表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の喫茶店  作者: 睡魔ASMRer
0章 転生を通しての渇き
8/17

8話 ムーティア道中記4 到着

 プロローグ長すぎて喫茶要素皆無なの虚しきかなでも描かないといけないから逃げられないんだよね。

 5日目、朝を迎えた。実は残り130キロメートルほどである。

 明らかに順調だった。

 朝食を済ませると片付け前にボーガン・グラファイトが全員を招集させた。

 「知っての通りかなり順調だ。このままのペースを維持すれば6日の夜に着くことも可能だろう。できればそうしたい。

 夜間は危険が伴うが今日はいつもより1時間、明日は到着するまで進むことにする。

 そのためベスティ、君もシフトに混ざり休息を取りなさい。代わりに今日はしっかりと歩くこと。」

 「はい!」

 「それと商会ギルド側、積荷整理の時間を取る代わりに最初から荷車の中に乗車願えるだろうか。昨日の様子では半日もすれば昨日の疲労込みで付いてこれなくなるだろう。」

 「承知いたしました。」

 本来こういう輸送では商人は荷車の中で護衛が外である。

 だがあいにく乗る場所もないほどに荷車に積み込まれている。

 整理もすでにこれ以上できないほどにされているため乗り場を確保することができなかった。

 果たして丸太の上が乗り場となってしまった。

 「いやしかし凄い量だな。あれらは一体何に?ついでの輸送ですか?」

 ボーガンの問いかけに笑いながら答える。

 「ついでの商売です。商人は利益だしてなんぼですから。」

 「それもそうだな。こうして話してる分には君が首席とは思えないよ。」

 笑って返された言葉にベスティが何か言いたげにうずうずし出したのを見て俺は笑った。

 「魔法抜きでベスティを負かせたのは知っている。君を卑下するつもりはないよ。」

 ボーガンもベスティの反応に気がついたのかそう追加で返してくれた。

 ここでベスティの評価が気になった俺は質問することにした。

 「ベスティって実際どれくらいの評価なんですか?優秀なのかそうでもないのか彼女が上手くやれているのか少々気になりまして。」

 「ち、ちょっと!?」

 顔を真っ赤に何か訴えているベスティを無視して答えを促した。

 「そうだな……一年通してわかったことは魔法の基礎が積み上げきれてない割に実力がある方だ。

 基礎さえ盤石にすれば王宮魔法師団の大半を実力で抜かすポテンシャルは持っていると思う。

 基礎の部分は生まれの都合だろうな……これで王宮魔法師団の合格ラインに届くのはシンプルに驚異的だ。」

 尊敬の眼差しをベスティに向ける。

 真っ赤な顔を背けてしばらく口を聞いてくれそうにはなさそうだ。

 「まぁ基礎がダメダメだからな。悪いがムーティア到着後は徹底的にしごかせてもらう。覚悟しておけ。」

 アウスガルド学院では確かに魔法論理や実践がほとんどで基礎は最初の1単位以降学んでいなかった。

 「……はい! 」

 ムーティアまではほぼこの川沿いを進む感じになる。

 道中、第一陣が付けたと思われる車輪跡が見つかった。

 明らかなぬかるみが増え出し、ここら辺から明らかに湿度が急激に上がった感じがする。

 ふとここであることを思い至り周りを見渡す。

 南部の街、ムーティア以南には500キロメートルに渡り熱帯林のような地形が広がっておりムーティアより北部100キロ前後で年間の湿度平均が15%も違うというという調査結果も出ている。

 降水量も文字通り桁違い、熱帯雨林気候というには最低気温が低いと思うがそれでも15度を下回ったとする資料は見当たらない。

 ここでなら……。

 俺は1つの植物を頭に過らせた。

 狂ったコーヒー好きが調べに調べた結果絵まで描き暗記し植物分類のまで完璧に丸暗記してる植物、ドメイン:真核生物→界:植物界→被子植物→真正双子葉類→キク類→目:リンドウ目→科:アカネ科→属:コーヒーノキ属。

