10話 知っている
短めです。ようやく距離感描写書き始められたけどまだまだ遠いですね。
毎日投稿してるような人達化け物かな?(毎日投稿挫折中)
翌朝早く、ギルドへは向かわずに直接王宮魔法師団の仮拠点へ訪れた。
ベスティを呼び出し彼女をしばらく借り受ける。
プランニングの説明から同意の有無、同意の場合聞き取りとその後にサーベイスギルドとの商談に参加をしてもらう必要があるからだ。
「……というわけでジェシカ王宮魔法師団長殿、ベスティ・ハーネルを「あぁその件なら今後は私の同意なく彼女を直接、好きなだけ借りていくと良い。」
てな感じで軽くあしらわれたので一礼だけしてベスティの元へ向かった。
ベスティは眼前で岩を魔法で上げ下げしながら自身も岩を背負いスクワットしていた。
ベスティの身体からは強化魔法と思われる紋様が見えている。
足元には汗でできた湿りが確認できてこれがどれだけ負荷のかかる鍛練かを伺えた。
とりあえず姿だけ晒して彼女の自主鍛練が終わるのを待つことにした。
10秒ほど立つとようやく俺に気がついたのか2つの岩を落っことし慌てふためきだす。
「プランニングをお持ちいたしました。今お時間よろしいでしょうか。」
「え、あ、よ、よろしくないです。ちょっと待ってください! 」
顔を真っ赤にし慌てふためいて仮拠点内に入っていくのを見届けた。
10分ほど待つと戻ってきて漸く話し合える体勢が整った。
先程までの汗は一体どこへやら、綺麗さっぱりまるで一風呂済ませた後のような様相で戻ってきた。
汗臭さの欠片も感じさせない。
「こちらがプランニングとなります。ポーション等の売却もそうですが魔物素材を中心とすると資金を集めやすいという結論に至りました。
中でもこちらの魔獣達は一介の戦闘職では歯が立たず素材の価値が高いです。
またこれらの肉も市場価値があり高額で売れます。
市場に出回ってるこれらの素材は名のある戦闘職が狩ったものか野生下の死体を解体して手に入れた物で中には傷んでる物も出回ります。
王宮魔法師団の過剰戦力であればこれらの綺麗な状態での素材回収は容易でありかなりの収入が見込めます。
そして近辺の地価相場も調べて参りました。
大体1ヘクタールあたりの相場の差を地図に落とし込んだのがこちらになります。王宮魔法師団の皆さんの任務的にも地価的にも街の外側、色のついてない範囲の空き地はこことここ、後空き地ではありませんが空き物件がこことここ、不必要だとは思いますが業者をお探しでしたらギルドで押さえることは可能です。
これらもサポート範囲内なのでご安心ください。
もし先ほどの所で建てるとして目標金額の見積もりが大体このくらいになります。
ここまででご不明な点などございますでしょうか?」
前日に夜遅くまで行った調べ物と詰め作業の結果を一気に話し込んでいく。
プランニングの紙に書かれた内容を一通り目を通した後しばらく考え込んでいる様子。
1分間の沈黙の後言葉を発した。
「サポート範囲内と言ったわよね?範囲外は?」
口調がいつもの仲に戻って少し威圧感すら感じる。
「まずブランドは範囲外です。要はネームバリューですね。
そちらの売買で例え王宮魔法師団の名声に傷がついた場合、まぁ付かないようにこちらも無償でサポートはしますが付いてしまった時の損失に関してはサポート外です。
また購入した土地等に曰くが付いていてそれによる損失に関してもサポート外になります。
次に追加物資ご購入の際に物によっては他の街から取り寄せる場合がございましてその際に不手際、まぁ魔獣や盗賊に襲われてしまったりして届かない場合ですよねそれらにはサポートできません。」
「……。」
再び沈黙が続く。
また1分ほどしてからベスティが口を開いた。
「分かったわ。それで行きましょう。
1週間以内にここを買って建築を開始するわ。建築士と建築業者用意してもらえるかしら後それら込みでの見積もりはおいくらかしら?」
