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始まりの婚約破棄
婚約解消されたのは、9年前の事でした。
彼は13歳、私は11歳。
当時の彼は「もう、君の事が好きじゃなくなったんだ」と睨む様にして言いました。
彼の両親は謝罪をしてくれましたが、私の両親と妹は溜息を吐いて言いました。
「やっぱり。妹と違って美しくも無く、愛想も可愛げもないし、こうなると思っていましたわ」
「ああ。いつもガッカリさせられる」
「……お姉様は、我が家のお荷物ですわねえ」
言葉が棘の様に次々刺さって、私は何も言えずに俯くばかりでした。
家族だけでなく婚約者にも否定されて、私にはもう居場所がありません。
…………誰も私を望まない、誰も私を必要としない…………
ひっそりと、息を潜めて私は家族から離れ、独り自室に籠りました。
家族も使用人達からも、私はいないものとして扱われていました。
涙は涸れて零れません。
胸が痛い気がするけど、布団に潜り込んで耳と目を塞いで耐えていれば、いつか痛みは薄らぎます。
今はまだ痛いけど、惨めさも、ひもじさも、きっと忘れられるから…………