09【明け】
日出はみんなに活力を与える
生き物を目覚めさせ
植物を育て
空を温める
明日を今にして、今日を伝える
日没はみんなに静けさを与える
生き物は安らぎ
植物は眠り
空は遠くの景色を映し出す
今を昨日にして、明日を伝える
山頂で地平から昇る太陽を見た
暗い影で覆われた地上が、本来の色を見せ始める
頭上を覆う青い空
漂い揺らぐ白い雲
茂って枯れる緑の森
暗くて何も見えなかったけど
どんどん色が濃くなっていく
どんどん光に照らされる
暗くて見えなかったものを、
朝日はどんどん照らしていく
日差しに暖められた肌が、自分のことを知らせてくる
地面で伸ばす自分の脚に、雪が積もっていることを
膝元に置いている自分の手に、珈琲が握られていることを
石の上に座る自分の周りに、他の人がいないことを
新しい今日の訪れとともに、私は珈琲を一口飲む
無事に訪れた今日を眺めて、昨日のことに思いを馳せる
空に昇る太陽を見た
天井で光る白色の太陽が、地上に活力を与えていく
地面を彩る多様な花
餌のために放浪する鳩
せっせと仕事をするハチ
生き方はそれぞれ違うけど
みんなが必死に生きている、みんなが手を取り合ってる
活力を貰った生き物たちを、太陽はずっと照らしている
日差しに照らされた庭が、今のことを知らせてくる
庭で咲くエリカの花が、今の季節を
庭で歩くカワラバトが、今の天気を
庭で飛ぶミツバチが、今の時間を
今日の日差しが届かない部屋で、私はキャンバスに庭の絵を描く
今日が昨日になる前に、今日という今に筆を執る
地平に沈む太陽を見た
活気付いていた地上が、ゆっくり眠りについていく
路地裏を流れる川のせせらぎ
暗闇から響く何かの声
無意味に流れるテレビの報道
暗くて何も見えないけど
電球が私を照らしている、電球が安心を与えてくれる
静まり返った地上の一部を、電球はこっそり照らしている
静かに照らされた部屋の中で、明日の声が聞こえてくる
路地裏のせせらぎが、明日の自分を
暗闇からの声が、明日の出来事を
部屋で流れる報道が、遠くの未来を
今日を続ける日向の中で、私はゆっくりミルクを飲む
必ず来るはずの明日を夢見て、描いたキャンバスに思いを馳せる
私は今日も、珈琲を片手に山に登る
日の出と共に山を下り、日陰の部屋で今日を過ごす
日が落ちれば電球を灯し、日向の部屋で今日を続ける
今という日を繰り返す度
昨日が増えて、明日が減る
残された明日はあまりに少なく
忘れた昨日は多すぎる
だから私は、今日も今を描いていく
いつかこの手が動かなくなるまで
一瞬前の昨日を描いていく
春の日向に舞う桃色の花を見た
夏の太陽に向く黄色の花を見た
秋の風に揺れる橙色の花を見た
冬の積雪に負けない白色の花を見た
キャンバスに描かれたその花たちが
昨日を伝え、明日を見せる
私は今日も筆を執り、目に映る今を描いていく
明日が来ることを願いながら、昨日に思いを馳せていく




