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幕間 灰帳連・記録外
帳簿は、机の上に置かれていた。
だが、誰も開かない。
灰帳連の帳簿は重い。
紙の厚みではない。
書かれた名前の数が、重さになる。
(増やす必要は、ない)
「結果は?」
低い声。
「失敗」
即答だった。
(失敗は、記録する価値がある。
生存は、別だ)
帳簿の端を、指が軽く叩く。
「死んだか」
「生きている」
わずかな沈黙。
(……なら、空白だ)
紙をめくる音がしない。
ペンも、動かない。
記録係は、視線を落としたまま言った。
「処理対象では?」
「まだだ」
短い否定。
(切る理由が、足りない)
「使えるか」
問いは、評価だった。
「高くはない」
「だが、安すぎもしない」
(数字にしづらい)
誰かが、息を吐く。
「では?」
答えは、一つ。
「切らなくていい」
それ以上の言葉は、不要だった。
帳簿は、閉じられたまま。
名前は、書かれない。
記録外。
それが、灰帳連の判断だ。
会話は終わり、次の案件が呼ばれる。
机の上の帳簿は、
最後まで、開かれなかった。




