ダリル
三姉妹は次々と襲いかかって来る屍人達に向かって、学生鞄で殴り倒したり、ランドセルで叩きのめしたり、拳でど突きまわしたりして迷惑者達を片付けてゆく。しかし、この蘇っている『過去の連中』には、不思議と傷や腐敗などは見られず、単に白濁した眼と青白い肌のみ。やがて、鹿子が通う黒船高校が見えてきた。
校舎と運動場などが荒れている。
その状況に三姉妹が目を剥いて、驚く。運動場の向こう側からひとりの女生徒が走って来た。迫り来る屍人達に、拳や足または鈍器を喰らわせ倒しながら、校門へと到着。二つくくりで可愛らしい、女生徒だった。その女の瞳は、鹿子を心配していた。女生徒は息を切らしつつも、安堵するなり語り出していく。
「良かったぁ〜! 鹿子、無事やったとね」
「あ、雨ちゃん、どないなっとるんや」
雨ちゃんこと雨宮良枝に、驚きつつも尋ねた。良枝は額の汗を手で拭い、笑顔で答える。
「アタシ、鹿子が心配だったとよ」
「ありがとー、雨ちゃん」
鹿子も笑顔になる。
「いやあ〜、生徒や先生達が何人かが咬み殺されたり、殴り殺されたりしたけどさ、残りのみんなで抵抗や仕返しばして、今は体育館に立て籠もって居るとさね」
「気の毒やったなぁ……。でも、雨ちゃんが生きてて、私、嬉しイなぁ」
「ありがとう、鹿子」
「あの。割り込んで、すんまへん。街ん中もこないな感じです?」
蝶子は必死になっていた。それは、二人の友達が心配だったから。
「あ、蝶子ちゃんオハヨー。―――そうたいね、街ん中はもうこげな感じとよ」
「……瓜子姉ちゃん! 鹿子姉ちゃん!」
姉二人を呼んだ蝶子の瞳が、やや涙ぐんでいた。瓜子と鹿子は、末っ子の頭を両側から少し荒く撫でてやるなりに。
「よっしゃ、アンタん学校行ってみるか」
長女が乗る。
「私も行くよ」
次女も乗る。
そして鹿子は同級生に手を振り、先を急いだ。
「頑張ってなぁ! 雨ちゃん」
「鹿子達も、気を付けて行かんばよー」
三姉妹を見送ったのちに、良枝は再び体育館へ向けて走り出した。屍人達を叩きながら。