街道の罠3
多忙で休止してましたがぼちぼち再会します
食堂をそそくさと出た俺達は、結局俺の意見を通してザザに向かう事になった。
地図で見るとなかなかの山道で、一部うねうねしている険しそうな道もある。
食堂のオヤジ情報によると、馬車はすれ違えるだけの道幅はあるが使う人はあまり多くないので荒れてるかもとの事だ。
昼も過ぎ太陽は一番高く昇り、湿度のない五月晴れのような天気だ。元々植物の自生具合を見ても、乾燥に強そうな草や木が多くあまり雨の降らない気候のようだ。
これなら道も酷く荒れてるところもないだろう。
道沿いの川も綺麗に澄んだ清流と言っていい。
山沿いなら珍しくないが人の住む平地では日本にはもう探さなきゃ無いレベルだ。乾燥した街道を砂煙を上げ馬車を駆る事一時間、少し登りに掛かり始めたところで道端の空き地に馬車を止め休憩する。
「ちょっと休もうか。俺はちょっと地図で気になる光ってた場所に行ってくるから」
「師匠、水晶ですね。私的に今欲しいのは私のイメージカラーのローズクオーツですかねー」
「いや、ローズはないだろ。強いて言えば黒だな」
「確かに私って腹黒でストーカーで黒魔術も嗜むから黒がぴったり!さすが師匠私の事良く理解していただき有り難き幸せ…シクシク(泣)呪ってやる…エコエコアザラクエロエロヨシユキ…」
…変な奴は置いといてと
「メノリ、30分ばかり岩壁を調べてくるから万一の時は礼子を頼むな」
「うん。まかせて。ヨシユキは怪我しないように気をつけて行ってきてね」
「ありがとな。いいもの持って帰るから期待しててくれな」
頭をポンポンとたたいてやる。
「私への対応とメノリに対する対応のあまりの違いに、私は心の中に暗い炎を灯すのであった…」
礼子が声に出して何か呟いてるが気持ち悪いので無視する。
俺は、主に1人にしばし別れを告げ草木もまばらな茂みの奥にある高さ200メートルは有ろうかという岩山に足を向けた。
乾燥したブッシュを距離にして100メートル奥に入ってほぼ垂直に切り立った岩を見上げる。
俺はアプローチするルートを見極めするすると登り始めた。
岩の風化も進んでないから命綱無しで余裕な俺は、楽しみながら目的の横穴にたどり着いた。
確かめたかった事がありここを選んだが、やはり思った通りだった。
横穴にはめぼしい鉱物は無かった。
別の岩壁も丹念に調べたが小物ばかりで期待した物はなかった。
だが、地図上はここら辺りが狭いながら光っている。
これで俺の力は地下にも及んでると見て間違いない。何メートルかは分からないが、少なくとも利用価値が上がったことに変わり無い。
僅かに光ってるそれらしい鉱石を幾つか採取してバッグパックに入れた時、それは起こった。
先ず聞こえてきたのは馬車の音だった。
その向からすれ違った馬車は、俺たちのの馬車を通り過ぎ道端に止まった。
いやな予感がして俺は降りる準備をしたが、その予感は的中してしまった。
俺達の馬車の馬がいきなり崩れ落ちたのだ。
いや、鳴き声上げず崩れたので眠りに落ちたというべきか。
程なく停車していた馬車から顔を隠した如何にも怪しい連中四人がメノリ達のいる馬車に乗り込み、メノリと礼子を担いで連れ去っていった。
警戒していたとは言え、まさかの出来事に俺達は対応出来なかった。
間違いなく催眠魔法だろう。
すれ違う相手に一々結界を張らせるほど危険な事はないだろうという気持ちがいけなかった。
今までで一番のスピードで岩場を降りたが、最早奴らの馬車は影も形もなく、そこには俺たちの馬車と爆睡している馬が残されてるだけだった。
焦っても仕方ないので、俺は己の能力を信じてある実験をする。
地図を開き、メノリの下げているネックレスと水晶を脳裏に浮かべた。
水晶は特に結晶体の 形と大きさを詳細に描く。
すると地図上に光る点が現れた。
じっと見ていると僅かに移動している。
「よっしゃ!思った通りだ!よしよし」
やはり能力が強くなってる。
何か日に日にというか、一刻一刻強くなってる感がある。
この能力がどこに行き着くのかわからないが、何はともあれこれなら追跡できる。
助け出すための光明が見えた俺は、少し落ち着いて改めて誘拐について考えた。
先ず山賊という線は無いだろう。馬車も馬も荷物もそのままだ。
人身売買専門の犯罪者の線も考えるが、どうも奴らの服装と身のこなしがピンとこない。
どうみてもそれなりに訓練され統率された集団だった。
一番の可能性は、メノリの能力を知っているコーニング商会の仕業が濃厚だが、メノリを攫いどうするのかが俺には今ひとつ分からない。
欲しいのなら先ずは誘えばいい。
それもせずいきなり誘拐は無い気がする。
まあ、何者かは分からないが十中八九メノリの能力を狙っての犯行だろう。
取り敢えずメノリの身に危険は無いだろうと判断した俺は、二人を攫った犯人とそれを防げなかった自分への怒りを、気持ちよさそうに爆睡してる馬の顔に水をぶちまけることで幾分晴らしたのだった。
八つ当たりすまん。