孤独な少女
何時からなんだろう。私がここにいたのは。
すっごく昔だってのは覚えてる。だけど何時から?
この何も無い空間に、いたのは。
ただ、白くて。ただ、広い。
以前、ずっと歩いてみたけど終わりはなかった。
私は何歳なんだろう?大体にして時という概念を知ってるのがおかしい。
だって――――――
ここには何も無いんだから。
私以外のヒトもモノも、何も無い。
ヒトが集団でいて文明が生まれ、文化ができる。その過程で時間とかほかの概念も創りだされるはずなのに。そして、人の人生をまとめちゃうと生きて死ぬだけ。たったそれだけ。でもね、私は死なない。老いない。何で?
何で私は色んなことを知ってるの?
ここには私しかいないのに。教えてくれるモノはなかった。教えてくれるヒトもいなかった。
私はこの世界に独り。多分、ここは世界だと思う。太陽も、惑星も、大気もないけど。
というか、私はヒトなんだろうか。見た目はそうだけど、羽が、あるの。天使みたいな。何で私は天使って言葉を知ってるんだろう?
私は何時産まれたんだろう?
親がいないのは間違いない。
まるで鶏みたい。ほら、卵が先か鶏が先か、ってやつ。どっちなんだろうなぁ。この世界も何時産まれたんだろう?私が産まれたとき?
なら、私は神様かぁ。まあ神様は流石にないけどさ。
「ああ、私はどれだけ、考えればいいんだろう?私はどれだけ、生きればいいんだろう?」
だぁれも、答えてれない。
「――――わからないが、退屈な時間は終わると思うよ?」
え?
「誰…………?あなた……」
目の前に初めて見る男の人が立っていた。羽はないけど。とにかく、ヒトだ。
「名前はまだない――のは冗談。名は×××××だよ。君は?」
「猫じゃないけど、私も名前はまだないわ」
何で私はこの本を突然知ったの?
作者、福沢諭吉。題名、『吾輩は猫である』。
この本の内容が全部、たった今、理解させられた。させられた。恐らく、この世界に。
「なら、名前が必要だ。名は記号。だけれど、大事だよ?」
「じゃあ、いい名前つけてよ」
「う~ん。と、その前に。僕について、僕は何故か世界を渡れる。だからここにいる。恐らくここは三千世界の知識の図書館みたいなものかな。いま僕が何か知りたいと思ったら知識が流れこんできて、全て理解させられた。君はさしずめ図書館の管理人、司書かな。それから、世界というものはたくさん存在するがこの世界だけは交わらないようだ」
「交わらない……?」
「そう、この世界は交わらない。世界は部屋のようなものでね。全て繋がっている。説明するとだね。Aという部屋がある。Aを覆うよう4つ、B、C、D、Eの部屋のどこからでもAに入ることはできる。だが、Eの下にあるFからAに入ることはできない。何故だかわかる?あっと、その前にアルファベットは――」
「知ってる」
また理解した。正確にはさせられた、だけど。
「答えは、AとFは直接繋がってないから」
「ご名答!」
パチパチと拍手をくれた。
「ところでそれキャラ?」
「うん?いやね、僕は厨二病患者だから」
「厨二病……?ああ、わかったからいいわ」
何でもわかるって便利といえば便利ね。
「続きだけど。世界は間接ではなく直接でないと行き来できない。それがルールだ。この世界は隠し部屋みたいなものだった。いつも通っている世界から偶然行けることに気づいたのだから。この隠し部屋は別にいい。僕が気づかなかっただけだから。だけど、この世界はさっきも言ったが交わらない。普通世界は歪むんだ。稀に、近い世界と交わることがある」
「でも、この世界にそれはない」
「その通り。だから僕の能力でしか来れなかった」
「来てくれて嬉しいわ――――――人に逢ったのが初めてだったから。ずっと暇だったし」
暇で暇で気が狂いそうだった。
「そりゃそうだろうに。こんな単なるデータベースのような世界にいるんだから」
ただ知識があるだけ。経験はない。
「今までずっと独り。まるで、囚われのお姫様みたいね?」
「はは、ならお姫様、お手をどうぞ。この城を出て、非常に面白い世界へお連れいたしましょう」
「ええ、ありがとう――――――えっと、王子様?」
手をとった。生まれて始めて触った。他人の手。男性だから?ゴツゴツしてる。
「王子様ね、僕は道化役のほうが似合いそうなんだが……」
「ねえ、そんなことより―――」
「――――――行きましょう?面白いところへ連れて行ってくれるんでしょう?」
「もちろんだとも、××。どうだい?この名前は」
――気に入ったわ。
――よかった。




