リターン
三姉妹は屍人達を蹴散らしながら、蝶子の学校へ急いで到着。やはりと言うか当然と言うか、鶴港小学校の校舎に運動場が荒れていた。運動場では、生徒達を庇いながらも屍人達に向け鈍器やら拳で叩きのめして倒している姿が。そして別の班の先生達が、生徒達を体育館へと急いで避難させていた。校門の前に立つ難波三姉妹に気付いたひとりの女生徒が、屍人に蹴り喰らわせ倒しながら走って校門に到着する。病人みたいに色白な、垂れ目の少女であった。その少女の無事に蝶子は安堵して喜ぶ。
「雪ちゃん、無事やってん! 良かったワぁ」
雪那が柔らかい笑顔になる。
「蝶子ちゃんとこも無事やったとー。あ、瓜子さんに鹿子さん、おはよーです」
雪那はゆっくり口調で挨拶する。姉の二人は蝶子の友達に目尻を下げて挨拶を返した。
「おはよー、雪ちゃん」
「なぁ、雪ちゃん。ミッちゃんも無事かァ?」
焦る蝶子の問いに、雪那が途端に暗い表情と変わった。
「御免ー、蝶子ぉ。ミッちゃん咬まれたとよー」
涙は出てないが、声が泣いていた。
「ミッちゃん、ミッちゃんは無事なんか! 生きてるんやろな!?」
もうひとりの友人を思い、必死になる。
「生きとるのか」
「んー。生きとるばってんが、病院の先生が厳しかて云っとったー」
「どっ、どこ咬まれたのや」
「く、くく首ば咬まれたあー! あああーー! 御免ー、御免なぁーー!」
我慢の限界であったのだろう、友達が救えなかった無力感にかられて、雪那がとうとう泣き出した。
「泣くなぁ泣くなやぁ! 雪ちゃん、うう……ミッちゃんは、助かるんやろぉ!」
蝶子も涙目に。
ボスッ
唐突に鹿子が、自分の学生鞄にパンチを一発入れた。涙目であるが、蝶子が驚いて姉の鹿子を見た。長女も驚いて次女を見る。鹿子が珍しく、怒りの形相に変わっていた。
「雪ちゃん! ミッちゃんの仇はウチらが、とったる!」
「ああーー! 鹿子さん有難うございますーーうう! でも、でも、でもミッちゃんまだ生きとります。病院の先生が何としても助ける言うてましたあ」
「そ、そうなん?」
「先生ェーー、頑張ってやあ〜!」
蝶子がそう体育館へと大きな声援を送った。そして、鹿子が決心。
「よっしゃ、瀬峨神父んとこ行くで! 瓜子姉ちゃんに蝶子!」