えず納得してもらったようだが、何かを隠してるとバレてはいるようだ。


占い師の弟子だから、水晶魔法で心も見透かせる魔術もあるのかもしれない。


今後は極力目を合わせないようにしようと誓う俺。


作業を終えた俺達は、合掌して黙祷する。

礼子嬢はクリスチャンらしく、十字を切ってる。


メノリも何かしらしているのか、眼を閉じた3人の辺りは静粛に包まれた。





「これで皆も多少は浮かばれただろ」




全てが終わり、村を見渡す。



メノリの頭をポンと軽く叩き髪をクシャクシャとする。


礼子嬢がその様子をじぃ~と見て、ボソッと「…変態」と呟いたのは聞こえなかった事にする…


聞こえたんだが…




「君はこれからどうする?」



「……」


彼女の話した輩がまだ近場に居ないとも限らない。あまり長居はしたくなかったものの、彼女の気持ちの整理を優先し、暫く待つ。


俺としては、地理がさっぱり解らないので、彼女が同行してくれなければかなり拙い。




「…メノリ」



「は?」




「メノリって呼んで」



「わ、わかった。メノリはこれからどうする?」



それを聞いて満足したように鼻を小さく鳴らした彼女は、何か吹っ切れた表情を浮かべ少し意外な答えを返してきた。



「ヨシユキのガイドと護衛をしてあげるから、またあの甘いお菓子を頂戴」



「は?」



どうやらかなりお気に召したらしく完食したようだ。

チョコってすげぇ。



でも護衛って…



「水晶の管理は私がするから、ヨシユキは石を探して」



「はぁ…」


まあ、あれだけあると、ここで売れば数年は食っていけるし、使い方も彼女に任せた方がいいんだが。


(こんなキャラだったっけ?)



ふとメノリと玲子が被って見えてちょっとゾッとした俺。

ああなっては欲しくない。

一部なってしまってるが…

礼子嬢がじぃ~と睨んでる。





「ヨシユキ?」






!?





突然、何故かその一言は俺の心をわし掴みにして、バクバクと俺の心臓の鼓動を激しくさせた。






(・∀・)イイ!





ガバッと彼女の両肩を掴みながら真剣な顔でお願いをする(目は若干逸らし気味で)




「今のセリフもう一回言ってくれ!」





「は?」






びっくりした彼女は

何言ってるのか分からないと戸惑う。



両肩を掴まれ俺の突然のテンションにちょっと引きながらも



「ヨ…ヨシユキ?」






眼を閉じてそれをしみじみと聞いた。



俺は五臓六腑に染み渡るまで余韻を楽しんだ。



俺が犬なら千切れんばかりに尻尾を振って嬉ションしてたに違いない。




(この声は神!)



よし!こいつはワシが育てる!と決意した



礼子嬢のドライアイスのような冷たい一言に我に帰った俺だった。



「…ロリコン変態」









出発前にこの場所の地形の簡単な地図をポケットノートに記した。

方位磁石で磁北も確認して書き込む。



地球で磁石を使う際は、地域によって磁北と真北は10度近くもズレる場所もあるが、この世界の磁北のズレが分からないので仕方ない。

まあ、夜また星を撮って北の星の日周運動を調べてみよう。


彼女によると、この道を1時間も東に歩けば街に着くらしい。


と言うことは5キロ弱か。

案外近い。

ただ、昨晩の賊らしき集団が心配だ。

一応足跡と反対方向だから大丈夫だろうが。

もし兵だとすると、その街もやられてる可能性があるが。



「その街の大きさや守りはどんな感じ?」


「うーん。私の村が10個くらいの規模で、高い壁に囲まれてるし、兵士もいるから大丈夫だと思う」



それを聞いて多少気楽になる。

街道は川沿いで蛇行しておりまだ街は見えないが、聞いた話なら大丈夫のようだ。


ふと河原の石に興味を惹かれ視線を向けた俺は、川の浅瀬で何かが光ってるのに気が付いた。

近づくと何カ所か強弱はあるがボーっと光ってる。

光が一番強い所に近づいた俺は、そこに白水晶の小さな結晶があるのを見つけた。


光ってる場所をそれぞれ確認したら、強いものは純度と大きさの優れたもののようだ。


メノリと礼子に水晶が光って見えるかと問いかけたが、見えないとの答え。


彼女はいきなり水晶のある場所を正確に見つけ出す俺にびっくりしたようだ。



「ヨシユキすごい…」


!


(その声やめれ…)



彼女は一つ一つ丁寧に拾ってポーチにしまい込む。


礼子がそれを羨ましそうに見ている。



しかし、昨晩はあんなに大きな結晶でさえ全く光ってなかった。


何かここに居ると、得体の知れない力が発現するのだろうか?


