9話 プランニング
カタカナ後って英語とかが語源でこの世界には存在しないはずなんですけど文字起こししたらアホくさくなったので使わせて下さい。
それに変わる固有の言葉があるような物だと捉えて下さい。
語彙力不足を痛感しております。
翌日、朝起きてすぐ荷物をまとめハイネ先輩と物件を探しに回った。
昨日泊めさせて貰った空き部屋は本来応接間であり頼めば使い続けられるだろうがいつまでかも分からない長期滞在なら家や部屋を借りてしまった方が良い。
1時間ほどで選んだ物件は支部から1キロほど離れた小さなロッジである。
高床式な建築で一階建て、デスクとベッド、後はいくつかの物を置けばそこそこ、ごちゃついて見えそうな10畳程度のロッジだった。
鍵を受け取り物を置いたら閉めて支部へ蜻蛉返りである。
支部へ戻ると王宮魔法師団長、ジェシカ・グラウディアが既に顔を出していた。
「お待たせして申し訳ございません。早朝からいかがなさいましたか?」
ジェシカは中身のごちゃついてそうな大きな袋をを手渡してきた。
「これらを商会に売る。契約通り売却金から税とか引いた取り分全て昼までに用意してもらえるだろうか。」
早速仕事である。
「承知いたしました。王宮魔法師団の皆さんはどちらに?」
持ってこようにも俺は王宮魔法師団の仮拠点の場所を理解していない。
するとあらかじめ用意していたであろう紙を手渡してきた。
「ここが仮拠点だ。ムーティアから少し離れているが魔物は到底近づけないので徒歩で来て貰っても安全のはずだ。」
渡された簡易的な地図を見るとムーティアの外、北北東方面だった。
「承知致しました。それではまた準備が整いましたら今度は他の団員さんに向けた挨拶も兼ねて助手のハイネとお伺いさせていただきます。」
一礼して支部の外まで見送った。
「さてやりますか。」
気合を吐き多目的室へ向かった。
ここは基本的に商会の人なら誰もが自由に使えるデスクである。
大抵は自身の部屋すら持つことが許されない新人の溜まり場となるが午前早々だと誰もいない。
袋の中身を広げて鑑定作業へと入った。
大半は魔角鹿の角や毛皮、それとジャウダイルの牙やら鱗やら皮、その他にはいくつかの魔石が入っていた。
質、大きさそこから相場と照らし合わせて正確な価値を算出していく。
算出後は紙に書き記し袋に詰め直していく。
こうして鑑定作業がちょうど終わるタイミングでハイネ先輩が帰ってきたら。
「こちら倉庫へ納入お願い致します。」
袋をポンと渡すと自信は支部の受付へ向かう。
「先程の方の鑑定終わりました。こちらリストと算出した料金です。お相手が午前中に必要とされてましてすぐお金をご用意できますでしょうか? 」
品物確認は受け取り時終わっているため金庫から必要金額をすぐに引き出してくれた。
倉庫へ向かったハイネ先輩の方の応援に向かった。
「ハイネ先輩! この後王宮魔法師団の皆さんのところへ今回の売却金を持っていくついでに挨拶に向かいます。
後どれが残ってますか?」
「了解です。後は魔角鹿の角と毛皮ですね。」
角と毛皮で分かれて収納させチェックをつける。
最後に員数管理を済ませて前日の分と合わせて受付に提出、これで全体数の更新完了である。
「ではこの足で向かいましょうか。」
地図を握りしめて支部を抜け街を抜け門を抜けその先で一瞬で理解した。
森へと続く道路の横に豪邸のような例の仮拠点が建っていたからだ。
「多分あれです。」
「多分そうですね。」
近づいてみると何やら音が聞こえてきて建物をぐるりと回ると演習らしきものが行われていた。
「次! 攻守反対! 始め! 」
恐らくジェシカと思われる声だが今朝まで聞いてた声とは別人かのような遠くまで通る声である。
演習が1段落付くまで2人で観察することにした。
防衛側は椅子周りに3人固まっており対して攻め側は9人で立て続けに魔法を撃ち続けていた。
結界、攻撃魔法による相殺、物理的防壁など様々な方法を使って耐え忍んでいる。
やがて耐えきれず結界の瓦解と同時に椅子が木っ端微塵に吹き飛んだ。
「止め! 防衛側ペナルティ! 結界膨押! (結界の範囲を次第に広げ続け合って結界の縁で押し合う行為) 」
ここだと判断して挨拶する。
「商会ギルドの者です。少々お時間よろしいでしょうか?」
「集合! 」
号令に合わせて一斉に集まった王宮魔法師団から圧を感じた。
「指名をいただきました商会ギルドのクーネルです。」
「クーネルの助手を務めるハイネです。」
一礼をするも沈黙が刺さって痛い。
「ベスティ・ハーネル! 前へ。」
「はい!」
「君には商会ギルドと直接やり取りしてもらう。君が責任者だ。」
「はい!」
「では第一陣小隊、前へ!1人ずつ挨拶!」
「ボルティ・マクシモアです。よろしくお願いします。」
「クティア・カセドラです。よろしくお願い致します。」
「カトゥン・フレドラです。よろしくお願いします。」
「ボイル・マクマホンです。よろしくお願いします。」
「ウルティ・マクマホンです。よろしくお願いします。」
「カーズェア・グラファイトです。よろしくお願いします。」
