コムズ
難波家の女五人と瀬峨神父は、長崎市民会館に到着。市民会館から電車線路を挟んで、目の前には長崎市公会堂が建っていた。その公会堂の隣りに線路を挟んで、長崎県警察署が建っている。長崎市民達は、警察署が総動員した機動隊の誘導と護衛によって、それぞれの施設に移動し避難して集まっていた。まだまだ避難に来ていない人達もいる筈。県民の避難所は距離的な事を入れて、振り分けられていた。活動に不足が無きように、ある程度の余裕を見越して住人達を避難させている。そして、各公共施設からも移動し避難させていた。幼稚園に保育所と小学校に中学校と高等学校。この市民会館と公会堂には、黒船高校の生徒達と鶴港小学校の生徒達も避難させていた。娘たち二人は、お互いの友達を探しに出る。各地の病院からも治療と看護に介護が総出で来ている。
蝶子は二階の広間へと走った。廊下の避難した住人達を避けて走り、各部屋を覗いて探していく。雪那に美千恵は無事なのであろうか?焦る気持ちを抑えて、ひと部屋ひと部屋を丹念に探してゆく。と、そこには見た事ある顔を発見したらしく、満面の笑みになり思わず駆け寄った。色白な垂れ目の雪那に、大人びた小学生の美千恵が居たからだ。蝶子が雪那に思い切り抱き付いた。
「うあ〜〜! 雪ちゃんにミッちゃん! 生きとったんか! 良かったでェ〜〜、良かったでェ〜〜! ウチ嬉しゅうて嬉しゅうてなぁ〜〜も〜〜!」
「蝶子ちゃん生きとった! 蝶子ちゃん生きとった! うあ〜〜〜! ミッちゃんなぁ〜もう大丈夫なんじゃ〜〜!」
「ミッちゃん大丈夫なんか!?」
二人の後ろで敷き布団に寝かされて、点滴している美千恵が笑顔を向けた。か細い首に巻かれた包帯が痛々しい。顔色も少しばかり悪いようだった。蝶子と雪那の可愛い二人は手を繋いで、美千恵の傍へと来る。蝶子が涙声で、心配そうに美千恵へと話しかける。
「ミッちゃん、具合はどないや」
「よぉ、蝶子。い……生きとったか。……アタシはこの通り無事たいな。―――かすり傷たい」
美千恵が、人差し指と中指を揃えて額から離した。
「苦しかとー。ミッちゃん苦しかとー」
「雪那、泣く事無かやろが。蝶子、ウチな、他ん生徒達ば守ろうとしてさ……過去ん連中ば投げ飛ばしよった隙ば突かれてな、首咬まれてしもうたったい……。雪那も頑張いよったやかね……だけんか、責任感じる事ん無かけんね」