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◆ 6・過去(後) ◆


 生きた時間がゼロに戻るのだ。

 全てがなくなって、元の時間に戻るという恐怖。誰もその事に気づかず、私だけがソレを知っている状態。この恐怖がどれほどのものか。


 私自身すら信じられなくなり、全てを疑い、夢と現実の境界すらあやふやとなる。


 己の為した悪行が、罪が、裁かれているのだと感じたし、許しを請うた。乞うて、窺って、祈って、詫びて――恥じた。


 何をしても死ねばゼロに戻る。

 殺されても、殺しても、命を断っても――誕生日の朝に戻るのだ。


 あったのは絶望。

 痛みすらも遠くなった時期がある。やけになり、さっさと殺せと叫んだ覚えだってある。だが何も変わらなかったのだ。

 ならば、足掻(あが)くしかない。


 汚らしく見えても、スマートに見えなくても、だ。


 とことん足掻いて模索して、この状況を打開する。それが、私の辿り着いた結論だった。



★☆★



 所々はダイジェストになるも、全てを話してみれば漂うのは沈黙。

 陽もとっくに落ちているし、体は空腹も訴えている。途中メイドがティーセットと軽食を持ってきてくれたが、それすらも喉を潤す程度にしか口をつけていない。


「つまり、だ。世界はお前中心に回っているというのか?」


 一段落したと見たのか、かさついたサンドイッチを手にするスライ先輩。

 言葉にすると、とても頭の悪い子供発言に近い。それでも、刑罰の仕様を見る限りはYESだ。


「私、ってか……アーラだね? 大前提としてはフローレンスを聖女として覚醒させるのに、悪役極めた私が必要っていう事なんだけど。結局はアーラが消えるのを阻止っていう、彼女を守る為って事も含まれてるだろうし? むしろそれがメインなんじゃないかって疑ってる」


 全てを話した。

 ここ数カ月の事に関しては本当に、嘘偽りなく話した。

 所によっては、体験した本人もいる事で補足説明が入ったりもしたが、概ね情報共有は果たされたろう。



 で、どうするか……よね。

 全部をぶっちゃけた事が、今後どう影響するか。未知すぎるわ!



 ここまで正直に全てを話した経験はない。いつでも逃げ道を用意して、言葉を扱ってきた自覚もある。



 かといって、私が変わったわけでもない。やる事は、今まで通り……何も変わらない。生き残るの事よ。その為に、皆の協力がいるなら、土下座だってしてみせる覚悟だわ!



 彼らとて受け入れる心積もりや、時間が必要かもしれない。形式通りの問いかけもしておく。


「何か質問があれば、どうぞ」


 無言の世界を破った私に、ライラが呟く。


「ごめんね、チャーリー」




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