幕間 ミラ
久しぶりに、顔を合わせた。
それなのに。
(……こんな感じ、だったっけ)
路地の影から出てきた彼は、前と同じ服を着ている。
歩き方も、視線の落とし方も変わらない。
なのに、胸が鳴らない。
「無事?」
「まあな」
短い返事。
(それだけ?)
前なら、もう一言あった。
愚痴か、皮肉か。
今は、ない。
近くにいるのに、
距離だけが、詰まらない。
(……ああ)
分かってしまう。
彼は、戻ってきたんじゃない。
通過してきた。
私の前に立っているのに、
視線は、もう一歩先を見ている。
「次、どうするの?」
聞いた瞬間、後悔した。
答えが、用意されている音がしたから。
「仕事だ」
迷いのない声。
(前は、もう少し迷ってた)
私は、何も言えなくなる。
並んで歩く。
肩が触れる距離なのに、足音が揃わない。
(置いていかれる、とは違う)
(でも、追いかける側になった)
嫌じゃない。
ただ
(もの足りない)
理由が分かるから、余計に。
彼は、強くなった。
その分、私に向ける余白が減った。
立ち止まって、彼の背中を見る。
声をかければ、振り向くだろう。
でも、それじゃ意味がない。
(自分から戻ってこない限り)
私は、歩き出す。
少し遅れて。
ひさびさに会えたはずなのに、
胸に残ったのは
空白だった。