「モーリアス・ムーティアです。よろしくお願いします。」
右から左へテンポよく名前が紹介されていく。
一回では到底覚えられそうになさそうだ。
「そして私が団長を務めさせていただいてるジェシカ・グラウディアだ。よろしくお願いします。」
8名全員の挨拶が終わるとジェシカとベスティを残して解散となった。
すぐさま散って各々が朝の鍛練へと戻る。
「ではベスティさんこちらが今回の売却金と控えになります。」
仕事モードでお金と羊皮紙1枚を手渡した。
「はい。受領致します。」
「今後もしそちら側で売られた場合このように紙にまとめて控えを我々に渡してください。
商会ギルドを通す場合でしたらこちら側でご用意させていただきます。
そしてそれら控えは年始に一度照合致しますのでその時になったら一時的に提出をお願いいたします。
後は紐で纏めておいて紛失なさらないようお願い致します。
必要物資等ありましたら商会ギルドの受付で私の名前と内容を伝えて頂ければその分ご用意させていただくので品物受け渡しの際にお支払いお願い致します。
ご不明な点がございましたらお気軽にご相談ください。」
一通りの説明を話し終えると一礼だけして仮拠点から去った。
街に戻るとちょうど昼時になっていた。
「ハイネ先輩どこか食べに行きますか?」
ただなんとなく誘ってみる。
「いいですね。せっかくですしどこかお店探しましょうか。」
軽く見渡し大衆食堂のお店があったためそこへ入る。
パンと1週間限定メニューというスープを頼むことにした。
「自分ミネストルコフィとパンで、先輩は何になされますか?」
「…………同じ物をお願いします。」
熟考の末同じ物を頼むことになった。
運ばれてきたのは黄色い汁に赤い果実のような何かが入ったスープにパンだった。
軽く一口、何か既視感のある香りがしたが濃いスパイスの香りでどの香りかが特定できない。
味はスパイシーな甘めのスープである。
甘くスパイシーなのにコクが深くどこか懐かしさすらある。
「……クーネルさんどうかされました?」
「え、あぁいや美味しいですねこのスープ甘いのにスパイシーであっさり系なのにコクがあって……。」
「この後のご予定は?」
「ひとまずこの地域の植生、鉱石等の資源をギルドで確認してから王宮魔法師団に提示するプランニングの用意とこちらが持ってきた商品の売却計画を立てましょう。
それらの資金を用いて魔法師団とギルドを介さず直接売買できるようにしてそれらの売却時のイニシアチブを確保しましょう。」
ギルド金庫から取引先に購入額を手渡した場合購入の品が高値で売れたとしても購入者には反映されない。
ギルドの所有になるからだ。
だが職員が個人で金を支払った場合はその物が産む収益の30%をギルドに納め残り70%がこちらの取り分にすることができるのだ。
そこから所得税が引かれるとはいえギルドを介す介さないは最重要事項である。
「では私はキュレーションペーパー(情報を纏めた書類)を作成しますね。
他に何しましょうか……。」
「……そうですね。ペーパー作成後で良いのでプランニングの補正について相談させて下さい。……後は一旦ベスティにどんな素材が必要か聞かないといけませんね。それが地元で用意できるかできないかでもプランニングは変わってきますしね。」
ある程度話し合いも終わり立ち上がり会計を済ませてギルドに戻った。
ギルドに戻ってからは書類をかき集め情報収集とプランニングの作成作業に当たった。
その間頭が冴えた感覚を覚えた。
まるでコーヒー取った20分後のような全能感に似たこの感覚、とても懐かしい。
ひと段落ついて外を眺めるとかなり日が傾いておりあっという間に時間が過ぎ去っていった。
完成した頃にはもう真っ暗、夜の9時過ぎであった。
「……っし! 終わりです! ハイネ先輩お疲れ様でした。」
「お疲れ様です。」
ギルドももう閉鎖する時間帯であり慌てて後にする。
「では明日ベスティ・ハーネルさんをお呼びしますので朝一で応接間の使用許諾をよろしくお願いします。」
「承知しました。では向こう側の望む品もその時に? 」
「えぇ、それを聞いた上でこのプランニングを補正して王宮魔法師団に利益を出して貰いましょう。順当に運ぶ流れになったら真っ先にサーベイスギルドの支部長へアポイント取って商談ですね。」
ギルドの玄関先で軽く明日の流れを打ち合わせる。
「ではまた明日。お疲れ様でした。」
「先輩! お疲れ様です。」
ロッジへ帰宅するとまず水を用意して服を脱ぎ去り身体を拭いていく。
拭き終わると髪を丁寧に揉み洗いして終わったらタオルでしっかりと水気を切った。
明日に匂いが残らないようにする必要がある。
次は靴磨きである。
湿った布で泥はねを拭き取っていく。
商談用の準備も整え終わるとようやく夜ご飯だ。
といっても本来ムーティアへ向かう道中に食べるはずだった保存食が残っているためそれらを食うだけだ。
食べ終わると疲れ切った身体が突如シャットダウンしたかのように眠るのだった。
誤字等あればご協力よろしくお願いします。