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異界の喫茶店  作者: 睡魔ASMRer
0章 転生を通しての渇き
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1話 珈琲好きの敗北者

 恋愛ものに挑戦します。

 ですが序盤は恋愛ナニソレオイシイノ状態が続くので転生話としてお楽しみ下さい。(楽しめるとは言ってない)

 誤字脱字多いかと思いますが見つけ次第ご報告よろしくお願いします。

 朝の日差しが瞼に刺さり俺は重い頭を持ち上げた。

 朝、朝といえば珈琲、目覚めの後、脳を覚醒させるにはもってこいの一杯。

 香り良し味良し効能良し、言うことなんて手間くらいなものだろう。

 トースターに食パンを差し込みレバーを引き下げる。

 そして豆を買ったその日に一杯分ごとに真空保存している個包装を戸棚より取り出してフライパンに敷き詰めた。

 弱火でじっくり香り立たせる煎りの時間である。

 薄茶色の豆はみるみるうちに黒くなりパンが焼ける頃には誰しも見たことある黒豆へと変貌を遂げる。

「今日は深煎りするか……」

 俺以外誰もいない空間に独り言を残し、かき混ぜながら香りを愉しむ。

 恋愛なんて無縁の人生、でも珈琲さえあればそんな穴なんて気にならなくなる。

 とても優雅な生活を満喫していた。

 煎った豆を冷ましている合間に朝食を済ませておく。

 「いただきます。」

 1人の空間に再び声が響く。

 社会人の朝はこうもゆっくりはしていられない。

 先々月までは自分もその立場だったからこのゆったり感には何にも変え難い幸福感を感じている。

 会社に雇われたライター時代を思い起こされる。

 書いて書いて書いて書いて、時には家でも仕事を続けてた時もあった。

 評価、実績、それらに取り憑かれるように働き続け、俺は心身ともに限界を迎えた。

 ゆとりのある生活を送りたい、その想いは社畜の頃からの相棒であった珈琲へと向けられ今は自分の店をオープンさせるために喫茶店でアルバイトをしつつ出店準備中である。

 俺は食べ終わった食器を手に豆のところへ向かった。

 いい感じに手で扱える温度になったためいよいよ豆を挽いていく。

 ミルのツマミを回して荒目にセッティングする。

 蓋を開け豆を一粒残さず詰め込み蓋を閉める。

 ゴリゴリゴリと小気味良い音を立てながら豆は粉へと変わった。

 コンコンとミルから取り出したケースを叩き、できた粉をペーパーへと移す。

 魔法瓶には程良い熱湯が用意してある。

 コップの上にスタンドを立てその中に粉入りペーパーをセッティングする。

 ゆっくり「ノ」を描くようにお湯を注ぎ回す。

 1度満タンに注いだらそっと手で蓋をして軽く蒸らしておく。

 充分蒸らし終えたら今度は抽出容器の大体7割前後を維持するように回し注いでいく。

 コップの半分まで入る頃に再度手で蓋をして粉を蒸らす。

 後は8、9割でもいいので注ぎ続けて完成である。

 器具を片付けるついでにキッチンに引っ掛け、飾られている御守り代わりのネックレスを手に取り首に回した。

 喫茶店に働きに行く際は必ず身につけるようにしてる代物である。

 1人の変な女性客からもらったもので、中央の石の色が青ベースということもあり幸運の御守りということで勝手に解釈して使い出したものだ。

 出来たコーヒーを手に持ち、俺はリビングの窓辺に置かれたロッキングチェアに腰を下ろした。

 座って一息吐き、まずは香りを堪能する。

 確か珈琲の香りにはリラックス効果があり、寝る前に嗅ぐと寝つきも良くなるのだとか。

 飲んでしまってはカフェインで目が覚めるのであまり実用的ではないのだが1日の始めにリラックスできるのはとても有意義である。

 そして口に含み酸味混じりの苦味、濃く、深み、そして微かな旨味をも感じ、堪能する。

 喉を通った後の鼻から抜ける呼吸に乗った風味さえも堪能する。

 半分ほどまで飲み進めた頃に椅子隣にある小さなテーブル上のカップを近くに寄せた。

 カップには角砂糖が所狭しと入っておりこれを一粒、コーヒーへと落とした、

 糖は脳の原動力、カフェイン込み込みで相性抜群なのだ。

 酸味、苦味、微かな旨味に甘みが追加され更なる満足度を得る。

 これで今日1日頑張れる、そんな原動力がこのルーティンにあるのだ。

 スマホを開くとメモ機能が目の前に開かれ直後、現実へと無理矢理、引き戻された。

 (そういえば昨日、たんぽぽコーヒー試作した際のレビューしようと文字起こしてる途中だったな……。)

 そう、俺は3年ほど前からライターという職業柄を活かし、珈琲が相棒になった日を境にレビューワー的な活動を趣味として行っており1日3000人ほどの人が俺が過去に投稿した何かしらを見てくれていて、それなりにやりがいを感じている。

 がしかしコーヒー豆を使わず作るコーヒー、たんぽぽコーヒーに手を出したが最後、悪夢のような後味を俺は味わっていたのであった。

 採取したたんぽぽの根はおそらく糞尿を吸い育ったせいで蟻酸で歯がギシギシに鳴り、強烈な酸味、渋み、土の風味、製法をどこか間違えたのではとすら疑う代物が出来上がったのだった。

 (あれは何かの間違いだと思いたい。しっかりと作れればこんなものじゃないはず。ひとまずの初見の感想だけ投稿してリベンジを誓うべき。たんぽぽって確か外来種と在来種の2種あったような……。両方試して尚且つ糞尿無しと断言できるもので再度試すべき。)

 そう固く決意を固め前日に書いてた物の添削作業を開始した。

 嫌な思い出を塗り消すように添削作業はみるみるうちに進んでいく。

 それは昼前にセッティングしたアラームが鳴るまで何一つ雑念が過ぎらないほどであった。

「昼……か。」

 過ぎ去る時の早さに気怠さとどこか心の穴を感じつつも俺は投稿だけ済ませて職場へと向かうべく立ちあがった。

 直後、身体の異変を感じとった。

 (っ……頭痛?それに睡気まで……珈琲飲んだのに何故?出店するためにも働かなきゃいけないのに……身体が重い……。)

 重い足取り、玄関まで延々と距離が縮まってないのではとさえ思えてくる。

 後2、3歩で玄関というところでついに脳が限界を迎え倒れ伏した。

 やがて瞼が重くなり次第に意識が遠のく。

 視界が真っ暗になる直前淡い青白い光が映った気がした。

 動かない体はまるで他人の体となったようなそんな感覚、やがて考えることすらままならなくなりだす。

 ついに糸がプツンと切れるかの如く佐藤 健太の意識はこの宇宙より隔絶されたのであった。

 1人の女性の足元にて……。


 目が覚めた時には見知らぬ地、見知らぬ言語、見知らぬ家族の元に生まれていた。

 異世界転生、ありきたりな話だがこれは宇宙を跨いだ恋愛の話である。

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