戦国狙撃人 四
音が内部に響き、烏帽子の屍人がライフルをそこに向けるも、なにも居なかった。しかし気配がするので、後ろの受付カウンターをうかがう。
これは、居る。
確実に居る。
そう確信をして、種子島銃を構えながら銃口をカウンターに向けて、獲物を探し始めてゆく。
種子島ライフル。
標準的な全長最大約千三五〇ミリ。銃身長が最大千五〇ミリ。口径は最大十二,五ミリ。重量が二から四キロ。外見はストレートで太さがあり、飾り的な物は無し。標準型の点火機構は、松葉形のバネを用いた外バネ系の点火機構である。引き金を引くと爪が引っ込み、バネの反発力で火挟みが落ち、先端の火縄が火皿の火薬に接して点火する。有効射程距離は、百メートル以下。威力は、五〇から百メートルの距離で、厚さ三センチの板を軽く撃ち抜く力を持っている。致命傷は確実であり、死も免れない。
対する稲葉警部補は、八九式小銃で受付カウンターの中に隠れて、射撃の機会を狙っていた。火縄式の充填は、約一分間。そこに隙が出来るはず。そしてそこを狙って撃つ。
烏帽子の屍人が、受付カウンターに近づいた。隠れている気配を探す。それは、確実に相手を仕留める射程距離であった。すると何を思ったか、狐顔の男は遠くのバインダーを撃ったのだ。短く乾く音が銀行内部に響き渡ったのちに、火薬の臭いが立ち込めていく。そして充填。その撃った机の下には、稲葉警部補が隠れていた。なるほどな、挑発かと理解した警部補は、別の机の下へと移動。充填し終えた狐顔の屍人が、既に種子島銃を構えて狙いを定めていた。それにしてもスプリンクラーが作動しないのは、壊されていた為か。狐顔の屍人は冷静沈着に種子島銃を構えて、移動する稲葉警部補を銃で追っていく。やがて、机の下から姿を現した警部補をめがけて、引き金を引いた。乾いた音が交差。すると、烏帽子の屍人は、撃たれたのは自分だと気づいた時にはすでに遅く、喉に小さい黒い穴が空き硝煙が上がっていた。躰が揺れて足元がぐらつき始め、やがて、仰向けに転倒。
あと、二体。
そんな稲葉警部補も無傷ではなく、弾をかすめた上腕から出血していた。そして、窓枠に身を屈めて走り寄り、元病院の中の様子をうかがう。既にあちらは、クロスボウガンを構えていた。警部補がとっさに身をかわした直後に、ボウガンの矢が客席に突き刺さった。