日本に居るときから、感と知識で似たような事はしてるので、その力の延長と考えておこう。


便利にはちがいない。


その後は大した収穫もなく、街が見えてきた時は川も離れていたので、何事もなく街の前に辿り着いた。


高さ10メートル以上ある巨大な観音開きの門は、上に弓を構えた兵士が数人おり弓を俺たちに向けて野太い声で叫んだ。


「○△□×@!」


何言ってるか解らないが、多分「止まれ」的な事を言ったんだろう。


通訳の魔法石を持たせないと異世界人の俺達には通じない。

メノリが俺たちに喋らないよう指示をする。


「私は隣のフレンデ村の占い師見習いのメノリです。昨晩焼き討ちに合い村は全滅しました。どうぞ難民として受け入れて下さい」


すると門に付いてる小窓が開いて向こうから更に野太い声で叫ぶ声。




「○△□!?」



するとギシギシ音を立てながら門が内側にゆっくりと開き、そこから熊のようなオッサンがドタドタと走ってきてメノリを抱きしめた。



「無事じゃったか!村から誰も逃げてこんかったでもう駄目じゃと思っとったが良かった良かった」おっさんがメノリと接触した瞬間、異世界語が日本語として耳に流れ込む。



メノリを抱き上げて頬擦りするおっさん。


(お!?俺のメノリを…メノリもそこはくんくんして固まるところだろ!)


俺のくだらないトラウマを嘲笑うかのように、くんくんする素振りもなく彼女は涙を浮かべつぶやく。



「皆寝てたから逃げれなかった…私だけ爺様に逃がされて、煙で倒れた私をヨシユキが助けてくれた」



と、おっさんの胸に顔を埋めとうとう泣き出す彼女に俺は敗北感を味わう。



(俺のおやじ臭にはあんなに反応したのに…)




情けない顔がついつい表情に出てたようだ。

エスパー礼子の心を見透かすような視線がいやに冷たい気がする。


安心して全ての悲しみを吐き出したのか、いつの間にか眠ってしまったメノリを抱いたままおっさんが俺を見て




「わしは、この子を我が子のように思っとりました。メノリを救って下さってほんに有難うございました。」


と頭を下げる。


(何か後はわしが引き受けたからもういいぞ的な感じだな。まあ知り合った年期が違うわな)




彼女のおっさんへの懐きっぷりを目の当たりにし、敗北感ですっかり落ち込んだ俺はついつい潔い諦めにも似た返事をしてしまう。



「いえ。あなたのような親しい人が居て良かった。俺も安心して彼女を託せます」



彼女の為の最良な選択はここで皆と平和に暮らす事。

これは事実なのは疑いない。

「ヨシユキ殿。是非ともお礼がしたいのでうちに来てくれんかの?」



この世界の人と親睦を深める為の魅力的な提案だが、彼女なしの冒険はコミュニケーションも取れないし、礼子と2人で賊に逢っても、何言ってるか理解できない場合は致命傷である。

安全の為これからの事は一旦白紙に戻し出直すべきかなと判断する。



「大変有り難い申し出ですが、私達は一旦あの村に戻ります。早く国に戻らなければならない事情がありまして。それに元々ここにはメノリを送りに来ただけですから」



後半は嘘だが、信じてくれたらしい。




「そうですか。残念じゃが仕方ないの。日があるうちに安全なところまで行きなされ」

まだ賊がいるやもしれん」


去る前にどうしても手に入れたいものをお願いしてみる。


「1つお願いが有ります。お恥ずかしいながら地図を無くしてしまい、もしよければ詳細な地図が有りましたら欲しいのですが。もちろんお代は払います。」


と、研究室から持ってきたとびっきりの水晶を渡す。


「!!」


それを見た兵士とおっさんがどよめく。


「これは見事な石ですな!地図どころか立派な家が建ちますぞ!」


やっぱり刺激が強すぎたようだ。

コレクションだけのことはあるが、所詮水晶なんであっちじゃ大して価値は無い。

「すぐに一番詳細で正確な地図を持ってこさせよう」



かなり待って手に入れた地図は、A2サイズくらいの質素な紙が20枚束になっていた。詳細なだけあって、川や山や道や記号らしきものでびっしりと埋められている。一応この街の場所も教えてもらう。


俺たちは別れを告げ街を後にして、廃墟の村に向かった。

メノリが一度も目を覚まさず挨拶出来なかったのが非常に心残りだったが、地図代金の水晶のお釣りである金貨銀貨が詰まった袋にニンマリする俺だった。



「一旦あっちに帰って地図を調べてこの世界を理解してまた来ようと思うが礼子くんはそれでいいか?」



彼女は少し未練がある様子をみせたが、賛成してくれた。



「でも、来るときは一緒ですよ?」



「ああ、わかった。約束するよ。でもよく考えたらお互い睡眠不足だな」



さっきから気が緩んだのかお互い欠伸のうつし合いである。


こうして俺達の短い異世界探検は取り敢えず終わった。



進行が遅れてますが、そろそろ…

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