沈黙のデッド
瀬峨神父は襲いかかって来る屍人達を、次々に投げ飛ばしたり折ったり捻ったりしながら、自家用車へと怪我人含めて住人達を次々に乗せてゆく。
小手を取り、腕を回して頸椎を折る。
「あんさん神を信じまっかー?」
二体の小手を捻り投げ倒して、頸椎破壊。
「あんさん神を信じまっかー?」
小手を取って、後ろの三体めがけて投げる。
「あんさん神を信じまっかー?」
拳を流して首を取り、頸椎を破壊。次の屍人の腕を取り、背中側に回して首を折る。
「あんさん神を信じまっかー?」
腹、胸板、頸椎、顔面にへと手刀を打ち込んでゆき、蹴り飛ばして。
「あんさん神を信じまっかー?」
顔を仰がせて、折る。流れるように捻り投げ飛ばす。続いて、首を取り横に捻り折る。
「あんさん神を信じまっかー?」
ラリアット、上段横蹴り、喉輪と打ち込んでゆき、三体それぞれの頸椎を捻り。
「あんさん神を信じまっかー?」
抵抗虚しく次々と倒されてゆく同士達を、見ていた他の屍人達は恐れをなして怯えて逃げ出していく。目の前でも、計二〇体近く葬られた。
「うっ、うわー! 化けもんじゃぁ!」
「何なんや、このオッサン! 神父はんやろ!」
「かなわん! かなわん!」
屍人、喋る事が出来たのか。
窓越しから瀬峨神父の活躍ぶりを見ていた蝶子が、拳を振り上げ叫んだ。
「神父はん、最強やな!」
末娘の喜ぶ姿の後ろで、虎子に京と瓜子に鹿子の四人は、残った怪我人の応急処置をしていた。この四人にも神父のひと声ひと声が聞こえていたらしく、表情にはっきりと半笑いを浮かべていた。
「虎ちゃん、何やのー!? あん神父はん投げるたびに『あんさん神を信じまっか?』って。 ―――ぷふっ……!」
「ミヤちゃん、笑たらあかんよ、笑たら。―――ぷふっ……!」
「お母んもミヤコはんも、失礼やなぁー。……ぷふっ。あん神父はんは真剣なんやで」
「あーっもう、何やの!? あのオッサン!―――鹿子、お前まで笑てるやん! がっ……我慢出来へん……くく」
「あ、アンタら、人ん好意を笑たらあかんよ……くくく……」
虎子の注意も虚しい。女四人、応急処置もままならない。瀬峨神父は次々に住人達を自家用車に乗せてゆき、市民会館へと運んでいく。黙々と、ただ黙々と。そして残るは、難波家の女五人のみ。