2話 『信用金庫』
臨戦。
「じゃあ今度こそは私が手柄をいただくわ!」
駆けるは疾風のごとく、前線に駆り出される身故、戦闘技術は高いのだ。
戦闘技術は。
「今日のアレじゃ多分無理じゃ」
「いいえ! 私の『天叢雲』にあの程度のジェル風情が倒せないわけないじゃない! 行くわよおおお!」
帯刀してある『アメノムラクモ』を引っこ抜き、いざ斬りかかろうとする鵜ノ崎。
だがしかし食い気味に否定されたが、特に意図もなく制止をかけるほど饗庭はバカではない。
講座敷でよく倉庫や物置を漁っている彼女は、がらくたをよく広い集める。それでもああいった特殊な物品を掘り当てることがあり、使用しているのだ。
命名は自分でしているものもあるらしい(今回は違うようだが)。
さて、なぜ彼は止めたのか。それは鵜ノ崎本人から聞いた天叢雲の話に起因する。
(カタチを切れるからって特に定まってないヤツ相手じゃ意味ないんじゃないのか……?)
「ふっ……。勝ったわね」
斬り払い、余裕ありげに目を閉じながら刀を鞘にしまいかこつける鵜ノ崎。
指を指す。
「う、し、ろーーー」
「は? え? あっ。ちょまっ。タンマ一旦落ち着い……饗庭晶斗ー! 信じてるわよー!」
ノマレタ。呆気なく。
正確には包み込まれたの方が正しい。海魔はあくまでも海魔。あの状態でも消化できるわけではない。
鵜ノ崎はもがいているが、正直なところこれ以上饗庭がすべきことはない。
「技術があっても、ちょっと頭がザンネンなところが玉に瑕だな」
薄情などではない。仲間としてすべきことはもう既にした。後はなるようになれというのが饗庭の正直な感想である。あのままでは何事もなく窒息するだろう。それも承知の上だ。
繰り返そう。
決して饗庭晶斗は薄情などではない。仲間としてすべきことはもう既にした。
「ギェッ!」
突然海魔が弾け飛ぶ。ちなみに下級体ならなにも遺さず海魔は消滅する。
わずかな魔核が落ちているのでそこそこだったようたが……。
「あんまり無駄にしないでくれよ?」
「ごほっ、ごほっ! あのねえ、別にいいじゃない。私が貯めたものなのよ? 毎回思うけどもっといい方法ないのかしら」
「残りが分かる訳じゃないんだぞ。前例がないから仕組みも詳しく分かってない。俺が細かい操作できないから毎度面倒なんだろうが」
連絡係のテレパスのように、そういうのを持つ者がいる。
饗庭の場合『信用金庫』と呼ばれるものだが、ここでは一般的な意味ではない。それは他者が饗庭に対する信用を事前に貯め込み、必要に応じて信頼を言語化すると、何かしらの事象として引き落とせるというものだ。それぐらいしか分かっていない。他の用途もありそうではある。
信頼を預けたり、引き出したりすることには饗場の意思がほとんど介入しないため、今はそこまで饗庭自信にとっては有用でない。
「そもそもアンタが支給零装持ってれば駆逐できたでしょうが。なんでアンタはいつも手ぶらなのよ」
「いやあれ重いし」
「アンタねえ……。ま、いいわ。結局毎度無事だもの」
思ったよりも開けた場所だったみたいだ。遮蔽物がなくなり差す光に目が少し眩んだ。