持参しているメモ用紙に式をいくつか書き速やかに計算していく。
「金貨10枚あればいけるかと……。」
「一千万ガルドか……。」
「建築に業者通さなければもっと安く済みますね。」
「通さなくて良いわ。」
「であれば金貨8枚以内に収まりましょう。」
建物の地価と材料費を引いた大半は人件費でできている。
「ぼったくるつもり?」
「まさか、集めるのは王宮魔法師団の皆さんで我々はそれの補助です。契約金以上は頂きませんよ。」
ベスティは目に見えて苛立ちを募らせていた。
「ねぇ! なんで他人かのように振る舞ってんのよ! 」
反応に困る……そういえば仕事だとなんだと割り切るのは前世の影響だろうか。
「仕事って理由じゃいかんか?」
「そんなに堅苦しいと私が貴方を推薦した意味がないじゃない。」
「課長にも言われた、堅苦しいと……。」
息抜けと言われてもそういえばやり方を知らない。
前世から真面目な性格ではあったがスイッチの切り替えは下手だという自覚はあった。
「この顔だけ人でなし! 」
「うっ……。」
人でなし、懐かしい響きだ……親父が死んで親族に浴びせられた罵声がそれだったのを覚えている。
仕事に執着して死に目にも会いに行かないのは何事だ! 人でなし! 親不孝! それは葬儀が終わってからも続き、後悔と合わさり心身に深い傷を残すことになった。
精神を病みそれを紛らわすかのようにリストカットをし始めた……。
もう過去のことだ……蓋をした辛い過去を思い出してしまった。
「あ、ごめん責めるつもりはないの。ただ親身になって欲しかっただけなの。」
あぁ知っている、君は自分を責めても人を悪くは言わない。
よく知っている、君は辛気臭いのを嫌うことを……。
「いや悪い。ここは1つ、フランクにいこう。
まずこのプランの補足だがブランド力勝負なら皮類は鞣して革素材として売る方が高く売れるし買い手が付き安い。
これは鞣し方を書いた本だ。君に渡すからやってみると良い。
無理そうなら俺らがやろう、ただしその分安く買い取る。
ここへ来るときに積荷に確かファーファーラットの毛皮を持ってきてたはずだ……昼頃に届けるからそれで練習してから実践してみると良い。」
ファーファーラットは王都周辺にうじゃうじゃ生息している毛むくじゃらのネズミのような獣でこいつらの毛皮はよく市場に出回っている。
ここら辺には生息してないためマットとしての材質的価値を見込んで積んでおいたのだ。
「私、貴方が居ない間は鍛練か素材収集に駆り出されてるから鞣してる余裕は夜以外ないかもね。
他の団員にも相談してみるわ。」
「……。」
ここで1つ話すか悩む内容が出てきた。
それは超個人的商談だ。
絵に描かれた植物を見つけられたら高く買い取る、ただそれだけの商談だがそれは莫大な富を産む可能性を孕んでいる。
悩んだ末に提案しないことにした。
「あんた隠し事?黙るということは商談関係ないのかしら?」
速攻でバレた。流石は首席の俺を追い越そうと次席から俺を狙っていたのは伊達じゃない。
「これは別に商談とかじゃないんですけどこの植物探してましてね。
見つけて下されば情報だけでもと思いましてね。」
これはムーティアまでの6日間のうち5日目に書いた物である。
「これは?」
「実在するかわからない植物です。」
呆れた顔を向けられる。
「それで黙ってたのね。いいわ。学友の頼みなら聞き受けましょう。」
「あ、いや別にそういうのじゃないんですけど……。」
得意気っぽい表情だったのが一気に睨まれたので引き下がる。
「あんたは座って果報でも待ってなさい!
てかこれは別に金になるわけじゃないのよね?」
「おそらく……。夢で見た謎の木です。」
夢にが正解だがあながち間違ってはいないだろう。
「じゃあついでね……。」
どこかしょんぼりするベスティに俺は振り回されっぱなしだった。
誤字等あればご協力よろしくお願いします。