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ユズナ


 美千恵は手を伸ばして、蝶子の頭を撫でてゆく。

「蝶子。ウチが、くたばるわけなかやっか」

 優しく声をかけて見つめ上げた。この少女、意志が強いようだ。瞳が全く死んでおらず、鋭い瞳の輝きを見せている。と、そこへ黒髪おかっぱ頭の、眼鏡を掛けた少女が蝶子の姿を見るなりに手刀をあげた。少しばかり細い卵の輪郭に、丸く大きな瞳。意志が強そうに吊り上がった眉毛。身長は百五〇あり、デニムのオーバーオールを愛用。広島県生まれの広島県出身。

 眼鏡の少女は、寝ている怪我人達を飛び越えながら蝶子たち三人の元に駆け寄ると、京都娘の蝶子の両手を取るなりに瞳を輝かせて喜んだ。

「おお! 蝶子、おんしゃ生きとったんか」

「柚ちゃんも無事やってん!」

「そうじゃ、当たり前じゃ。ワシゃ、しぶとく生きとるぞ」

 柚ちゃんこと、吉備原柚菜きびはらゆずなという。柚菜は更に続けた。

「ついでにの、あんの男子イレブンのバカ共も全員無事じゃけ。―――そうじゃ、蝶子。お前ん家族の別嬪さん達に混じっとる、あんゴッツいオッサン何なら」

「神父はんやで。エッライ強いンや!」

「神父さんじゃて!?―――そ、そー云や、確かに強そうじゃのーォ。苦も無く捻り潰しそうじゃな」

「そうなんよ。ぜんぜん、いたわることせぇへんのや、過去ん連中を容赦のおへし折ってたんやで!」

 エラい言われようやな。

「けどなぁ、お母んに叔母はんと神父はんのおかげで、ここまで来れてん」

「ワシらは、警察ん連中に送ってもろうたけ。―――おお、そうじゃ。蝶子よ、おんしゃの瓜子姉さん、まだ彼氏できんの?」

「そうや。瓜子姉ちゃん、まだ彼氏でけへんねん」

 蝶子が後ろ頭を掻く。柚菜は友の手を引き、部屋の外に誘導していく。

「なら早いがええの。ミッちゃんに雪那、少しばかり蝶子借りるけ」

 そう訊かれた二人は、手を振り上げた。

「気を付けてなぁー」

 雪那が、いつものゆっくり口調で見送った。


 そして蝶子と柚菜は、地下階の廊下に来ていた。医療班や部下に指示を出している男前を見せて、柚菜が話しかけてきた。

「どうじゃ、蝶子。ええ男じゃろ」

「合格や。バッチリやな」

少女二人が遠目から合格を出したこの男前は、刑事だった。

 長崎県警察署強行課所属。

 稲葉輝一郎警部補。二八歳、独身。




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