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ゴードン


「早よ乗りなはれ」

 瀬峨神父に促され、難波家の女五人は黒のエスティマに乗り込む。その間に虎子と瓜子が他三人達を庇い、金属バットとフライパンで屍人達を蹴散らし払い除けていく。乗り込んだのを確認した瀬峨神父は、車の機動力全開にして飛ばした。そして屍人達を轢き倒してゆき、市民会館を目指す。それから後部座席では、母虎子と叔母京がいつの間にか眠りに入っていたようで、それも結構疲労していたらしく顔の血の気が薄れていた。しかし、母と叔母は寝顔も美しい。同じように、可愛い二人の妹も疲れて、眠たげであった。瓜子が、虎子と京の手をそっと柔らかく握り締める。そして優しい笑顔を二人に向けた。

 ――おんにミヤコはん、おおきに。お疲れさん。後はアタシら三人が治療したるさかい、ゆっくり寝てや。―


 瀬峨神父はミラー越に、瓜子の顔色をうかがい心配そうに訊いてきた。

「難波はん、疲れておますな。寝とって下さい」

「あはは……おおきに。ウチは構いません、大丈夫ですワ」

「さいですか。―――そや、先程のラジオ聞きましたん?」

「何か云いよりました」

「ええ。喜んでええですよ。市長はんが政府に呼びかけまして、『地球防衛隊』の出動が下りましてな、重火器に戦車と航空機に特殊兵器まで総動員らしいですわ。―――なるべく被害を最小限に抑えたくて、長崎から屍人達を一歩も出さへんごと、全滅さすそうです」

「ほっ、ホンマですか!」

「ええホンマですよ。国は本気ですねん」

「はは……。やったで」

「市長はんな、昨日から政府に報告申請してはりましたそうです」

「市長はん偉いやん!」

「ホンマに偉いです」

「あ! そや、防衛隊で思い出してん。西山の日下部はん大丈夫でっしゃろか?」

「心配なら電話入れたがええですよ」

 そう促されて、瓜子が携帯電話からかけてみた。

『はい。日下部です』

 通話の相手は瓜子の会社の先輩、日下部春香。女は卵の輪郭の、少し垂れ目の大きい瞳を持つ幼顔の細身の先輩。瓜子は春香の無事な声に、ひと安心をする。

「日下部はん、難波でス」

『あら、瓜子! アナタも無事だったんだ。良かったぁー』

「はい。おおきに。今ウチらは、市民会館へ移動中ですねん」

『私たちも今、市民会館に集まってるんだ。先に待っているね』

「さいですか」




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