プロローグ
まともな書き物としては初めてなので生暖かい視線でお願いします
どうしてこうなった!?
俺は今、目の前にある現実?を認識する事が出来ず途方に暮れていた。
今から1時間前くらいだと思う。
俺はどうやらデカい山を当てたらしい事に興奮して、アドレナリンが噴出しすぎ、周りが
特に足元が見えてなかったようだ。
名前は岩城 誉志幸。
現在大学で地質学を研究してる三十路男だ。
子供の頃からいつも下を向いて何かを拾いながら歩くのが大好きだった。
思えば色んな物を拾った。
つまらないガラクタを拾って帰る度親に怒られたもんだ。
ただ、ガラクタばかりというわけじゃなかった。
特にお金を拾う事は、当時貧乏だった俺には、そのお金で駄菓子屋に行くことが一番の楽しみであった。
ある日、幼い俺はきらきら光る小さな硝子のようなものを拾った。
よおーく見れば、そいつは角柱の水晶の結晶だった。
元々花崗岩質のこの地域では良く見つかるものではあったが、そのマッチ棒の先程度の美しい石にすっかり魅了されて以来、30歳になる今まで、ひたすら石を拾い続けてるわけだ。
お陰で女っ気とは無縁で、親しい異性と言えば、母親とばあちゃんくらいである。
勿論、健全な男の子としての異性に対してのそれなりの興味はあるし、それなりに好みの女性のタイプもある。
この世界が皆そうかといえば疑問だが、余りに石探しが好きすぎて、山に入れば一泊二日の体力勝負のフル装備アウトドアサバイバルである。
沢をひたすら登ったり、崖にへばりついてのロッククライミングや藪を鉈でなぎ倒しながらかき分けかき分けし続けけた結果、どっかのCMのようにファイト一発みたいな筋肉質になり、ぱっと見モテないタイプではないと思うが、今時の流行や女の子が食いつく気の利いた会話能力がほぼ皆無であるから、話す話題は石の事ばかりの残念人間に真剣に付き合う異性はいなかった。
ただこのオタクの世界にも大変希少種であるが石オタの女性もいるもので、うちの学生にも1人いる。
石川礼子
二年生で、入学早々うちの研究室に押し掛けてきて、俺のコレクションを見るなりキャー!だのイヤー!だの嬌声を上げ続け、事件と勘違いした周りの研究室から一斉乱入があったのは有名な話となった。
危うく性犯罪者にされるとこだった。
因みに研究員は彼女一人である。
ただ彼女も三度の飯より石が好き!って感じのようで、俺が穫ってきた獲物を見ては鼻息荒く興奮して、でっかい虫眼鏡を石に当ててはニヤニヤしたりブツブツ何か呪文のような独り言を呟く、俺と同じ残念な人種のようだが。
器量は悪くないんだが、化粧っけの全くない素顔と、手入れのされてないひっつめのポニーテール。極めつけはその色気のない山女ファッションと厚ぼったいメガネ。
余りにも不気味に石を愛でる一挙手一投足に不安になった俺は一度彼女に尋ねた事があった。
「礼子ちゃん。男と石どっちが好き?」
「はぁ?…師匠。何をいきなり。石に決まってますよ」
何を当たり前のことをと言わんばかりに俺を見ながら嘆息した彼女に迷いは全くなかった…。
少しは迷えよ
俺は迷うよ。
少しは
俺はあそこまで残念では無いんだと少しほっとするのであった。
まあ
彼女の事は取り敢えず置いといて
今この状況に至るまでの事実を反芻してみる。
久しぶりの連休を取った俺は、女として残念な弟子の眼から放たれる連れていけビームを無視し、ストーカーのごとく付いてくる彼女の車を愛車改造ジムニーのダート性能で振り切り、目星をつけていた標高300メートルくらいの切り立った山の途中にある洞窟に入った。
マイポイントは人に教えたらお仕舞いなのだ。
松茸のシマによく似てる。
ただ茸はまた生えるが、石は生えてこない。
彼女に教えたら、彼女所属のジジババ石倶楽部全員に乱獲されること間違いなしだ。
奴らは暇な時間にものを言わし根こそぎさらってゆく。
俺の開拓したいくつかのシマも奴らに蹂躙された。
ただ、この洞窟は周りからは全く見えなかったし、地元の猟師も行かない険しいガレ場の中腹にあった。
ジジババの弱い足腰では不可能な聖地である。
ただ残念彼女の山女としての身体スペックと石に対する執念だと可能なので巻いたわけだ。
20キロ超の荷物を背負い得意のロッククライミングもどきで10分程度登った先にあった自然に出来た様子の洞窟に用心して入った。
頭のヘルメットのLEDライトのスイッチを入れ、5メートル入ったところで、右壁に晶洞を見つけた。どうやらまだ手付かずだったらしく、高さ50センチ幅20センチはある見事な晶洞には、5から10センチの水晶がびっしりとまるで剣山のように生えていた。
ライトに照らされキラキラ光る水晶の群にしばし心を奪われ固まった俺は、一番見事な単結晶から順番丁寧に採取しては、うっとりと見つめ、かなり浮かれていた。
今思えば、背のリュックを降ろすため後退りしたのが拙かった。
その先にある穴に気が付かず、一人バックドロップで後ろ向きに落ちたはずみで酷く頭を打ってしまい
視界がブレたと思ったその後、俺は意識が朦朧として気を失ったようだ…
と
何かが燃える異臭で目が覚める。
ズキズキする後頭部を押さえて意識をハッキリ戻すため自分の頬を両手で叩く。
一体どれくらい時間が経ったか腕時計を見た俺は、時間が殆ど進んでない事に違和感を感じながらも異臭の正体を確かめるため、洞窟の出口に出た
途端に下から熱風が顔を容赦なく襲って眼をしかめた。
だが再び俺の目は見開かれた。
ざっと100メートル崖下に広がる光景に唖然とする
民家と思われる数十の家々が、爆発音を伴いながら夜空へ猛烈な炎を上げ燃え盛る
まさに地獄絵図であった。
読み返したら変な場所があったので編集しました