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リビング


「兄さん、おい風邪ひくで!」

「雪ちゃん、蹴り入れたらどげん?」

「良かと? 蹴るよー」

雪那はゆったりとした口調で、訊く。

「大丈夫やろ?」

 美千恵が促した。そして雪那は、躊躇なく青年の腹に足を突き入れた。すると、寝込んでいた青年が突然と起き上がり、三人の少女へと襲いかかってゆく。その青年には生気が無く、瞳は白く濁っていた。少女達は逃げながらも切り抜ける手段を思案。

「あん兄さん生きとらんかった!」

「何なん? それゾンビかいな!」

「雪ちゃん、本当に蹴りよった!」

「蹴れて云うたたいなぁー」

 雪那がゆったり口調で美千恵に返した。思い立った蝶子は身を屈め、青年の足を払って前のめりに転倒させる。次に頭をもうひと蹴りして、逃げる。だが、生気の無い青年はすぐに起き上がって追い駆けて来た。トリオは慌てるも足にブレーキをかけて、きびすを返して踏みとどまって構えた。間合いは充分にあり、準備万端。

「行くでっ!」

 蝶子は号令を発したのちに、ランドセルを肩から外して片手に持つなり一回転すると、投げ飛ばした。同時に、美千恵と雪那が突進する。蝶子のランドセルが青年の胸板に当たり、足を止めた目の前には二人の少女が。美千恵が止まったと同時に雪那の可愛らしい両腕をしっかりと握り締め、青年の頭めがけて振り上げる。両脚を折り溜めた力を、雪那は青年の頭へ向けて爆発させた。打撃により横に半回転して、路上に頭を激突。頸椎が折れて、再起不能。

 転倒と同時に雪那が着地。美千恵が蝶子のランドセルを拾い上げ、笑顔で手渡した。驚く程に美しい笑顔に、京都娘は照れながら頭を掻いて受け取った。

「ウチら最強や!」

「文句無し、たいな」

「ミッちゃん、ナイスアシスト」

 そして三人は各々の家路へ向かった。


 夜八時過ぎに、長女の瓜子が帰宅。なぜか少々膨れっ面。これに気になった次女の鹿子は、尋ねてみた。

「おかエりー」

「ただいまー」

「姉サん、どうしたン?」

「んー。ケッタイな格好の兄ちゃんに絡まれてな、しっつこいもんやから叩きのめしてきたンや」

「ケッタイな格好て、どないなん」

「ウチらのは着物着とったンやで!」

 蝶子が瞳を輝かせて、割り込む。瓜子が目尻を下げる。

「ただいまー、蝶子。―――ウチらんは、黒い軍服やってん」

「それって西南戦争の時と、違うかー」

 と、鹿子が推測。




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