ライミ
「どや、瓜子姉ちゃん。合格か」
蝶子が瞳を輝かせて、長女に訊いた。
「合格や、合格やで! 蝶子」
瓜子も瞳を輝かせた。合格とは、稲葉警部補の事。男はたった今、立ち去ったばかりだった。
戦況の好転により、それから難波家を含めて避難市民達は、市民会館でくつろいでいる。母親の虎子と叔母の京ともに、横座り。長女の瓜子も二人にならって横座り。変わって、次女の鹿子と末っ子の蝶子は胡座だった。この二人の場合は、胡座の方が可愛らしい。
瓜子が期待の瞳を見せながら、末妹に尋ねてゆく。
「なぁ、蝶子。あの刑事はん、独身なんか」
「ウチ、そのへん刑事はんに聞いてきたんや」
「でかしたで。―――で、何て云いよったん」
すると、蝶子が申し訳なさそうに頭を掻きながら答えていく。
「ごめんなさい。……って、刑事はん、云いよってん」
「な……!? 何でやのぉ〜〜」
途端に瓜子の瞳が潤む。
蝶子が、そんな姉の背を軽く叩いて。
「今は、この仕事優先さすて云ってたんよ。しゃーないな。―――でも、姉ちゃん! 大丈夫や。瓜子姉ちゃん別嬪はんやさかい、男は自然と寄ってくるで」
「おおきに蝶子。……しかし、刑事はん、恰好ええわ……。けど、それは厳しイねん」
瓜子、撃沈!
見かねた母が、仕方ないなと笑顔になる。
「瓜子、元気だしやー。あん刑事はんに、まだアピール出来る機会あるやんか」
「そーや、瓜子。お堅い男の人って、ちぃっとしたキッカケで、落とせる云うんよー」
叔母が穏やかな声で、アドバイス。直後、頬を赤らませるなりに。
「あん刑事はん、硬いんやろなぁー」
「そら、刑事はん。硬いんとちゃうかぁー」
瓜子の頬も赤らむ。そんな二人を見た虎子が、雷を飛ばした。
「アンタら、止めやッ!!」
機動隊が屍人達の陣営を圧倒してゆくも、常に何処からともなく湧いて出て来る。各地区の機動隊は人手不足でギリギリだったから、撃退にも一苦労だった。その上、各地区の病院から呼び寄せた医者達、看護師達も限界が来ていたのだ。そんな空気の漂いだした途端に、屍人達の陣営が後方から爆撃を喰らって連中総崩れ。たちこめる爆煙の中から、透明な鎌首を上げて巨大な姿を現したそれは、九〇式戦車よりも二周りも巨大で、先端部に集光機がある特殊兵器。これは、我が国の誇る軍隊の登場を意味していた。
『地球防衛隊』参上。