エピローグ「そして二人は、永遠の契約を結ぶ」
あの夜から一年後。
私は、隼人と共に、南国のプライベートアイランドに来ていた。どこまでも続く白い砂浜と、エメラルドグリーンの海。公条院グループの所有する、誰にも邪魔されない、二人だけの楽園だ。
父に会社を任せ、私たちは少し長い休暇を取ることにしたのだ。
夕暮れ時、オレンジ色に染まる海を眺めながら、私たちは砂浜を歩いていた。
私の左手の薬指には、大粒のダイヤモンドが輝く指輪がはめられていた。
数ヶ月前、隼人は、屋敷の薔薇園で、私にプロポーズしてくれた。
『俺と、結婚してください。玲奈様』
ひざまずき、私を見上げる彼の瞳は、真剣そのものだった。
もちろん、私の答えは、決まっていた。
「ねえ、隼人」
「はい、玲奈さん」
いつの間にか、彼は私のことを「玲奈さん」と呼ぶようになった。私は、それが少し照れくさくて、でも、とても嬉しかった。
「私たち、本当に夫婦になるのね」
「はい。信じられない思いです」
彼は、愛おしそうに、私の手を取った。
「まさか、俺のような男が、あなた様と……」
「まだ、そんなこと言ってるの? あなたは、私の、たった一人の、大切な人よ」
私がそう言うと、彼は嬉しそうに微笑んだ。
彼の笑顔を見るたびに、私の心は、幸せで満たされていく。
私たちは、波打ち際に座り込み、沈んでいく夕日を眺めた。
彼の肩に、そっと頭をもたせかける。
「隼人」
「はい」
「これからも、ずっと、私を守ってくれる?」
「当然です。生涯をかけて。いいえ、たとえ生まれ変わったとしても、俺は、必ずあなた様を見つけ出し、お守りします」
その言葉は、最高の愛の告白であり、同時に、永遠の束縛を意味する、呪いの言葉のようでもあった。
でも、それが、私たちの愛の形なのだ。
重くて、深くて、少しだけ歪んだ、二人だけの愛。
「愛してるわ、隼人」
「俺もです、玲奈さん。世界の誰よりも、愛しています」
私たちは、夕闇が迫る空の下で、静かにキスを交わした。
悪役令嬢に転生した私の物語は、こうして、最高のハッピーエンドを迎えた。
いや、これは終わりじゃない。
これから始まる、永遠に続く、愛の物語の、ほんの始まりにすぎないからだ。
彼の重すぎるほどの愛に包まれて、私は、これからも、この世界を生きていく。
二人で、共に。永遠に。




