木こりの息子とその恋人
森の入口に、木こりの家族が住まっていた。木こりの息子が木を切るために森へ入ると、泉の辺でなにやらきらりと光るものがある。近づいてみると、それはそれは美しい首飾りだった。木こりの息子はそれをかくしへ入れて家に持ち帰った。
「みておくれ、なんてきれいな首飾りなんだ」
息子は、ポケットの中から宝石を出した。
「おまえ、これをどうしたんだい?」
母親が尋ねる。
「森で見つけた。泉のそばさ」
「泉のそばだって。お后さまがこれに似た首飾りを探しているそうだ。これがそれにちがいない。お后さまは先日、あの泉で水浴びをしてらっしたから」
父親はそう言うものの、息子はこの宝石をどうしても手放したくない。
木こりの息子には恋人がいた。彼女の口数は少なかったが、彼女は木こりの息子を愛していた。
「どうしたらいいのか分からないんだ」
「私の愛しいクレートテース、盗みはよくなくってよ」
「君がそういうのなら、お后さまにお返ししよう」
木こりの息子はお后さまにお目通りを願い、父親と母親を連れてお城へ行った。
「そなたらが私の首飾りを盗んだのだ。この者たちを捕らえよ!」
お后さまは木こりたちを盗人と勘違いした。
「妻や息子に責任はありません。私は彼らにひったてられたのでございます!」
「この宿六が悪いんでございます!夫は昔から手癖の悪い人でしたから。剣の刺さった樽に押し込めて、転がして泉に沈めてやるのが似合いでございます、閣下!」
木こりの親子はぶるぶる震えていた。あんまり震えていたので、お后さまは面白くなっておっしゃった。
「よかろう。この男を捕らえよ。そして、妻の言うように樽に入れて沈めよう」
「当然です、当然でございましょう!お賢い判断でございますわ、閣下!」
お后さまは、ちらりと木こりの息子に目をやると、
「息子には兵役を命じよう」
とお言いになった。母親は失神した。
木こりの息子はお后さまの命で大きな樽を作らされた。父親を入れるためのものだ。そして、次の日に父親は息子の作った樽に入れられた。樽は剣で串刺しにされてから転がされ、水に沈められた。母親は夫が入れられた樽を追いかけて、共に沈んだ。
息子は解放されると、恋人のもとへ行った。
「デーモーニよ、僕と結婚してくれないか。僕はもう一人ぼっちなんだ」
恋人は優しく木こりの息子の頬をなでた。
「嫌だと言わないんだね」
今では木こりは町の工場で雇われていた。妻との間には天使のような子どもが二人いる。
「彼は僕に親切にしてくれたし、厚意を裏切るわけにはいかないんだ」
妻はそっと、夫の頬をなでる。
「駄目だと言わないんだね」
次の日、夫は、妻や子供たちに別れも言わずに工場へ行った。そして、二度と戻らなかった。
「ねぇ、かあちゃま。とうちゃまはどうしてお帰りにならないの」
「とうちゃまはね、自分が本当に正しいと思うことをしたのよ」
この先は、残念ながらわたくしにはわかりません。鶏が鳴いてるよ。ヒバリも歌ってる。さあ、いそいで急いで、お日さまが顔を出す前に、あなたの可愛らしい頬っぺたにキスをしなくては!