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生まれ変わってもスラムでした  作者: 灰原ノア
無所属編

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条件が通る理由

 帳簿は、今日も開かれていなかった。


 灰帳連の会議は、いつも短い。

 長引くのは、価値がある時だけだ。


「条件付きで受けた」


 報告は、それだけ。


(余計な説明は、評価を歪める)


「通した理由は?」


 誰かが聞く。


「切るより、安い」


 即答だった。


(感情は不要)


 帳簿の角を、指がなぞる。


「拒否した場合」


「辞退」


「その後」


「野に放たれる」


(危険だな)


 沈黙。


 野に放たれた“記録外”は、

 制御できない。


「条件を飲ませた場合」


「仕事は受ける」


「責任範囲が明確になる」


「失敗時の切断線が、分かりやすい」


(処理が楽だ)


 誰かが、小さく頷く。


「前例は?」


「少ない」


「だが、問題は起きていない」


(生き残らなかっただけだ)


 帳簿は、まだ開かれない。


「条件内容は?」


「撤退判断を本人に委ねる」


「責任範囲の事前提示」


「同行者は、対象外」


 短い沈黙。


(同行者……女か)


「甘くないか」


「甘くはない」


「責任の所在が、一本化される」


(便利だ)


「失敗すれば?」


「切る」


「迷えば?」


「切る」


「早すぎれば?」


「切る」


(どのみち、切る)


 誰かが、息を吐く。


「なぜ、要求できた?」


「自分が“消耗品”だと理解している」


(理解していない者ほど、要求はできない)


「恐怖は?」


「ある」


「だから、無駄な要求はしない」


 帳簿の端が、叩かれる。


「評価は?」


「上げない」


「下げない」


(現状維持)


「危険度は?」


「低くはない」


「だが、制御不能ではない」


(扱える)


 会議は、そこで終わった。


 結論は、書かれない。


 書くほどの価値も、

 消すほどの危険も、ない。


 条件が通った理由は、一つ。


 切るより、

 使った方が安い。


 それ以上でも、それ以下でもなかった。

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