◆ 8・歪が生むモノ(中) ◆
殺し合って、見せ合って――初めて本当の友達になれた気がした。
でも……先輩たちとライラの違いはなんだろう? なんで気付いた人と気付かない人が出たんだ?
「お前は……俺が家族の死によって大量殺人犯になったと言ったな?」
「私が見た限り、そうですね」
応じれば、スライ先輩は考え込む。
「妹は愛してるし、ショックだとは思う。殺人犯がいたなら殺したいと思うだろうし、行動も、……起こした可能性はあるか? ……あるかもしれない」
独り、疑問を呈しては納得をするスライ先輩。
「だが、関係ない人間まで巻き添えにしたという事が納得いかない。いくら何でも大量殺人……そこまで狂うか?」
今の先輩には理解できなくとも、実際に彼は行ったのだ。
ミランダを見る。
「ミランダも納得いかない?」
「いえ、納得しかありませんよ? お嬢様の事は元々嫌いでしたし、役目と合わせて丁度殺せるタイミングがあったのなら、いつでも殺ったでしょう」
淡々と答える彼女に口を噤む。
できれば否定してほしいところだった。
「見事、殺せたのなら嬉しい限りですね」
「そ、そうね……見事な殺しっぷりだったわ」
「ちなみに、現状の私も、次の殺害チャンスを待っています」
そうでしょうね?!
「誰かが」
スライ先輩が口を開く。
「啓教会なり、何なり、誰かが操っていた可能性はないか? 死の演出というか。流石に……死にすぎ、殺しすぎだろう。誰か可能性のある人物はいないのか? いくら考えても家族の死を理由に、無関係の人間を巻き込むなど。誰かに誘導された可能性はないか? 思考停止状態の俺を、そそのかしたような」
スライ先輩の言葉を吟味する。
「悪魔ね」
「天使ね」
ライラと言葉が被る。
ここは断固として言わねばならない。
「ライラ、いや皆はさ、天使のヤバさが分かってない。私の全ては天使のせいみたいな所があるんだよ? ルーファもよく分かんない所があるけど、あの天使のおっさんの無茶ぶりがどれだけ酷いものだったか!」
「チャーリーは悪役に割り振られたんだったわね。具体的に何をして悪役に成り上がるつもりなの?」
「そりゃまぁ……」
最近、天界攻めしか頭になったけど、そうよね……フローレンスを聖女に仕上げる為には、悪役らしい行動も必要になるか。論理立てて、行動するなら計画を立てないとよね。そういうのは、カエルに聞くに限るわ。
「そういえば、カエルは?」
全員の視線がルーファに集まる。
「あぁ、喰った」
喰った????
……あ、いや、そうだわ、ルーファの食事は欲を食う事で……。
言葉に釣られて焦ったものの、驚く事でもない。悪魔は食事をしただけだ。改めて「で、どこに?」と問いかける。
整った顔は表情がのっていないと硬質で冷たい印象を受ける。
彼は真意の見えない無表情のまま、答えた。
「だから、喰った」
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