ロメロ
厳密に言うとゾンビとは言い難いですが、モンスターとしてのゾンビもいいよねと言いたいです。
「早よ逃げんば、捕まったら終わっばいよ!」
「どっから湧いて出て来っとや!」
「奴ら未練タラタラじゃな!!」
阿鼻叫喚、である。
―――三日前―――
ドンッ
「何や何や、地震か!?」
「姉ちゃン、今ごっつ揺れてん!」
「あー、食器や置もん大丈夫やろかぁ」
「瓜子、鹿子、蝶子。金目のモン確保したか」
「虎ちゃん、ウチらそないなモンあらへんやんかぁ」
女五人とも含めて、町の住人全員が道路上へと飛び出した。しかし、何にも倒壊した様子は無し。全員が全員飛び出たものだったから、お互いに顔見合わせるなりに恥ずかしげに照れ笑い。そして皆は、各々の自宅へと戻ってゆく。
難波虎子は、娘三人に部屋に戻ってもう寝ろと促したのちに、双子の妹の堺京と六畳の居間にてお膳を挟み、寛いでいた。虎子は頬杖を突くと、ひとつ零す。
「あーあ、こっ恥ずかしかったナぁ」
「虎ちゃん、皆さんも恥ずかしぃんやわ」
京の声を聞きながら、虎子は吹き出すのを堪えつつ先程の状況を思い出した。
「うへへ……あのお隣さン、オモロい顔しとったな。ミヤちゃんも見たン?」
「ぷっ……。そ、そないな事失礼やん」
「笑てるやん。受けとるやろ。―――はーっ、もう寝よか」
翌朝、虎子は娘三人を送り出した。この女五人は京都生まれであるが、ここ最近五年ほど前から旦那の出身地である長崎市へと移り住んでいた。当の旦那は、出張先で奮闘中。
三姉妹を紹介しよう。
長女、難波瓜子。二三歳、独身。母方の家系がそうなのか、三姉妹ともにて瓜の輪郭に高い鼻筋を持つ美人。猫のエジプシャンみたいな印象は、姉妹ともにあり。百六八もあるスレンダーな体型に見合った、小振りな胸。黒髪を右側七三に分け、長さは肩甲骨まで。服はいつもの上下のグレーにスラックス。
二女、難波鹿子。高校二年生、十七歳。こちらは叔母の京と似て、おっとりとした感じ。鹿子も黒髪のセミロングを右側七三分け。通う学校は、碇の紋章が目印の『長崎県立黒船高等学校』。身長は百六五。
末娘、難波蝶子。十二歳、小学六年生。緩やかな輪郭で幼く可愛い。瞳も同じ猫目だが、悪戯好きそうにも見える。こちらも肩にかかる黒髪を右側七三分け。通う学校は『長崎県立鶴港小学校』。身長は百四五。
因みに、難波家の宗派は神道。
但し、鹿子だけはキリスト教。