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難波家の人々


 市民会館内部。

 難波家の女たちが、ある女二人の駆け寄ってくる姿を遠目から発見。ひとりの女が手前の怪我人につまづいて、三人の怪我人をめがけて前のめりに転倒。当の負傷者達は当然のごとく怒るのだが、その身内と思われる人々には大受け。肩まで髪を伸ばした女が、転倒した相方を腕を掴み起こし、そして、女二人揃って怪我人達に頭を下げて平謝り。また駆け出して、再び床の怪我人に躓いて転けようとした相方を、間一髪で助けた。そして、女二人ともに駆けていく。

 その光景を、難波家の五人が見ていて、うち長女の瓜子が呟いた。

「あ、日下部はんに万城目はんや」

 これを、母の虎子が笑いを堪える。

「春ちゃん。相変わらずオモロいなぁー」

「春香姉ちゃん。夏実姉ちゃん」

 末娘の蝶子が二人へ向けて手を振った。となりでは、叔母のみやこと次女の鹿子かのこの二人は、口元と腹を押さえて肩を震わせている。腹筋が痛い筈だろう。

 そういう事も露知らずに春香姉ちゃんこと日下部春香と、夏実姉ちゃんこと万城目夏実の二人は到着するなりに、揃って笑顔で挨拶。

「こんにちは、虎子さん。ミヤコさん」

 春香は蝶子の頭を撫でながら。

「蝶子ちゃん鹿子ちゃん、こんにちは」

 夏実も鹿子の頭を撫でてゆく。

「鹿子ちゃんに蝶子ちゃん、こんにちは」

「お二人共、無事やったんですね」

 と、瓜子が抱き付いた。春香が大きいめの瞳を輝かせて、嬉しさのあまりに興奮を抑えきれず叫んだ。

「『地球防衛隊』が来ました!」

「そうです! コヤツの彼氏が来たのです」

 夏実も笑顔になり、友を指差した。蝶子が立ち上がる。

「来たんや!」

「そうだよ、蝶子ちゃん。拳一郎さんが来たんだ」

 春香は、芯から嬉しそうに笑顔を輝かせた。最前線に立って戦闘指揮をとっているらしい。


「皆さん! これから防衛隊の大型輸送車に移動して頂きます!」

 地球防衛隊の第三部隊隊長が、避難住民達へと呼びかけた。難波家の女五人と春香に夏実を含めて、避難住民達の移動が始まったのだ。市民会館にある舞台の大道具搬入口から、青いホロを大型輸送車に掛けて、まずは怪我人と同伴者と医療班が多数乗り込んでゆく。間近で特殊兵器の鎌首を上げた攻撃が見えた。青白い光を放ち、屍人達が爆撃に吹き飛び次々と戦闘不能に陥る。

 そうして、難波蝶子の瞳が、破壊の光景をじっと見詰めていた。




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