猪鹿蝶 京の虎
避難住民達を乗せた防衛隊の大型輸送車が三台、長崎市大村空港を目指して機動力全開で風を切る。それぞれに装甲車が護衛でつき、次々と襲いかかってくる屍人達を撃退し蹴散らしていった。防衛隊の攻撃は、容赦無し。
大空から。
大地から。
海原から。
長崎県のあらゆる建物が、屍人どもを巻き込んで全てが破壊されてゆく。大村空港へと無事に着いた避難県民達に、難波家の女五人と、蝶子の友達。大人系小学生の美千恵、色白垂れ目の雪那、眼鏡の広島娘の柚菜、それぞれが防衛隊大型輸送機『アメノトリフネ』へと乗り込んでいった。
輸送機の窓越しから末娘の蝶子と次女の鹿子、その後ろに虎子と京と長女の瓜子たちは、爆撃破壊されてゆく街を眺めていた。何を思い立ったのか、蝶子と鹿子がお互いに肩を組み、二人共に拳を振り上げた。そして、揃って声を上げていく。
「めちゃくちゃに、してェーナ!」
「めちゃくちゃに、してェーナ!!」
という具合に、地球防衛隊へと応援を送っていった。それを聞いていた後ろの三人は、途端に恥ずかしさに頬を赤らめて俯く。だが、なにかを決意した瓜子が、妹たちに便乗した。
「めちゃくちゃに、してェーナ」
「めちゃくちゃに、してェーナ」
これに続いて、虎子と京も乗ってゆく。あとはもう、難波家の女たちの応援大合唱である。
「めちゃくちゃに、してェーナ!!」
そうして長崎県民達は、自分達の故郷から脱出していったのだ。それからは、振り分けられてゆき、復旧作業が完了するまで県外で生活をしていくことになる。
八月も半ばをむかえて。
福岡市内、とある仮設住宅街。難波家の女たちが、遅れた夏休みを送っていた。母虎子の夫は、まだまだ出張先の会津若松市にて奮闘中。長崎県の街も、ようやく半ばまでに復興して、次々と避難県民達が帰郷していく。しかし、難波家はまだまだ順番待ちだった。
仮設住宅の六畳の居間。叔母の京が胸元はだけて団扇をあおいでいたところで、電話の呼び出し音が鳴ったから出てみると、たちまち喜びを浮かべて姉を呼んだ。素早く変わって、声を高らかにあげた。
「お父んか」
『おお、虎子。久し振りたいな』
「今、どないしよるん」
『今な、会津がさ、過去ん連中で荒れとって大変かと』
これを聞いた途端、女五人が叫んだ。
「何やて!?」
『日本の夏、屍人の夏』完結
このような書き物に最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
わずか二五話にもかかわらず、天こ盛りの詰め込みな上に、登場人物がやたらと多くて混乱させてしまったと思います。しかし、必要な場面だけ必要に活躍させる事を考えて書きました。
何よりもこの書き物は、主人公が最年少の十二歳といった試みです。
以上、最後まで、ありがとうございました。また次も宜しくお願い致します。