 4亜属66種類もある通称コーヒーの木、初めて調べた時はキクだのリンドウだのアカネだの知ってる木とは無縁そうな花の名前がポロポロ出てきて驚いたものだ。

 例え写真がなくとも図鑑がなくとも他の植物とは見分けられるそれを目をかっぴらいて探す。

 「どうかされました?」

 パイル・セネドラが俺がキョロキョロし出したのに気がつき尋ねてくる。

 「いえいつの間にか、植生が変わったなと思いまして……。」

 はぐらかしたが結局コーヒーノキが見つかることはなかった。

 「何か採取とかしていきますか?」

 提案こそされたがこの辺ならムーティアから依頼だすか馬に乗って採取に向かった方が良いし何より荷車にはもう乗らないため断った。

 日が暮れるとクラウド・エフ・フォーリアが魔法で灯りを灯し先導し始めた。

 「ここから1時間、交代なしで前進する。」

 魔法での明るさはかなり明るく直視すると下手すると失明のリスクがありそうだ。

 「クーネル氏、ハイネ氏、決して光球を直視せぬようお願い致します。

 例え失明しても責任取れぬ故……。

 まぁ失明しても初期段階ならヘリヤが治せますけどね。」

 「ちょっとそこ人任せなの酷いっす! 」

 ヘリヤ・コーネリアが勢いよく突っ込む。

 「ごめんねぇ公爵の出来損ないなもので基本系しか魔法使えないんだ。魔法系統で得意不得意はないんだけど発展系が皆無なんだ……器用貧乏なもので……。」

 自虐が癖ついてる割には何故か自信にありふれてそうな芯を感じさせる発言に違和感を覚えつつも周りの景色を眺める。

 照らされた木々、それらに阻まれ一寸先の闇、その闇に浮かぶ……目。

 照らされた森は潜んでいた魔獣達を映す。

 王宮魔法師団のおかげで襲ってくることはないが途中で数えるのを諦めるほど森中に潜んでいたようだ。

 「よしここで野営する。各自準備! 」

 いよいよ最後の野営が始まった。

 ここから先の道は川から離れた道路のためジャウダイル肉も今後食うことは無くなるだろう。

 夜になり自由時間にコーヒーノキの絵と説明を事細かく描くことにした。

 全体像、葉の形と特徴、花の形と生え方、果実の形とサイズ感、断面図書けうる限りの情報を書き込んだ。

 名前以外の全ての情報は書き込んだつもりだ。

 南部が思っていたより熱帯雨林間あってワンチャン近縁種でもいいから見つかって欲しいものである。

 書き終えたところで寝ることにした。






 6日目、今日中にムーティアに到着する予定である。

 予定は未定というがここから辿り着けなくなる未来が見えない。

 今日も丸太上で自然観察の時間で他に特に何かできるわけもなく夜9時頃になりようやく到着したのだった。

 何事もなく一安心である。

 初めて見る街は思いの外大きかった。

 分厚い木製の壁でぐるりと覆われており高さ3メートルはある壁の高さを超える建物がいくつも散見されたからだ。

 ムーティアに着くなり忙しくなる。

 まずは商会ギルド支部に書状を持って報告、その後第一陣の面々との挨拶、さらにそこから積荷の荷卸しが待ち構えている。

 ひとまず馬と荷車を預けに商会ギルド支部へと向かいあれやこれやと手続きも済ませた。

 所属が本部から支部へと移る都合上書類を書いて提出する必要があるわけだ。

 荷車は支部敷地内の倉庫前に運んでハイネ先輩と支部からの応援を募り既に収納を開始してもらっている。

 次に馬小屋管理人にご挨拶をして厩舎を案内してもらう。空きスペースが少ないためか5頭ともバラバラになってしまった。

 5頭全員にお疲れ様の意味も込めて様々な野菜をバケツでプレゼントしておいた。

 お次は挨拶回りだ。

 待ち合わせ場所へ向かうと街の入り口へ向かうと第二陣小隊と見知らぬ誰かが話し合っていた。

 「……お待たせして申し訳ございません。ご指名頂いたクーネル・ボスティマフティアと申します。

 助手のハイネには早速働いていただいてるため後々ご紹介させていただきます。」

 「君がそうか。私は王宮魔法師団、団長、ジェシカ・グラウディアだ。今しがた君の話を伺っていた。うちの女隊員全員が親溺愛変人として解釈していたよ。一体何を語ったんだい?」

 うん、とても気まずい。

 「ヴァーミリオン公爵のスカウトを蹴って1商会に入ったことですね。

 親が例え亡くなったとしても業務を引き継げる人材になるべく商会ギルドにて日々勉強させていただいております。」

 この一年で自身に叩き込んだ営業スマイルを披露した。

 「そうか。王宮魔法師団以外は家柄重視権力社会だというのにそのスカウトに見向きもしないとはなるほど。確かに変人だな。」

 その後軽く王宮魔法師団の作戦内容を話してもらった。

 まず揃った王宮魔法師団から精鋭を更に選りすぐり大臣を隣国まで護送する部隊とここで王宮魔法師団が活動する拠点を得るために活動する部隊に別れるとのこと。

 そして自分が関与するのは無論後者である。

 護送にサーベイスギルド支部から現地民を募りそういった人達にポーション等を売買、それらを活動準備のための資金として王宮魔法師団の建物を建設まで行うとの内容だった。

 「つまり私は必要金額が貯まるまでをサポートすればよろしいですね。

 こちらとしてもそちらの売買に必要な原材料等の用意など最大限ご協力させていただきます。」

 大体の道筋が分かったので今後取り組む方向性も見えてきた。

 「そうか。必要な物品等があればそちらに依頼させていただこう。よろしく頼む。」

 こうして挨拶回りはひと段落ついた。

 走って商会ギルドの倉庫へ向かう。

 到着するとそこでは4人がかりで荷卸しをしていた。

 「ハイネ先輩、現状は?」

 「クーネルさん、こちらが今倉庫へ運んだ物でこちらが今運んでる物、こちらがまだ数合わせ行ってない物品になります。」

 リストを受け取り確認する。

 全体作業量のちょうど3分の1といったところだった。

 的確に指示を飛ばしながら自身は数をまず合わせていく。

 確認後は種類別で収納するだけなのでバケツリレーの輪に入り素早く収納していく。

 収納後は最後に員数管理を行い数字を反映させて業務終了である。

 終わった時間は11時過ぎ、手伝ってくれた職員3人にチップ程度の謝礼金を手渡し深く頭を下げた。

 その後は商会ギルドの部屋を一部屋借りて2人相部屋で就寝することにした。

 誤字等ございましたらご協力よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