必殺!狙撃人!!
難波蝶子は、市民会館の裏を伝って遠回りして、赤煉瓦のレストランへと入った。その間に当然のごとく屍人達の襲撃はあったが、サッカーの動きを生かして切り抜けてゆき、パチンコをお見舞いしてやった。
ほぼ同じ頃。蛇の瞳の屍人は、次の水道管矢を準備して、向かい側の屋上に到着する稲葉警部補を待っていた。屋上に着いた警部補が、出入口の物陰に背を預けて向こう側の様子を見る。すると、水道管矢が飛んで来たので反射的に身を隠すと、出入口の一部が破損。陰から颯爽と飛び出して回り込み、八九式小銃を構えて撃つと、弓使いの屍人はとっさに身を屈めて銃弾を避けると、素早く弓胎弓を構えて水道管矢で反撃。稲葉警部補が矢から身をかわして小走りに屋上の縁まで行くと、腹這いになるなりにそこへ銃身を置いて構えた。その時、稲葉警部補は一瞬手を止めた。向かい側の赤煉瓦の屋上で構えていた弓使いの屍人の頭がぐらついたのだ。これに乗じた警部補が、躊躇いなく撃った途端に、弓使いの屍人は衝撃により頭と上体を跳ね上げて、仰向けに転倒した。無事任務終了したので、とりあえず無線を繋ぐ。
「朝倉刑事、こちら稲葉、終了した。後は攻め込んで連中共を遠慮無くなし崩しにしろ。と、伝えてくれ」
『有難う、警部補』
「どうも。―――正直云うが、俺は助けられた」
『……誰に?』
「パチンコを使う凄腕の狙撃人だ」
『え? あ、そ、それってばまさか』
「七三分けの、お転婆娘だ。今、俺に向かってVサインを送っているよ。今すぐに、手厚く保護して避難場所に送り返してあげろ」
『わ、分かった。気を付けて戻って来いよ』
「了解した」
そう伝えて無線を切り、向かい側の屋上にいる蝶子へと向けて稲葉警部補が軽く敬礼を送ると、それを見た少女も敬礼を返した。
「こんの刑事はん、もんのすごくカッコエエんやで!!」
市民会館へと強制的に戻された蝶子は、瞳を輝かせて大興奮。少女の後ろに、稲葉警部補と、深刻な表情のあかり刑事が。虎子が実に申し訳なさそうに、頭を下げてゆく。
「刑事はん、エラいすみませんでした」
「いえ、気にしないでください。自分は、お嬢さんから助けらたのです」
「蝶子が貴方を助ケた?」
「はい。狙撃犯の延髄付近に弾丸の痕がありまして、そのお手元のパチンコの弾丸と一致したのです」
そんな中、蝶子が警部補へと送った。
「兄さん。必殺、狙撃人やっ!!」